新たなファンコミュニティが作る経済圏

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2022年7月11日に開催された「Non Fungible Tokyo 2022」のセッション “新たなファンコミュニティが作る経済圏”をレポートします。

コムギ氏
Emoote共同経営者/Web3リサーチャー
ビジネス書の編集者、グローバルクリプトWebメディア日本版の創刊編集長、国内最大級のブロックチェーンカンファレンスのプロデューサーを経て、現職。WIRED日本版VOL.44特集「Web3 」のインフォグラフィックス(図解)の寄稿、「Web3 Conference Tokyo」等カンファレンスの登壇、Twitterのユーザー名「@ro_mi」での発信など、「コムギ(comugi)」の名義でWeb3関連の最新情報を積極的に発信中。

田中隆一(たなか りゅういち)氏
株式会社フィナンシェ COO
2019年 に株式会社フィナンシェを共同創業、2021年8月にCOOに就任。2018年 にはgumi cryptos capital のアドバイザーに就任した。

中村太一(なかむら たいち)氏
Anique株式会社 代表取締役
博報堂DYメディアパートナーズ入社/TV・雑誌・WEB・コンテンツ・マーケティング・新規事業立ち上げを経験。 主な仕事に、「実物大巨人プロジェクションマッピング」「進撃の巨人リアル脱出ゲーム」「ダイヤのA 母校にエールを」「名探偵コナン Yahoo! JAPAN 仕掛けられた爆弾事件 」 2019年5月よりアニメ・マンガ・ゲームなどのアートワークを 特別な体験とともに、作品を愛するファンに届けるサービス「Anique(アニーク)」をスタート。素晴らしい創作物をファンがオンラインで楽しめる「オンライン展覧会」、グローバルのアニメファンを感動させるNFTプロダクト「Attack on Titan: Legacy」を展開。

Chris Dai(クリス ダイ)氏
株式会社レシカおよび株式会社UniCask、共同創業者兼CEO
ブロックチェーンのエバンジェリストであり、日本のブロックチェーン企業である株式会社レシカと株式会社UniCaskの共同設立者兼CEOを務める。両社とも換金可能な現物資産型NFTに特化し、複数のNFT販売に成功する。非金融分野におけるブロックチェーン技術の活用による非中央集権的なビジネスの開発に注力している。分散型モデルやそのビジネス、社会、哲学的側面に深く惹かれる。日本ブロックチェーン協会顧問、日本測位衛星の認証情報のブロックチェーン活用検討委員会委員、経済産業研究所ブロックチェーン研究チーム委員。「ネクスト・ブロックチェーン 次世代産業創成のエコシステム」(日本経済新聞出版)共著(2019年)、「Blockchain and Crypto Currency」(Springer)共著(2020年)

金光碧(かねみつ みどり)氏
bitFlyer Group, トレジャリー部長
一橋大学経済学部卒業後、投資銀行部門資本市場本部でデリバティブストラクチャリング(主にエクデリとCBと為替)を担当。2016年1月からbitFlyerでPR業務といわゆる管理部業務を担当(現在はトレジャラー)。

コムギ氏:セッションテーマ「新たなファンコミュニティが作る経済圏」ということで議論していきたいと思います。本日のモデレーターを務めますコムギと申します。よろしくお願いいたします。

私は、「Emoote」というベンチャーキャピタルでWeb3リサーチャーをやっております。日々、Web3プロジェクトのホワイトペーパーを見たり、トークンの分析をしたりしております。

次にスピーカーの皆さんに自己紹介頂きます。まずはフィナンシェCOOの田中さん、よろしくお願いいたします。

コムギ氏登壇写真

田中氏:はじめまして。株式会社フィナンシェの田中と申します。

コムギ氏:フィナンシェさんは、クリエイターを支援するという、クラウドファンディング2.0というサービスをされているのですね。

田中氏:そうです。クリエイター、スポーツチームなどのトークンを発行することで、ファンディングと、コミュニケーション、コミュニティの機能を内包したようなアプリになっています。

コムギ氏:ワンストップで投票までできるサービスになっているんですね。

田中氏:そうです。NFTではなくFT(ファンジブルトークン)で、保有するトークン1トークンが1票という形になっています。

コムギ氏:FTとNFTの違いは、後ほどディスカッションで明らかにしていきますが、楽しそうですね。

田中氏:そうですね。NFTも一部スポーツチームなど、クリエイターさんと一緒に出しています。

コムギ氏:後ほどお伺いしようと思っていたのですが、先に一問だけ、スポーツチームが多いのは何か意味があるのでしょうか。

田中氏:いくつかありますが、一つは、海外で名だたるビッグクラブがファントークンを始めていまして、中でもサッカーチームが多かったからです。日本でそういった事例を見ていましたが、先駆的なサッカークラブが最初に進み、そのお陰で結構事例が出てきたので、その分野が先行して今スポーツ関連ではリーグ含め70チームほどご一緒させていただいています。

コムギ氏:70チームとはすごいですね。海外に事例があると取り入れやすいというか、分かりやすいですね。

田中氏:やはりわかりやすい事例があると、皆さんにも横展開のイメージがつきやすいかと思います。

コムギ氏:ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。次は「Anique」の中村太一さんです。

田中氏登壇写真

中村氏:よろしくお願いします。私たちは、マンガやアニメ、ゲームのアートワークをユーティリティ付きでNFTにさせていただいており、また「オンライン展覧会」事業をしております。ユーティリティのNFTを2019〜2020年頃から出させていただいており、まだ全然ユーティリティが流行っていない時期に盛り上がったのですが、NFT関係なく盛り上げるためにやっていました。

作者の先生と一緒に名前が刻まれて、それを広告やイベント会場で展開したり、特別なアイテムなど、ユーティリティ付きトークンを初期からやっていました。その一環で“攻殻機動隊”というタイトルを販売したり、3D空間にオンライン展示会を作り出してもらって、初期はここでNFTを販売させてもらったり、後々、物販が良いというお客様には物販を提供させていただいたり。そのようなことをリアルやデジタルで展開しています。

コムギ氏:「オンライン展覧会」をやるのは、何か意図があるのですか。

中村氏:新型コロナウイルス感染症の拡大でイベントができないので、NFTの押し売りというより、ニーズがあってやらせていただいています。今もニーズがあります。

コムギ氏:コロナ禍を経て、デジタル上で自分のIDを求めることがプロフィールピクチャーが流行ったという流れもあります。ですので、こういう空間があることによって、NFTを持ちたい・見たいという欲求が上手くカバーできるというところですね。

Anique株式会社事業説明資料

中村氏:皆さんの中にも使われている方がいるかもしれませんが、オンサイバーなどに自分のNFTを飾りたいというようなニーズがあるのではないかと思い、地味にやっている感じです。それを「進撃の巨人」の漫画が完結するタイミングでやらせていただいて、約30万人の来場がありました。3DCGでカードを作って、アニメの映像とともにお届けするというサービスもやらせていただいています。IP×NFTを進めている会社です。

コムギ氏:質問なのですが「Attack on Titan(進撃の巨人)」ですが、グローバルでの販売にチャレンジされていると思いますが、今までは国内のIPにとどまっていましたよね。世界に挑戦することの利点、そこで出てきた課題みたいなものを軽く教えてください。

中村氏:やはり、私たちがアニメ・マンガ・ゲームを好きというのが一番の理由です。取り組ませていただく作品の多くは、海外のファンが多く、スポーツもですが、そこで海外にも届けたいというところがあります。既存ファンの方と、NFT・Web3・クリプトファンの方々は、微妙に重なるところと重ならない部分があります。それをどう考えながらアプローチするかですね。これは国内でも一緒だと思いますが、海外ではより顕著になってくるので、トライの連続を私たちも楽しんでいます。

コムギ氏:NFTという新しい技術を使った時に、古参のファンが「何だ、あれは」と、保守的になってしまうという側面はどんなジャンルでもあると思います。

中村氏:それと、IPをお借りしてやるものと自分たちで作っているパターンでは、やはり出来る範囲に大きな違いがあると思うので、その辺もチャレンジしながら、作り手と一緒に進化していくところが楽しいです。

コムギ氏:面白いですね。ありがとうございます。

次に、「Recika」及び「UniCask」創業者、CEOのChris Daiさんです。

Chris氏登壇写真

Chris氏:Chris Daiです。私たちは、NFTの中でも珍しい実物資産とNFTを紐づけたサービスにフォーカスしております。昨年の年末にリリースしたのが「UniCask」というサービスです。

お酒は樽に入っていると、時間が経つにつれてエイジングというプロセスを経て、熟成して価値が高くなりますが、樽に入っているものを個人の人たちが買えるチャンスはなかなかありません。そのような方たちに対して、我々は「樽の民主化」と言っているのですが、誰でも樽を持つことが出来るようにするサービスを提供しています。

私たちは時間の価値をトークン化しています。時間というのは、デジタル空間ではなかなかないコンセプトで、物理の世界でのコンセプトだと思っています。その時間と空間を私たちはトークン化することを目指し、その最初の時間を「UniCask」でトークン化して、お酒をデジタルの世界でどうやって再定義するかというところをいろいろとやっております。

まずはCask NFTを販売しました。Cask NFTを持つと、100分の1の樽を所有することができ、これを10年後に熟成したお酒に引き換えることができるNFTです。また最近、新たに始めたのがウイスキーDAOというものです。Cask NFTのホルダーであれば自動的にDAOメンバーに入ることができ、我々の持つ他のCaskをDAOの中で選んで商品化しようと考えています。このDAOで1Caskのウイスキーが400本ほどできるのですが、どのウイスキーを選ぶか、どのぐらい熟成させるか、ボトルは何にするか、ラベルは何にするか、度数は何度にするか等、いろいろな商品化のパラメーターをコミュニティの中で決めて、それを売るというものです。その中で、一部は売らずにコミュニティメンバーや、DAOメンバーに配ったりもできる仕組みです。そうすることで、自分のウイスキーブランドを作ることが出来る点も売りです。CaskのNFTを持っている方たち、Caskホルダーに自分のブランドを作る体験など、更なる価値観を提供することをコミュニティを含めやっております。

コムギ氏:面白いですね。ウイスキーを選んだのは、時間と向き合うというところが一番大きいですか。

Chris:おっしゃる通りです。世の中のモノは、大半が時間が経つと悪くなります。iPhoneでもなんでも価値が落ちますが、ウイスキーは、エントロピーという法則には矛盾しているんです。ある期間、人間が生きている間は価値が上がるという非常に面白いものです。ゴールドですら価値は上がらないですから。その時間につれて価値が上がるというものを所有することによって、もちろん外部マーケットでは上下はあると思いますが、購入した方もそれほど損失はしないと思いますし、特に今はクリプト・ウィンターといわれている中ですので、非常に面白いものだと思っています。

コムギ氏:面白いですね。フィジカル空間と繋げるというところで、よくサッカー選手のカードなどがあると思います。あれもサッカー選手の活躍する期間が決まっている、その期間が明確にある、そこが面白そうだと思います。掘り下げて言いたいことはたくさんあると思います。

お待たせいたしました、金光さん。今日のテーマは「錦鯉NFT」ですね。

金光氏登壇写真

金光氏:bitFlyerの金光です。今日はbitFlyerは関係なくて、個人で参加している新潟県山古志村が出している「錦鯉NFT」の話で呼んでいただきました。

山古志村は、厳密には自治体としてはなくなっていまして、平成の大合併で長岡市に併合されています。2004年の中越地震で壊滅的な被害を受けて、2,200人だった人口は800人になり、高齢化率は55%になっています。すごく綺麗なところで、道の側の池で鯉を育てていたり、美しい棚池や棚田があったり、独立心の強い方々が暮らしています。なんとかここで独自財源を得ることができないかということで、NFTを発行したらいいのではないかと地元の方々が気が付きました。そして、株式会社TARTの高瀬さんなどが協力されて発行したのが、2つの美しいNFTです。これが何とこれまでに41ETH売れていまして、スゴイですよね。リアル村民の方は800人ですが、この錦鯉NFTのホルダーの方は950人います。地元の方を含めてデジタル村民と呼んでいますが、リアル村民をデジタル村民が上回ったという状況になっております。

これだけでも面白いのですが、さらに運営の方がデジタル村民の方たちに、地域振興のために何か面白いことを考えてほしいとおっしゃられて、いくつか案が出てきました。その案に対して、リアル村民も含めて投票しました。リアル村民の方は高齢の方が多いのですが、頑張っていただいてメタマスクを入れて、皆さん、錦鯉NFTを持っています。

錦鯉NFT説明資料

リアル村民の方に錦鯉NFTを持っていただくことに賛成か反対かを投票していただいた結果、全員賛成で皆さんに持ってもらっています。投票で選ばれたのは4つのプロジェクトで、僭越ながら私のプロジェクトも選んでいただきました。

この選ばれたプロジェクトにはきちんと予算がついて、それぞれ動いているのはDAOらしくて面白いと思っております。「Generativemasks」のtakawoさんも選ばれています。takawoさんが山古志を訪問してインスピレーションを得たものでアートを作ってNFT化するという、令和の山下清になりたいとおっしゃっていました。

因みに、私が作ったものは、山古志村を訪問してVlogを作るというもので、映像を作っています。全然満足してはいないのですが、1.3万回ほど再生されています。もっと再生されたいと思っています。

それから、もう1つ、clusterではないのですが、VR上に山古志村を3Dスキャンして、バーチャル山古志村を作るということをやっていらっしゃる方がいて、これも完成度が高く出来ています。デジタル村民のこういった取り組みを、リアル村民の方たちがすごく喜んでくださっています。新しいファンコミュニティができて非常に面白い事例だなと思ったので、ただの一デジタル村民なのですが本日ここに来ました。

コムギ氏:これは、見たいですね。

本日は以上の4名でお送りします。

金光さんにお伺いしたいのですが、デジタル村民になっての感想や、NFTならではの感じは出ていますか。

金光氏:NFTならではというと、結構クラウドファンディングでいいのでは?と言われます。それに対しては、NFTであることの帰属意識や、ブロックチェーンに刻まれているから誰にも管理されていないけれど、きちんとしたコミュニティ感があります。そして、それが確認できるという、クラウドファンディングでは得られないコミュニティ感が、中に入ってみて感じることとしてあります。これはどうですか。田中さん。

コムギ氏:早速ディスカッションにいっちゃいましょう、田中さん、どうでしょうか。

田中氏:クラウドファンディングとどう違うのかと言われますが、やはり保有していることによる継続性です。それがアセットになっていくというところで、みんなで応援することもインセンティブになっている、そこがおそらく違うところです。実例が多いかというと、まだそうではありませんが、今後そういうところを作りましょうということが大事だと思います。

コムギ氏:一つのプロジェクトで目的に向かっているところが非常に面白いと思って見ていました。いろいろな予算がつくところも、NFTが売れているからできることですよね。同じように一つのウイスキーを作るというところで、Chrisさんに質問です。一つの目的に向かっているということは、ファンコミュニティという意味で、お互いポジティブな方向で議論が進むのでしょうか。

Chris氏:そうですね。特にウイスキーDAOをデザインする時に考えなければいけなかったのは、ウイスキーは持っていることも飲むことも楽しいのですが、それ以上に、ウイスキーホルダーは個人として受け身側であって、作る側にはいないという点です。その体験自体に価値があるのではないかというのが一つあります。あとは、これも社会実験ですが、こういったDAOというコミュニティでウイスキーブランドを作って、それを販売して利益を上げられたら再びコミュニティに返す、というモデルです。もしこれが成功すれば、企業をリプレイスできるのではないかと考えています。

そのような経済的な価値も取り込めないと、長期におけるサステナブルにはなかなかなりづらいというのが私たちの考え方の一つです。実物資産という実社会との紐付けによって、その体験や商品が好きであったりファンであったりする以外に、経済価値やメリットがあって、そこがこのコミュニティの拡大とサステナブルな源になっていくことを目指しています。

コムギ氏:ありがとうございます。田中さんにお伺いします。NFTを持つことの積極性や、積極的に関わろうとする点は、FTでも変わらないですか。

田中氏:一緒です。特にスポーツでは同じですね。皆さん、好きなチームに関わって一緒に強くなりたいという気持ちがありますし、特に男子は「サカつく」のようなゲームが好きですよね。そうしたゲーム体験がリアルで楽しめる、それをチーム側も一緒に盛り上げていくことで、新しい体験価値が生まれます。これは今までにはなかったと思っています。

コムギ氏:この辺は、クラウドファンディング2.0とわかりやすくはいっても、クラウドファンディングの先を行くものという提案になっているのですか。

田中氏:先を行くというよりも、おそらく先にアップデートされて、今までのクラウドファンディングのほうが合うものは絶対あると思いますが、一緒にファンコミュニティ化していきましょうという概念がある点は、クラウドファンディングとは異なる点ではないでしょうか。それがもう一つのアップデートされる点だと思います

コムギ氏:中村さんにお聞きします。既存のファンがいるのに、新たに何かを作っていくのは難しいと思いますが、NFTを持つことによって、ファンの行動や感情は何かしら変わっていきますか。

登壇者集合写真

中村氏:アニメや漫画、ゲームは、元々そういうのがすごく強いIPだと思っています。人気の作品だと、放っておいても二次創作されて普及します。元々そういう部分が根強く、かつリターンという意味でも、いろいろなグッズやイベントが出て、さまざまな楽しみ方ができますよね。NFTでなければできないことを考えていく、それが今の話にもすごく出ていたと思います。お金を払ってリターンを受けること以外に、自分がそのIPの一員として、どうIPを盛り上げるか。それにもタイミングがあると思います。作品が伸びていくタイミングで一緒にやろうというのもそうですし、ちょっと停滞しているタイミングに一緒に頑張ろうというのも、また一つの協働意識が生まれます。そのようなタイミングとその時のミッションが大事だと思います。

コムギ氏:その辺は、NFTを所有するというWeb3におけるオーナーシップのようなものが、ファンにとって行動するきっかけのモチベーションの一つにもなりますし、自分が所属している感覚になるということですか。金光さん、これはいかがですか。

金光氏:そうですね。山古志村が取り上げられると、皆すごく喜んでいます。自分の得意なことで何か貢献できるのが嬉しいという気持ちがもちろんあります。皆それぞれ何か得意なものを持っていて、それを活かして貢献できるということです。先ほど予算が分配されると言いました。これはすごく良いことで、DAOはやりがい搾取と言われることもありますが、そうではなくて、きちんと予算がついていると私は主張したいのです。やってくださる方には、山古志村も一つのIPだと思いますが、これに貢献できるならそれが対価であると、そのような感じになっています。そこはただ単にNFTはすごいというだけではない気がしています。

コムギ氏:面白いですね。NFTそのものの価値以外のところで、プロセスに参加するということの価値をホルダーとして感じていらっしゃる。

金光氏:そうですね。それがブロックチェーン上にも残る点ですね。

コムギ氏:そこはウイスキー作りでも同じですか。

Chris氏:そうですね。ホルダーとしても体験そのものが楽しかったりします。自分の飲むお酒のラベルを作って、友人に『これは私が作ったお酒です』と自慢できるところが、それ自体も対価というか、価値になっていると思います。

それよりも、モノを所有するのは楽しくもあり、私たちは10年間お酒を保管しなければいけませんので、その間にどのように注目してもらって、どのようにコミュニティ内での熱量をキープしていくかを常に考えなければなりません。

コミュニティというのは、農家でいえば土になる訳です。その中にNFTという種があって、その土の中でポテンシャルを出して、価値を生み出すものになってくるので、コミュニティをどうやって耕すかというところからがDAOではないかと思っています。ですから、皆一生懸命NFTのプロジェクトをやりながらも、この土となるコミュニティを耕さないと価値は生まれてこないと思っております。

コムギ氏:名言が出ました。「NFTは種である。耕さなければならない」これは至言ですね。先ほどのお話も非常に面白く聞かせていただきました。

田中さんもサッカーチームでファンコミュニティを作っておられるので、テーマのど真ん中だと思います。今話している所有権という切り口はすごく面白いと思っており、Web2までは、所有から利用へという方向性、Airbnbなどの家を分割利用することや、Uberのように車(モノ)の利用をもっと細分化していくという動きでした。一方で、NFTは所有することによって、ユーザー(ヒト)の行動を変えるという、また別領域での話ではと思っています。フィナンシェではいかがですか?

田中氏:チームにしてもプロジェクトにしても、所有している感じではありません。今までは経済で所有するということだったと思います。ですが、これからは関係性というものが価値になってくると思います。そうすると、利用から今度は関係性を作っていくというところ、これがおそらくこのNFTを含めた領域で実現できるのではないかというのがベースにあります。通貨的な価値、通貨はコミュニティがないと成り立たない話だと思います。そういった意味では、概念的に今まさにファンコミュニティと相性がいいと思います。

コムギ氏:本当に関係性こそがNFTであるというすごく面白い話です。Web2まではSNSなどでフォローする・される関係性というのは爆発的に広がったと思いますが、改めて、NFTで作る関係性というものは田中さんにとってどういう意味合いを持っていますか。

コムギ氏登壇写真2

田中氏:そのものを持っていることで、時間が大切になってくると思います。先ほどChrisさんもおっしゃっていましたが、将来も含めて、自分がコミュニティに参加して貢献することは、ある程度自分の証明することそのものにもなると思います。現在は所有だけになりますが、将来というところも含めると、時間も含まれてくると思います。

コムギ氏:面白い話ですね。未来、時間という一つのキーワード、テーマが出てきたのも面白いと思います。金光さん、山古志村もやはり未来に向かっているところがある訳ですよね。

金光氏:そうですね。本当は山古志村も自治体として何とかしたいという思いがあります。例えば、街灯が切れているので直して欲しいということもありますが、それを言っているだけではつまらないと思っています。ですので、デジタル村民たちが考える山古志村の未来を提案してほしいとお願いしています。リアル村民の方たちは高齢のおじいちゃんが多いのですが、これがDAOだよ』と言っているんですよ。おじいちゃん、すごいんです。すんなり受け入れられる人には受け入れられる概念だと思います。

コムギ氏:ここは、フィジカルとデジタルを繋ぐということが一つあって、立場は違えど、目的は未来に向かって同じところを見ているのが、非常に面白いところですね。

中村さんにお伺いします。「進撃の巨人」は完結しました。ここで未来が途切れたように見えますが、ここからまた作っていく未来があるとしたら、どのような未来ですか。

中村氏:今皆さんのお話を聞いていて本当にそうだと思ったのですが、IPは、ストーリー展開が終わったものでもそうでないものでも、盛り上がるものは、潜在化・顕在化してきた行動だと思っています。先ほどの話の続きにもなるのですが、イベント会場の同じNFTを持っているトークンホルダーたちの名前がビジュアルで出ていている場所で、写真撮影しているユーザーがいました。先生の名前が載っているから撮っているのかと思っていたら、私の知っている同じIPを好きな人がいたと。そこの『関係性を残したい、確認したい』ということで行動していたんです。

おじいちゃんがDAOを買っているというのも、そのコンテンツを好きな人が、やっている人たち皆にDAOという概念が染みついているからです。終わったIPであろうと、これからのIPであろうと、いかにその行動を促進するか、それを気持ちよく続けていただいて、盛り上げていただくためにデザインをするというのです。NFTとユーティリティ化は離れ過ぎているとしっくりこないと思いますので、FTにしてもNFTにしても、ユーティリティと一体化していく、これがゲームなどは上手くメカニカル的にできているので、ぎゅっとなると思います。ゲーム以外の事例でも、よりこれを繋いでいく行動が生まれてくるだろうと思っています。

コムギ氏:最後に、一言ずついただきたいと思います。このテーマに沿って、新たなファンコミュニティというところで、ご自身がやっている取り組みを、今後どうしていきたいのかを踏まえて、田中さんから感想をお願いします。

田中氏:我々のプラットフォームは、もちろんスポーツだけではなく、例えば映画のプロジェクトや、一緒に音楽を作っていくことなど、参加型で新しくプロジェクトを作り、そこのビジョンに皆が乗って一緒に参加していくような事例を増やして良いプロジェクトを生んでいきたいです。そういったことをやりたいと思う方がいたら、是非、気軽にご連絡いただければと思います。

コムギ氏:是非、皆さんアクセスしてみてください。次に中村さん。

中村氏:我々も一緒で、IPホルダーの方々やIPを作りたい方々と、いかに価値あるユーティリティや持続的な楽しさを作っていけるか。この点が、アップデートしていかなければいかないポイントであると思うので、皆様のお目にかかれるようなプロジェクトをたくさんやっていくことが使命と思っています。

コムギ氏:カッコいいですね。やはりIPとファンとの関係性をNFTで作っていくというのも、一つの「Anique」の仕事、中村太一の仕事ですね。

中村氏:そうですね。今後は規模が大きいものもたくさん手掛けていきたいと思っています。

コムギ氏:ありがとうございます。次にChrisさん。

Chris氏登壇写真2

Chris氏:私たちは引き続き、実物資産とNFTの紐づけをやっていくと思います。今は「UniCask」というウイスキーという形ですが、今後は、不動産とNFTを紐づけた新たなサービスをリリースします。リアルの世界とデジタルの世界をどう紐づけていくのかに注目し続けたいと思っています。

今までこのリアルの世界でしか価値を感じなかった方たちを、デジタルの世界にきてほしいです。そのポータルとして我々が活躍できればいいと思っております。そういう意味では、いろいろなデジタルの世界の方たち、NFTのアーティストやプロトコルなど「UniCask」で引き続きいろいろな方たちとコラボして、エコシステムを広げたいと思っております。是非、ご興味がありましたらご連絡いただければ幸いです。よろしくお願いします。

コムギ氏:ありがとうございます。最後に金光さん。

金光氏:最近Twiiterでバズっていたのですが『人間の幸せは、家庭や仕事ではなく、いくつの共同体に帰属できるか』という話を聞いたことがありました。NFTはそれを実現できるのではないかと、錦鯉NFTに入っていて思いました。そして、今日の皆さんのお話を聞いてよりそう思いました。まだ今はやっていませんが、bitFlyerもビジネスを通じてこういったものに貢献していきたいと思います。そういうものが始まった時にはお知らせしますので、是非よろしくお願いします。

田中氏:取り敢えず、NFTを持ってもらって体験するのが大事ですよね。

金光氏:体験すると感じが変わりますね。

コムギ氏:ありがとうございます。4人とも、実事業があって、NFTを発行して、錦鯉NFTはまた別かもしれませんが、買えるものをしっかり作っている。皆さん取り組んでいる中での実感を込めた言葉で、非常に参考になったのではないかと思います。本日はありがとうございました。

登壇者集合写真2

登壇者集合写真3

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