業界第一人者が語る、暗号資産業界の将来~金商法・資金決済法改正後の業界<後編>

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一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2020年5月28日、協会会員に向けた5月度勉強会を開催しました。

 

新型コロナウイルスの感染拡大防止に備え、Zoomのウェブビデオ会議を使用したオンラインライブ配信による勉強会では、「2020年度の暗号資産業界はどう変わるのか~金商法・資金決済法改正、新型コロナによる自粛中下の活動等~」をテーマに、暗号資産(仮想通貨)交換業者5社の代表取締役によるパネルディスカッションを行いました。

 

こちらの記事では、パネルディスカッションの内容を要約し、前編・後編にわけてお届けします。

 

後半は、暗号資産についての新たな法規制となる改正資金決済法および改正金融商品取引法(金商法)の施行後、STOはどう変わるのか、また法規制により変わりつつある暗号資産交換業者の将来的展望について伺いました。

登壇者紹介

廣末紀之(ひろすえ のりゆき)氏
ビットバンク株式会社 代表取締役(JCBA会長)

齋藤亮氏(さいとう りょう)
SBI VC トレード株式会社 代表取締役CFO(JCBA理事)

蓮尾聡(はすお さとし)氏
コインチェック株式会社 代表取締役 社長執行役員(JCBA理事)

三根公博(みね きみひろ)氏
株式会社bitFlyer 代表取締役

山田達也(やまだ たつや)氏
楽天ウォレット株式会社 代表取締役社長

   

STOの領域で事業として参入を予定している会社さんはございますか?

 

三根:bitFlyerは参入というよりは、頭の体操はしていますというレベルです。

 

廣末:それは、弊社、ビットバンクも同様です。当然、業界のネタとしては考えています。

 

三根:現時点では、その意味でしかないですね。

 

STOというと、どうしても齋藤さんに伺いたいのですが、直接、業務としては関係ないとは思いますが、SBIグループさんがSTOに対しては協会を作るなど積極的に動かれていますがいかがですか? 今後の展望をひと言お願いします。 

齋藤:私、個人の意見ですが、数ある金融商品の中でも流動性の低い商品が存在するのは事実です。そこに新たな技術を持ち込むことによって流動性が生まれ、市場を開拓できるのではないかと考えています。STOには、そういった潜在性は感じます。

グループ会社に証券会社をお持ちのコインチェックさんと、楽天ウォレットさんに、同じことを伺いたいのですが、いかがですか?

蓮尾:もちろんグループとしては取り組みを考えています。元々、弊社コインチェックでもSTOは検討し、可能性を探っていました。法的に証券業の中でと整理されたので、現時点では、その可能性についてはグループのマネックス証券のほうで追いかけております。

 

山田:楽天ウォレットも同じです。STOに関わるところは、証券会社が主導になります。資金調達についても、証券会社が中心になって行っています。我々の立場としては、そういった中で作られたものを上場銘柄として売買できる機会を提供するということになるのではないかと思います。

FATF勧告「トラベルルール」対策はどこまで進んでいるのか

FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)の求める暗号資産の送金元、送金先双方の身元確認のための個人情報を求める「トラベルルール」が話題になって久しいですが、トラベルルールへの対策はどのような状況でしょうか? 

廣末:これに関しては、実は暗号資産交換業者の自主規制団体であるJVCEA(日本暗号資産取引業協会)が中心になって、トラベルルール対策のワーキンググループを作っています。今、主要メンバーでこれに対してどのように技術的な要件を満たしていくか、議論をしています。

 

bitFlyerさんからはプラットフォームを提供しようというご提案をいただいくなど、各社前向きに取り組んでいますが、実はFATFのそのもののスタンスというのが、それほど明確ではなく、割とぶれています。概論としては、おっしゃる通りなのですが、いわゆる交換業者のゲートウェイだけ補足すればそれでいいのかという問題があります。個人間のハンドトゥハンドで暗号資産を交換できる中で、交換業者だけ規制する意味があるのか、個人のウォレットはどうなるのか? など、さまざまな論点があります。

 

そういった意味では、個人的にはまだ穴があるな、という印象です。実効性の論点でいうと、ちょっと疑問に思っています。ただし、業界の健全性の意味においてはやったほうがいいとは思います。

FTAFのトラベルルールについては、個別に行うのではなくJVCEAさんの元、決定したものについて各社が実行していくという認識でよろしいですか?

廣末:恐らく、そういう方向性になると思います。

今後、匿名性コインの上場はあるのか?

視聴者からの質問で、ブロックチェーンの解析ツールというのは各社さん導入されていますか? という質問がございます。いかがでしょうか?

三根:情報収集する手間を省略するという意味では、ないよりもあったほうがいいというレベルでしょうかね。

質問をたくさんいただいているので、内容がさまざまな方向に飛びますが、匿名コインに関してはいかがでしょうか? これまでは日本において匿名コインはダメだという印象がありますが、去年あたりからまた再上場されるのではないかという動きがある中での質問です。いかがですか?

三根:つい先日、アメリカで俗にいうお墨付きの付いた匿名コインがあるということは認識しています。それを受けての議論もあると認識はしていますが、まだ日本では真剣に匿名コインの議論を行う土壌は、風土的なものも含めてないような気がします。 

コインチェックさんは、新規通貨を複数上場させていますが、いかがですか?

蓮尾:匿名コインを積極的に取り扱うという考えはありません。結局は法規制の問題もありますので、弊社も三根さんのところと同様に、匿名コインは過去に上場廃止をしたという経緯もあります。そこからルールが大きく変わっていないのであれば、それを新たに取り扱うというのは、正直、ハードルは高いと思います。

では、引き続き蓮尾さんに伺いたいのですが、ステーキングに関して御社はかなり進んでいらっしゃると思いますが、ステーキングの今後の可能性や取り組みについてはいかがお考えですか?

蓮尾:ステーキングについては、各社さんからも非常に関心をいただいております。ご案内の通り、弊社はLiskという暗号資産でステーキングを行っています。これは、現段階では実験的なステータスです。金融庁ともさまざまな面で話をしている途中です。今、これを積極的に広めていこうということではありません。ただ、お客様のニーズがそれなりにあって関心も高いので、業界としては暗号資産を持っていることによって収益が上がっていく仕組みというのは面白いし、みなさんに広げて行けたらいいなとは思っています。

齋藤さん、今のお話を伺っていかがですか?

齋藤:取り組みとしては非常に面白いですね。そのスキーム自体が、法的に整理できるかであったり、現行の規制に対応できるかであったり、そこが非常に重要な部分なので、ものが出てみて、どういうビジネスで回るのかそこを見極めて最終的にサービスを行うというのが検討すべきことなのかなと思います。

レンディングサービスは日本に根付くか

次はレンディング(貸暗号資産サービス)の質問です。コインチェックさんはすでにサービスを始めていらっしゃると思いますが、海外では暗号資産レンディングのBlockFiがUSドル入金で年利8.6%といったサービスを提供し、話題になっています。レンディング市場に関して、どうお考えですか?

 

蓮尾:レンディングにつきましては現在サービスを提供していますが、正直、規模は大きくありません。まだまだ広げられる余地はあると思います。海外のレートと比較して、日本はギャップがあります。ここをうまくやって行けたらいいな、と思っています。海外では、弊社のグループでアメリカにTradeStationという会社がありますが、そちらではレンディングビジネスを積極的に行い、利益をすでに上げています。そういうユースケースがあるのですが、日本はいかんせんプラットフォームが出来上がっていないこともあり、流動性が作りにくい状況なので、そこをまず解決したいですね。それができない場合は、一足飛びに海外のほうに乗っかっていくことなのかな、と思っています。

 

 

山田さん、そのあたりはいかがですか?

 

山田:レンディングの観点でいうと、実際にお客様から預かった暗号資産を安全に運用できるかということがあります。株式市場と違い、やはり貸し先、運用先の与信リスクが高いところが課題です。市場としても、マーケットにボラティリティが出ると、そのニーズが高まり、さらに与信リスクが高まる状況になります。まだ正直、弊社は貸し先や運用先が安全かどうかしっかり確認できる体制になっていないので、そこが検討の際のキーになっています。

 

廣末:実はビットバンクは、地味にレンディングをやっていますが、山田さんのおっしゃる通りだと思います。しかもサービスの運用コスト、デリバリーを日本円でやらなければならないなど、プロセス上にいくつか課題もあります。日本では、機関投資家や金融商品が成熟をして市場そのものの規模が大きくなれば、ビジネスとして回ってくると思いますが、そのあたりが海外市場と違いますね。

 

我々も、お客様から暗号資産をお借りして、利息を払って、それに見合うだけの運用ができる環境を構築するのは非常に難しいと思っています。これは業界の課題でもあると思います。

国内の規制は海外と比べてどう違うのか

他の国の規制と国内の規制に関して、みなさんどうお考えですか? また、日本がどう変わっていくといいか、希望も含めて伺います。

 

三根:規制といってもいろいろありますが、マネーローンダリングに関する規制は、FATAFのルールで各国の規制は大きなくくりでは共通です。本人確認書類の種類や方法、細かい技術について違いはあると思いますが、基本的な考え方は同じですね。

 

違うのはマーケット規制で、特にリテールの規制ですね。個人投資家の保護という考え方が、国によってかなり違うと思います。日本は、投資家保護が緩すぎるという意見をする人もいますが、実は為替のFXはアメリカやイギリスのほうがきつかったりするので、あながち海外に比べて日本が緩いというわけでもありません。

 

規制に関しては、実態を見て、きちんと定量的に取り組んでいただくアプローチをできればやってほしいですね。もちろん今もやっていらっしゃいますが、事件が起きると後追いでババッと決まってしまうこともないわけじゃないですよね。むしろ先取りで、今後さらに世界に先駆けた日本モデルというものを進めていただきたいですね。

 

齋藤:論点としては、当然考えなきゃねという規制なので、ダメだという印象はないです。規制もさることながら、本質的に暗号資産を使って何をするんだっけ? というのが重要な論点だと思います。暗号資産は、売ったり買ったりするだけではなく、こういう使い方をするから世の中の仕組み、社会的な問題を解決できるというあり方を示せると、当局に対して、こういうことができるから規制をこう変えてくれという説得もできると思うし、そこで有益性を示して世の中をよくすることができれば、そこは当局もがんじがらめにノーということはないと思うんですよね。

 

たとえばですが、そこで実需が生まれてきてニーズが出てくると、デリバティブ等も改めて実態に則して考えなきゃねという論法になってくると思います。

 

現時点においては、まずは最低限、利用者の保護を考える上でやらなければならないルールができましたという状況だと思います。

 

 

bitFlyerさんが数年振りにテレビコマーシャルを行われましたが、市場の反応はいかがですか?

 

三根:クリエイティブそのものに対する評価はよいと思います。CMはPRのためにやっていますが、費用対効果としても悪くはないですね。2017年の頃は、プロモーションの打ち出し方にも規制がかかりましたので、もうCMはできないという意見が相当多数だったので、やれてよかったです。CMで爆発的に口座開設者が増えたというわけではありませんが、我々としてはきちんと誠実に取り組んでいますという意味でのブランディングプロモーションができたと思います。

 

 

今後、1、2年後の話ですが、オリンピックが1年後に延びました。これも開催されるかどうかはわかりませんが、1年先にあるとして、またその後、来日する外国人が増えてくると思いますが、そのためにビットコインを中心にみなさんができることは何でしょうか? という質問をいただいております。暗号資産業界をあげてそのために何ができるか? 伺います。

 

廣末:先ほどの齋藤さんのお話にもつながりますが、この話も規制強化の文脈の話も、事業者がちゃんとした社会に有用できるユースケースを示すことができるかが根本的にあって、社会に有用性を提示しながら、きちんと需要してもらう産業を作るということが重要だと思っています。僕らは、そこを認識してやらなければいけないと思います。単純に売ったり買ったり、価格が上がった、下がっただけじゃないんだということを提示していく必要があると思います。

 

一方で金融の観点でいえば、金融商品としては、ちょっと道が閉ざされてきたんですが、なんとかその流れの中で、金融商品として道が開かれれば、デリバティブの有用性であったり、レンディングのビジネスであったりと、いろんな方向に発展をしていくので、ペイメント以外というところでは、やはり金融商品化という分野に頑張って取り組むべきではないかと思います。

 

 

楽天さんは、グループで見たらものすごい口座数を持っていらっしゃいますが、観光客などに向けて、業界としてまたは御社として何かできることがありますか?

 

山田:弊社のグループで共通で使われている楽天ポイントというものがあるのですが、取り組みとしては、このポイントを暗号資産に交換できるサービスを去年から始めているので、非常にハードルを下げた形で少額から暗号資産に触れることができるような環境を提供できました。今後も暗号資産と関われる機会を徐々に増やしていきたいと思います。

 

グループとしての取り組みもまだまだやりたいことがたくさんあって、どうやって暗号資産が実際の社会で使われていくのかを、常にテーマに持って取り組んでいきたいと思っています。

 

特にオリンピックだからということではありませんが、支払い手段のひとつとして外国人の方が来日されたときに、暗号資産でも支払いができるようなインフラの提供ができないかなということも今、思っています。

NFTの可能性

DAppsゲーム業界がここ数年活発になってきたと思いますが、暗号資産のNFT(Non-Fungible Token:代替不可トークン)の活用法としてゲームやエンタメをどのように捉えていますか?

 

三根:当然、DAppsについてはフォローをしていますし、議論もしていますが、たとえば弊社がそこで何かをやるとかどうこうするというのは現状は具体的な策はありません。DAppsの中で暗号資産を使っていただくという協業の可能性はありますが、まだこれというものはありません。

暗号資産業界が目指す社会とは

今後、我々暗号資産業界が目指す社会は何かということについて、少々重いテーマですが最後にみなさんにひと言ずつ伺いたいと思います。

 

廣末:ビットバンクは取引所をメインにやっていますが、将来はインターネット業界におけるISP(インターネットサービスプロバイダー)のように、その産業におけるゲートウェイの立場になっていきたいと思っています。インターネットでいえばブラウザーが登場したり、eコマースが誕生したりと、産業が徐々に発展していったように、今後この業界もいろんなビジネスが展開してくると思っています。取引所のビジネスはある程度フレームができたので、その先にそういうビジネスが展開することで、社会的にも有用性を提示して、産業自体も社会にもっと認めてもらえるようにしていけたらなぁと思っています。

 

齋藤:最後にいみじくもNFTの話が出ましたが、そもそも暗号資産を始めとして、パブリック型のブロックチェーンに何を見ていたんだっけ? と思います。資金調達的な側面や売買対象という見られ方が成功しすぎました。そこが収益化しやすいといえばしやすいので、ほとんどの人がそちらに目が行ってしまっていると思います。本質的な出発点として、我々が初めてブロックチェーンを見たときに興味を持ったポイントは、売買の対象というよりは、これを使ってできることっていろいろな可能性があるよね、ということだったと思います。そういった中で、やっぱりこれかなと可能性を見せているのがNFTであると思います。加えて、VR、ARや、5G、IoTを始めとする技術が現実世界と仮想空間の距離をどんどん縮めています。NFTには今あるような有価証券ないし金融資産として定義された何かではなく、もっとふわっとしたデジタル資産というような資産性、資産として価値を持ったデジタルで象徴された何かが出てくるのかなと思います。

 

NFTはデジタルコンテンツの中で一意性を証明できます。NFTは代替不可能なデジタルコンテンツ、たとえばゲーム内のアイテムや画像、映像、デジタルサインのようなものも表現できます。個人的には、NFTにブロックチェーンで何がしたかったんだっけ? という可能性を改めて問われた気がします。たぶん、そっちに何かしらヒントがあるのではないかと思っています。

 

蓮尾:今日、私の背景に書かれている「新しい価値交換を、もっと身近に」というフレーズは、コインチェックのミッションということで最近掲げたフレーズです。振り返ってみると、この業界も弊社も含めて、元々は暗号資産に取引のニーズがあるということで、その需要に合わせてプラットフォームを作り、サービスを提供してきました。ここから先は暗号資産を取引してもらうだけではなく、暗号資産に意味を加えて、我々はそれを価値交換というフレーズでくくっていますが、いろんなユースケースを増やすためにそういったものを作っていきたいという思いを込めて、このようなミッションを掲げました。これを社内に浸透させ、こういう形で社外の人にも知ってもらいたいと思っています。ゆくゆくは暗号資産の使い道を増やしていくのは我々であり、またここにいるみなさまとも一緒に作っていければいいなと思っています。

 

三根:bitFlyer、弊グループは、スローガンとして「ブロックチェーンで世界を簡単に。」という創業メンバーの想いを掲げています。今、ブロックチェーンはコマーシャルベースのユースケースとして、曲がりなりにも産業として成り立っているのは暗号資産以外はなかなか難しいものになっています。現実は否定をしません。我々としては暗号資産の価値を含めたブロックチェーン全体のエコシステムの価値を、暗号資産を軸として増やしたり、非暗号資産領域におけるブロックチェーンの活用で世の中に価値を提供したり、そこはもう愚直にまじめに研究して、社会に提案し続けていきたいと思います。弊社、弊グループとしていつもまじめに取り組んでいきたいと思います。

 

山田:まずは、利用者にとって安心で安全なものを提供するというのが、業界として最初にやらなければならないことですが、まだそのステージから抜け出せていないと思っています。ルールとして金商法が絡んだり、より注目されるような規制がかかったりするものを我々は取り扱っています。こちらのルールがようやくできたということで、ルールに則りまずは顧客資産のしっかりした保全を行っていきたいと思います。最初のステップとしては、そこです。

 

その後は、今日みなさんと議論した通り、やはり相場の動きだけの取引サービスの提供のみならず、実際に暗号資産を使って新しい未来をどうやって見せることができるかというようなことに、ひとつひとつチャレンジしていくことが今、我々が向かっていく方向かなというふうに考えています。

 

──みなさま、長時間ありがとうございました。

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