ブロックチェーン普及に向けて、金融業界とイノベータの架け橋に

マネーパートナーズインタビュー7

ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)業界内で活躍する女性にスポットを当てた特集記事「ブロックチェーン女子部」。

今回は株式会社マネーパートナーズ社長室長であり日本仮想通貨ビジネス協会広報部会長でもある西村依希子氏にお話を伺いました。現在妊娠10ヶ月の西村氏、業界の第一人者として見た仮想通貨・ブロックチェーン業界の働き方とは?

西村 依希子(にしむら よきこ)氏

東京大学法学部卒。株式会社マネーパートナーズ社長室長、日本仮想通貨ビジネス協会広報部会長。2015年、当時FinTech推進のグループリーダーとして東証一部上場の金融機関グループで初めてBitcoinを扱うことを世間に宣言。2016年4月業界団体として仮想通貨ビジネス勉強会(現JCBA 一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会)を立ち上げ、国内取引所間の連携を開始。2017年9月マネーパートナーズが資金決済法上の仮想通貨交換業者(関東財務局長第00001号)に登録される。協会事務局としての関わりから、国内外のブロックチェーンプロジェクトと多く親交を持ち、内、MVL(星)・Medibloc(韓)・Waves(露)・Prometheum(米)のアドバイザーに就任。NewsPicks仮想通貨分野Proピッカー(2017年10月~現職)。

FXとの出会いとマネーパートナーズ 入社

西村氏写真

子供時代は裁判官になりたかったんです。でも大学入学後、裁判官の先輩全員から「絶対向いてない」と言われて。裁判官は裁判をする相手と友人であったり何らかの繋がりがあるとまずいので、交友関係を広くする人は向かないと言われてしまいました。

その頃、無料で市民の法律相談を受けるという大学の学生団体活動にはまり始め、それにばかり精を出しているうちに卒業の時期になったという感じでしたね。

卒業した後、仕事という意味では目標を見失い、興味があった懐石料理の勉強に本格的にはまりながら、それまでアルバイトでコツコツ貯めたお金を、興味本位で当時一般人にも人気が出始めていたFXで少額から運用をし始めたのが始まりで、ずっとFXで為替市場を見ながらも、今思うと自由だけど寂しい生活をしていました。

30歳になるころ、このままじゃだめだという想いと、為替はすごく好きだったので、ふと、注文を受ける側の会社の中はどうなっているんだろうという興味が湧いて、インターネットサイトで、”ディーラー”, “未経験”で検索して出てきたのが、今勤務しているマネーパートナーズだったというわけです。その日にすぐ電話して、早速翌日から人事、役員、社長と3日間で面接が行われ、もう次の週には入社が決まっていました。

ディーラーから広報へ、180度変わった生活

入社後、生活は会社と家の往復に激変し、4年半ほどはディーラーとして働いていました。為替は絶えず動いているので、ディーラーは3交代でシフトを組み24時間仕事を回します。

最初の1年は2週間を除いてずっとNYタイムの夜勤でしごかれ、8時間のシフトでもマーケットで何かあると緊張状態が続いて帰れない生活。そういった環境だったので女性がほぼいない職場でしたが、男社会の中で負けないぞという気持ちはありました。どうにかして、よりシェアが大きい通貨や、目立つ通貨、稼げる通貨を取ってやろうと思って燃えていましたね。

その後、ブランディング担当がまだいないのでやってみないかと言われ、広報・ブランディング部門を一から立ち上げました。

FX会社の社員はFX取引ができないので、社内のほとんどの人間はFX未経験で、自信のないまま自分たちの商品の宣伝をしています。そこで、ずっと個人でFXをしていた経験が図らずも役に立ちました。

ディーラー時代は、社内でずっとマーケットに集中している状態だったのですが、広報になってからは、露出を取るためにマスコミの方とお会いしたり、他社の人たちから情報収集をしたり。逆に会社の外に出ることが仕事になりました。

そこからずっと、妊娠する前までは、ほとんど毎日会食をいれ、たまに何もない日も仕事の後絶対真っすぐ帰らないって決めていたくらい。できるだけ自分の中で背伸びしたお店や街に1人で行っていました。

そこで、より経験値が高い方たちと話すのが趣味なんです。少し変わったことをやっていたりとか、面白い人って世の中にあふれていますよね。そういう人たちと出来るだけ多く関わって新しい考えや別の見方を積み重ねていく。

新しいものをどんどん見ていったほうが、自分の中でもいろいろ広がるし、頭が柔らかくなる。それで、自分のびっくりしない範囲を広くしているようなところがあります。

仮想通貨・ブロックチェーンとの出会い

西村氏写真2

初めてビットコインの存在を知ったのは2012年ごろ。大学時代の友人で、スタートアップ支援などでFinTech領域でも活躍している株式会社アドライトの木村くんが、台湾からスタートアップ企業を10社ほど連れてきており、その食事会のホストを手伝ったことがありました。その会で、台湾でビットコイン関連の事業をしているMaicoinのCEOを務めるAlexと出会ったんです。

ビットコインとは何か?ブロックチェーンとは何か?聞けば聞くほど面白く、彼の話をひたすら1時間ぐらい聞いたと思います。

当時自分の周りではブロックチェーンに関することをやっている人はいませんでした。しかし台湾ではすでに、彼がコンビニでビットコインを買えるように尽力していて、日本の状況とは随分違うなと感じました。

また、彼自身が非常に頭の切れる人で、そんな人が一生懸命やってもなかなかスケールしないのだから、一般人が触れるようになるのはだいぶ後だろうなという印象も同時にありました。

その後は年に1-2回、彼が台湾のビットコイン関係者と来日した時や、逆に私が台湾に行く時に会うような関係になって。定点観測のような形で、ビットコイン関連の情報収集をするようになっていきました。

2014年頃、彼が台湾のブロックチェーン関係の起業家たちと3人で来日することがあり、初めて弊社代表の奥山に紹介したんです。

海外ではマイクロソフトでBitpay経由のビットコインペイメントが受け付けられるなど、少しずつスケールし始めていましたし、奥山としてもビットコイン関連企業への投資について意見を求められることが増えてきていたようで、ちょうどいいタイミングだと思って。「西村さん、そんな人脈あったの!?」と驚かれたのを覚えています。

ブロックチェーンの面白さと業界に生息する痛快な人々

パブリックなブロックチェーン上では、どこか一つの会社が管理することなくデータが蓄積していきます。

また、自分のデータを自分で持つという文化が発達するためのインフラであるところにも魅力を感じます。なので、ブロックチェーンはあくまで、パブリックなデータ蓄積レイヤーであるべきだというのが私の持論です。

そのインフラを回すのに最小限必要なコストがあって、そこで使われるものが仮想通貨という概念ですね。もちろん、コンソーシアムとか、プライベートチェーンが有用な場面もあるのでそれは使い分けだとは思っています。

なぜブロックチェーンに惹かれるのか?

ビットコイン界隈の人たちって、すごく痛快ですよね。国家の信用といった、みんなが信じているものを別に何とも思っていないし期待してもいない。円やドル、銀行や世界的カードブランドや決済事業者もなんでそんなものが必要なの?という感じ。それがコンセプトとしてすごく潔いなって思うんですよ。

私はもともと昨日と同じ明日が来ると思うと絶望してしまうタイプで、小学校のときから、毎日違う道で登校しないと飽きてしまって無理だった。

仮想通貨やブロックチェーンもそういう意味でいうと、明日もよく分からない。そういったところがマッチしているのかもしれませんね。

仕事でも仮想通貨に関わることに

マネーパートナーズが仮想通貨ビジネス参入を決めたのは2015年のことでした。

当時私が世界のマーケットを日々見ている生活の中で、モナトレ(日本発の仮想通貨Monacoinを基軸通貨とした仮想通貨取引所。現在のフレセッツ株式会社代表の日向氏が運営。)に小さいながら実際に板がたっているのをみて感動したんです。

代表が「うちでも仮想通貨をやろう」と言い始めたときに、「ビットコインの投機ではなく、リボンみたいに色んな価値と価値をつなぐ交換をするところまでいくなら、私やります」とコミットしました。

勉強会をイノベーターと金融関係者の架け橋に

まずは、なんとかしてブロックチェーンを世の中に浸透させていきたい。そのために自分ができることは何だろうと考えた時に、伝統的な金融業界の人々にこの新しいテクノロジーのことをもっと知ってもらうことだなと思ったんです。

当時はビットコインなどに詳しいスタートアップの人たちと、金融機関の人たちの意識には雲泥の差がありました。

そこで、金融機関や大企業にお勤めのブロックチェーンや仮想通貨に興味をお持ちの方を集めて、仮想通貨に詳しいスタートアップの方々に講師として話をしてもらう。そこで企業が扱うなら何が必要か一緒に考えていこう、というコンセプトで勉強会を始めました。

2016年の初頭に法人をたて、4月からは、毎月1回のペースで勉強会を行い、2017年に取引所主体に業界の環境整備を議論するように組織改編を行いました。それが現在100社以上に加盟していただいている業界団体のJCBA(一般社団法人 日本仮想通貨ビジネス協会)です。

国内外のブロックチェーンプロジェクトから問い合わせが殺到

2016年当時は業界にも勢いがあり、国内外のたくさんのプロジェクトから協会に問い合わせが来たんです。

もしそれが彼らが日本とつながるチャンスだったとしても、ここで途切れてしまっては何も残らない。事務局は自分しかいなかったので、私が聞かないと誰も聞く人はいないという使命感でとにかくたくさんのプロジェクトと話をしました。

海外からの問い合わせが多かったので、国外のプロジェクトを中心に200件くらいは会ったと思います。おかげで国内外の数多くのプロジェクトと親交を持つことができました。

内容の良いプロジェクトがあればマネーパートナーズ に限ることなく、協会に加盟してくれた仮想通貨取引所の社長さんを一気に紹介したりして、少しでもいい繋がりを保っていけるような努力をしていましたね。

その時に出会った5社には現在アドバイザーとして参画しており、日本で根を下ろすためのお手伝いをさせてもらっています。

株式会社マネーパートナーズ資料

仮想通貨・ブロックチェーン業界から見た働き方改革

女性の社会進出とか、働き方改革ってよく言われますが、2015年から仮想通貨・ブロックチェーン業界に関わっていると、いまさら感がすごくあるんです。ブロックチェーンの世界では、時間や場所に縛られずに働くスタイルがそもそもあったと思うんですよね。

ビットコイン界隈の人たちの、本当に自分が面白いと思ったプロジェクトを見つけたら、世界のどこでも飛んでいって、そこにしばらく滞在して情報もらったり、一緒に協力してやってみたりという働き方には最初の頃すごく刺激を受けましたし、知恵を付けてもらいました。

ブロックチェーンが出てきたことで、証跡がどこでも残せるようになって、タイムスタンプだって勝手に押せるようになって。実際に仕事の内容自体をブロックチェーンに書き込む、書き込まないに関わらず、そういった考え方が浸透してきている。これから働き方はもっと自由になっていくでしょう。

プロジェクトに関わる人全員が絶対同じ場所に集まらなきゃいけないかというと、もうそういう時代ではないですし。さらに仕事の成果についても、それが見える化していって、それが積み上がっていけばプロジェクトになるっていうような文化がどんどん広まっていくと思います。

いろんな人がいろんな働き方を自由に選んで、成果も残せることが多くなっていくといいですね。

自由な働き方へのカギは”人間関係”

会社員は一般的にはデスクに座って仕事していることが多いと思うのですが、私は業務上外に出歩くことが多いです。

さらに、マネーパートナーズに籍をおきながらJCBAやアドバイザー関連の方の仕事で出張したりすることもあるので、オフィスにいないこともしばしば。サラリーマンとしては、随分自由に働かせてもらっていると思っています。

こういったイレギュラーな動きを認めてもらうには、自分を信じてもらえるような人間関係をどれだけつくっておくかということが非常に大事ですよね。

やるからには何かしら結果を残すということを意識して、外に出ていくときは小粒でもいいからいいことや面白いことを拾って帰ってこれるよう努力しています。そういったところから、この人がやっているなら後々何かしら組織にとっていいこともあるのではという空気感が出てくると思うんです。

でも、最初から短期的な目線や固定観念で見られて、そんなことをやっても意味がないと否定されてしまっていたら途中でくじけていたかもしれません。信じて認めて、協会の活動にも積極的に協力してくれた代表、周りのメンバーや会社には感謝ですね。

母となった今、目指す働き方とは?

私は今、妊娠10カ月ですが、今まで会社員としてバランスを取りながら、柔軟な働き方をさせてもらってきたからこそ、リモートでできる仕事や、子連れでも成果の出せるビジネスの場は、たくさんあると感じています。

私自身、結婚も出産も、同級生の中ではラストだったくらい遅くなってしまいました。それは、仕事がなにより楽しかったし、正直必要性も感じず、バランスをとれる自信もなかったからです。

でも、このブロックチェーン業界の柔軟さに助けられ、会社がそれを認めてくれ、幸い同業に参入して同様の考えをもつ主人と出会い、人生のステージを変えることができました。

だから、もし同様に、今生きづらさを感じていたり、家庭にはいって引っ越す必要がでてきたり、子供をもってそれまでの働き方ができない後輩が出てきたら後押しをしたい。

そのためにも、自分の案件を頑張り、そういう仕事や場を提供できるプロジェクトも、そういう仕事がほしい人も、私のところに集まってもらって、更に推進できるようにしたいですね。

広がりを見せるブロックチェーン関連事業と求められる人材

マネーパートナーズグループの中でも、ブロックチェーン関連事業はますます広がっています。

交換業登録をとった株式会社マネーパートナーズでの決済事業、グループとして仮想通貨事業会社への投資、大和証券グループ本社との業務提携、新しい事業やコンサル事業の立ち上げ、株式会社マネーパートナーズソリューションでのシステム開発・提供、先日新しくグループに加わった、主人とその仲間が立ち上げたコイネージ株式会社で本格的な仮想通貨取引事業への参入と、やることはたくさんあり、そのそれぞれと、プロジェクトやスタートアップとの橋渡しをするのが私の役目です。

業界全体としてもまだまだ人手不足なので、withBさんから良い人材をたくさん紹介してもらえると嬉しいですね(笑)

この記事を読んでいる方は、仮想通貨・ブロックチェーン業界に興味を持っている方がほとんどかと思います。興味はあっても実際に業界に飛び込んで働くとなると、色々と思い悩んでしまうこともあるかもしれませんね。

でもまずは、とにかくやりたいことベースで動いてみること。そうすることで新しいチャンスや面白い出会いが広がっていくのではないでしょうか?

西村氏写真3

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