近い将来日本でも利用可能に?ABSTとは?

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Asset-Backed Security Token(ABST)とは、日本語で資産担保型セキュリティトークンと呼ばれ、セキュリティトークンの一種として世界的に注目を集めています。ABSTはセキュリティトークンの中でも、実物資産を担保として発行されるトークンで、権利収入や配当などが自動化され、国境を超えた流動性を実現する可能性を持っています。

この記事では、資産担保型セキュリティトークンについて、概要や実例を交えながら紹介・解説していきます!

セキュリティトークンとABST

セキュリティトークンとは、証券をブロックチェーン上でトークンとして発行したもののことです。セキュリティトークンは、一般的な書類ベースの物理的な権利移転が中心となる証券管理におけるカウンターパーティリスク等の課題を解決します。また、ブロックチェーン上で管理を行うことで、デジタルでの権利移転が可能となります。

主なセキュリティトークンの種類

セキュリティトークンとは言っても、一般的に金融商品として認められる証券の種類が多岐に渡るように、セキュリティトークンにも異なる法律・規制の枠組みが適用されます。以下では、一般的に分類されるセキュリティトークンの種類を紹介します。

・エクイティ

エクイティは日本語で株式資本と呼ばれ、新株や新株予約権付き社債の発行などに寄り調達されます。セキュリティトークンによる資金調達の半数以上がエクイティによる調達となっています。

・デット

デットは日本語で負債と呼ばれ、返済期日を伴う債券の発行により資本の調達が行われます。

・Asset-Backed (資産担保)

Asset-Backed (資産担保)は不動産などの有形資産やその利回り、ローンなどによる無形資産の利回りを担保に発行されます。

Chain Partners社の予測によると、2030年までにセキュリティトークン市場は2兆米ドルに到達するとされており、その成長の大部分がABSTによるものであるとしています。

資産担保型セキュリティトークンの実例

資産担保型セキュリティトークンは、主に不動産業界における活用が進められています。その他には、エネルギー分野において電力に対する権利を表章するセキュリティトークンの発行も行われています。

ABST資料

米国を拠点とするRealTは、米国・デトロイトの不動産物件に対する権利のトークン化を進める企業で、現在は同地域の8の不動産がイーサリアム上に発行されています。トークン化された不動産を保有することで、保有量に基づいた権利収入を、一日一度ウォレットに直接受け取ることができます。

また、米国の証券取引委員会による免除規定であるレギュレーションDに準拠した発行となっており、米国居住者を除く世界中の投資家が自由に取引することが可能です。イーサリアム上に発行されるRealTのトークンは、同じくイーサリアム上の分散型取引所であるUniswap上でも取引することが可能となっており、ERC20に搭載されるホワイトリスト機能により、投資家のKYC/AMLプロセスが自動化されています。

日本国内における不動産のトークン化に向けた動き

日本国内ではどのような動きがあるのでしょうか?国内の不動産トークン化に関するプロジェクトをいくつか紹介します。

2018年2月にプレイネクストラボ株式会社は、不動産事業を手掛けるRAX Mt. Fuji株式会社と、不動産のトークン化プロジェクトの実証実験の開始を発表しました。富士河口湖付近のゲストハウスをトークン化する試みであり、日本国内では初めての事例とされています。

2019年9月には、三井不動産株式会社がセキュリティトークンのプラットフォームを運営する米国の「Securitize」に対しての出資を発表。翌月、デロイトトーマツコンサルティング、フィンテックアセットマネジメント、株式会社クニエと共に不動産証券化の実証実験の開始を発表しています。

2020年3月には、SecuritizeとLIFULLが空き家の地方創生型クラウドファンディングを広く推進する基盤の構築を目的とした、STOスキームの実証実験の完了を発表しました。

最後に

資産担保型トークンは、所有権の分割・流動化、新規アセットクラスの創出やクロスボーダーでのポートフォリオ分散化などの観点から、国内外で大きな注目を集めています。

日本国外では既に発行・取引が行われているABSTが日本国内でも利用できるようになる日は遠くないのかもしれませんね。

改正金融商品取引法の施行も控え、大きな転機が訪れることが予測されるセキュリティトークン市場の動向に今後も注目していきましょう。

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