パ・リーグ6球団と共同でNFT事業に参入するメルカリ、プロ野球リーグと目指すNFTとは

業界で活躍する方にお話を伺い、暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン業界に関わる人々の姿をお届けするインタビュー。

今回は、パ・リーグ6球団およびパシフィックリーグマーケティング株式会社と共同でNFT事業への参入を発表したばかりの株式会社メルカリに、haruxx氏がリリース直後の突撃取材を敢行。パ・リーグ6球団の名場面やメモリアルシーンをコレクションできる「パ・リーグ Exciting Moments β」について、プロダクトを開発するビジネスデベロップメントでマネージャーの永井氏とエンジニアの荒川氏にお話を伺いました。

インタビュアー

haruxx氏(@harukatarotaro

2017年にクリプトに出会いフリーで活動を続けているクリプト熱狂者。現在はクリプト系リサーチメディアHashHubTokenLabでリサーチャー。またチームで「週間NFTニュース」の発行をしている。2021年夏よりプログラマーとしてWeb3系ベンチャーHiÐΞ(ハイド)に在籍し技術貢献も開始。

インタビューに答えていただいたのは、パ·リーグ Exciting Moments βのサービス開始の準備で活躍してきたお二人です。

ビズデブの永井さん(@hanatochill

Kosuke Nagai / 株式会社メルコイン NFT Business Development マネージャー

2018年から暗号資産の事業企画に従事。2021年から現職でパ・リーグEcxitingMomentsの事業開発を担当。クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事。弁護士として、美術・ファッション・出版・音楽などの文化芸術とインターネットの交差する領域を中心に法務アドバイスを提供。執筆に『法は創造性をつぶすのか?』(『広告』2013年5月号)、『ファッションは更新できるのか?会議』(共編者、フィルムアート社)など。

エンジニアの荒川さん(@arandoros)

Takamasa Arakawa / 株式会社メルコイン Software Engineer(Blockchain, Backend)

アボカドが好きなエンジニア・NFT 愛好家。情報工学と生物学を学んだのち、富士ゼロックスで文書管理アプリの開発を経験。 2017年にブロックチェーンの面白さに気づき、趣味で Bitcoin や Ethereum のアプリ開発を模索。2019年からは NFT マーケットプレイス miime の開発に携わる。Dapper Labs が好きで Flow のコミュニティ開発者として活動する。2021年8月から メルカリ・メルコインで NFT 関連プロダクトの開発に尽力。

はじめに

haruxx氏:今回はインタビューを快諾いただきありがとうございます。お二人のことは、メルカリグループに入社される前から知っているので、こんな形でお会いすることになるとは思いませんでした。

まずお二人のお仕事の内容について教えてください。

永井氏:NFTビジネスデベロップメントでマネージャーをしています。とはいえ現在、まだメンバーは一人ですが。

haruxx氏:将来チームが大きくなっていくイメージですね。

永井氏:ですです。

荒川氏:私はバックエンドの開発を担当しています。ブロックチェーン・エンジニアというポジションでもあり、ブロックチェーンにつながる部分の設計も進めています。

haruxx氏インタビュー写真

新サービスについての質問

haruxx氏:やはり「NBA Top Shot」を意識していますか?

永井氏:はい。NBA Top Shotは、とても良く作り込まれているプロダクトです。どうやってお客さまに商品を届けるのか、新しい体験を生み出すかという点でたくさんの工夫を重ねていて、参考になります。

haruxx氏:ちなみにNBA Top Shot名物の行列機能はあるのでしょうか?

永井氏:現在は実装していませんが、混雑度が増した場合は考えるかもしれません。ちなみに、知っていますか?あの機能はNBA Top Shotが作ったのではなくサードバーティが提供している機能なので、Top Shot以外のサービスでも使われているんですよ。

haruxx氏:あー、なるほど。確かに似たようなUIの機能をいろいろ見かけますね!サードパーティ製だったのか。

haruxx氏:さて、ビジネスの話に戻りますが、国内のNFTマーケットの競合との差別化ポイントとしてどういった点を差別化として育てようとしていますか?

永井氏:国内マーケットは、現状では海外に比べると小さいと言わざるを得ません。そのため、我々はマーケットプレイスをすぐに提供するのではなく、魅力的なNFTの商品を作り市場に届けることから始めることにしました。多くの人にNFTをもっと知ってもらいたいと思っています。

haruxx氏:ビジネスサイズはどれくらいの規模を考えていますか?

永井氏:まずは「パ・リーグExciting Moments β」で10億円を超えていきたいです。

haruxx氏:海外戦略はどう考えていますか?

永井氏:日本の野球ということで海外においても多くのファンがいらっしゃると思っていますが、まずは国内を固めていきたいと考えています。

荒川氏インタビュー写真

技術方面についても質問させてください

haruxx氏:なぜブロックチェーンにFlowを選択したのでしょうか? 他のチェーンは候補にあがりましたか?

荒川氏:採用するチェーンについては、メルカリグループ全体でディスカッションを繰り返しました。Ethereum推しの人も多くいました。Immutable XやPolygon、Solanaはどうだ、という意見もありました。

荒川氏:最終的にFlowに決まった要因はいろいろありますが、扱うコンテンツとの相性の良さと、大量のトランザクションを処理できる実績は大きなポイントでした。NFTのことを第一に考えて作られたチェーンであることも評価できました。どのブロックチェーンを使うか考える上で、技術だけでなくコミュニティやエコシステムが重要であることは周知の事実ですが、Gas代と商品の価格帯的にEthereum以外を選ぶとなった場合、エコシステムの成長という観点でNFTファーストである点は重要だと思います。Solanaも大量のトランザクションを処理できそうですが、NFTファーストかどうかという点は大きく違うと考えています。

haruxx氏:なるほど。そういったポイントで採用したのですね。エンジニアにとってFlowを使うメリットはなんでしょうか?

荒川氏:まずエンジニアリングの視点で言うと、Flowはとても開発者フレンドリーです。Ethereumは開発者が気をつけないといけないことがたくさんあります。例えるなら、EthereumのSolidityは自分でメモリ管理しないといけない玄人向けの言語で、FlowのCadence言語はそのあたりを言語の標準機能でよしなにやってくれるモダンな高級言語というイメージです。

また、Flowを開発するDapper Labsは、ユーザーにとっても使いやすく、ブロックチェーンを意識させないことが可能になるように設計しています。「アカウントの鍵を入れ替えられる」「Gas代(手数料)を他の人が払える」といった機能が標準装備されています。

他に特筆すべきこととして「コンポーザビリティの高さ」はFlowの大きなメリットです。コントラクト同士を組み合わせて使うことが容易になるよう設計されているんです。

haruxx氏:コンポーザビリティはEthereumなどでももっていますよね?Flowのコンポーザビリティはどういったところが特徴なのですか?

荒川氏:Ethereumのコントラクトは、組み合わせた時に脆弱性が生まれないように細心の注意を払う必要があります。Flowでももちろん注意は必要ですが、Ethereumほど予期できない事態は発生しない印象です。また機能の追加が簡単です。コントラクトで定義したリソースを取り出して別のロジックを追加することができます。Cadence言語で使われるリソース指向プログラミングの恩恵で、コードもシンプルになります。

haruxx氏:ありがとうございます。なるほど。新しいチェーンのいいところが目立ちますね。ところで、Flow以外のチェーンへの対応は考えていますでしょうか?

荒川氏:「パ・リーグ Exciting Moments β」では他のチェーンへの移行は今のところ考えていませんが、今後リリースするプロダクトではもちろん他のチェーンを使う可能性もあります。・・・とここまでFlowについて熱く語ってきましたが、「パ・リーグ Exciting Moments β」のデジタルコンテンツは現状はオフチェーンで実現されています。これには、デジタルコンテンツの質を高めるための試行錯誤をする意味合いと、早めに基盤を確立させる目的がありました。2022年以降に、Flowブロックチェーン上のNFTとして発行することを目指しており、今まさにこの準備を進めています。

永井氏インタビュー写真

職場としてのメルカリの魅力は

haruxx氏:少しサービスのことではなく職場のことも聞かせてください。ブロックチェーンビジネスをやる上でのメルカリさんの魅力はなんでしょうか?

永井氏:メルカリは交換の難しかった価値を交換可能にすることで、流動性のある世界を構築した会社だと思っています。メルカリでは個人対個人間のモノの流動性を、また、メルペイでは決済の世界でお金や信用の流動性を高めてきました。その先にデジタルコンテンツやトークンを器にしたより多様な価値の流動性があるのだと考えています。

メルカリは段階を踏んで取り扱える価値を一つずつ増やしてきたので、その延長線上に自然に暗号資産やNFTがでてくるなと感じました。そんなところに魅力を感じています。これまでメルカリを使って頂いているお客様にとっても、自然に使い始められるサービスを作れるのではと思っています。

haruxx氏:ですね。私もメルカリはC2Cの王者だと思っています。本当に使いやすいです。

永井氏:入社して驚いたのは、メルカリにはGo Bold/All for One/Be a Proという行動指針があるのですが、本当にメンバーで共有されていて、日々の意思決定を助けてくれることです。たとえば、ハードルの高い目標の設定自体が推奨されるので、失敗を考えて消極的に行動することが減るんです…!またとてもオープンで、たとえば社内で使用しているコミュニケーションツールのSlackもあまり鍵がかかっておらずオープンにやりとりされています。DMもあまり使いません。社内のサーバーにあるファイルも基本的にはアクセスできます。個々のメンバーがメルカリから信頼されていることを感じましたし、それによって情報共有のコストがかなり減って楽になりました。また、ポジションで仕事が規定されるというよりは、それぞれの持ち場で個人が自由に考えながら最大限の力を発揮して仕事をするというカルチャーがあります。本当に仕事がしやすいです。

haruxx氏:荒川さんはいかがでしょうか?

荒川氏:エンジニアにとっていい会社ですね。まずメンタル面で心理的な安全性が高いです。ミスがあっても、誰も責めることもなく、お互い高め合う環境がありました。みなさんプロ意識が高く、仕事をきっちりこなす人が多い印象です。

メルカリの品質はクオリティーテストの素晴らしさで成り立っています。QAのシステムやチームがすごく安心できます。

haruxx氏:いい会社ですね。私も開発をしていますが、品質の担保に安心できるチームがいるのは安心感が高いですね。

荒川氏:少し話は戻りますが、メルカリは人々の生活に溶け込んでいます。私は以前、自分の思い入れのあるものを捨てるときに、捨てる前にEthereumに記録するデモアプリをつくったことがあります。将来、メルカリで売った記録がパブリックチェーンに残ったりする未来を想像しています。自分の人生がデジタル上に残っていくことは、とてもいいと思いませんか?

今後、このチームに入る人へのメッセージ

haruxx氏:では、今後このチームに入るであろう人に向けてメッセージをお願いします。

永井氏:Web3、ブロックチェーンの社会実装はまだまだこれからです。この分野は大きな可能性を持っていると思いますし、始まったばかり。事業の方向性も議論しながら進めているタイミングなので、これから入る方とも一緒に新しいアイディアを考えていきたいです。

荒川氏:開発中のプロダクトのブロックチェーン部分は、これから作っていくところです。Flowで開発したい方にとっては今が最高のタイミングです。ブロックチェーンで世界を作っていきたい人にとっては、楽しみながら開発していける場所ではないでしょうか。一緒に、ブロックチェーンならでは、NFTならではの機能を作っていけると思っています。

永井氏:そうですね!NFTの2次取引のマーケットを作るのもこれからです。どのようにサービスを実装していくのか、コミュニティをどのように作っていけるのか、お客さまにどう参加してもらうのかなど、新しいメンバーと一緒に考えて実現していきたいです。

haruxx氏:これからまさに立ち上がる産業という感じがします。楽しみですね。本日はありがとうございました。

さいごに

インタビューを通してお二人の仕事に対する楽しい思いやブロックチェーンへの情熱を感じました。また、メルカリだからできること。メルカリが構築してきたこれまでの対ユーザー、社内環境、カルチャーがしっかりしていると感じています。

プロフェッショナルな場であることは間違いありません。これまでのメルカリにブロックチェーンという要素が加わりました。メルカリの高度なソフトウエア開発、サービス運用ノウハウがブロックチェーン領域でもスパークすることを楽しみにしています。

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