OASYS:セッショントーク

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2022年7月11日に開催された「Non Fungible Tokyo 2022」のセッション “Oasys:セッショントーク”をレポートします。

森山 大器 (もりやま だいき) 氏
Oasys PTE. LTD. Director
ボストン コンサルティング グループにて幅広い業界の経営コンサルティングに従事し、その後、デロイトトーマツベンチャーサポートの創業期に参画、ホール・アース・ファウンデーションのCEOを務めた後、OasysのDirectorに就任。

森山氏:Oasysのディレクターを務めております、森山と申します。よろしくお願いいたします。我々はゲームのためのブロックチェーンを作っていまして、本日はOasysの紹介と紐づけて今後どういったブロックチェーンゲームに来てほしいか?「ブロックチェーンゲームと未来」についてもお話ししたいと思います。

簡単に自己紹介させていただきますと、元々、経営コンサルがメインのボストンコンサルティンググループに勤めていました。これだけ聞くと固そうなバックグラウンドだと思われるかもしれませんが、その後、直近ですと、ご存知の方もいるかも知れませんが、Whole Earth Foundationというマンホールの写真をゲームでユーザーに撮影してもらうプロジェクトの代表をやっていました。

実はあの時はトークンの話はしていなかったのですが、社会貢献のために駆り立てるようないわゆるシビックテックとして、行動のインセンティブとして、裏側にトークンを使うのはどうかも構想していまして、当時から暗号資産の発行であったり、海外での上場を経験してきました。その結果、現在はゲームの作り手ではなく、ゲーム開発する会社を支えるブロックチェーンを作るという立場に立っています。

今日のイベントやニューヨーク(NFT.NYC)、IVS那覇あたりから見られている方には、Web3業界はかなり派手だなとお感じになっている方もおられると思いますが、大きな産業の変わり目では、当然のことながらしっかりとビジネスを作っていくことも必要でして、僕はOasysでそのような役割を担当しており、日々仕事しております。

Oasys資料

Oasysではゲームに特化したブロックチェーンを作っているのですが、元々は上記図のメンバーの課題感から構想したもので、例えばdouble jump.tokyoではWeb3という言葉が出ていなかった2018年からブロックチェーンゲームを作り続けています。その苦労や試行錯誤する過程で、既存のブロックチェーンではゲーム業界で求められるスペックが叶えられないという課題がありました。当事者として、自分たちが満足できるチェーンがないなら、新たなチェーンを作ろうではということで、今回の構想に至りました。

それでは、ブロックチェーンゲームの課題とは何なのかというと「自分の母親でも使えるか」というようなユーザー目線で考える観点に立つと、やはりまだまだハードルが高いと感じています。まず当然のことながら、ガス代(手数料)が最初のハードルとしてありますし、事前に一定の仮想通貨に関する理解がない限りは、そもそもゲームが始められないというところがあります。今プレイされている方はそこを何とか乗り越えられているとは思いますが、さらに次の数億、数十億人、そういった単位でゲームプレイユーザーが増える時期に向けては、やはりそこが一番越えなけらばいけない壁だなと思っています。

あとはディベロッパーですね。

ゲームのディベロッパーの方々、特に今までWeb2の世界でゲームを作られてきた方からすると、Web3で求められる、以前と大きく変わっている要件に対して何をどうすればいいのかわからないことが多々あります。あるいは周りにブロックチェーン技術を実際に取り組めるエンジニアがいない、それを作るためのお金をどうやって調達するか、というような悩みがあると思います。

最後は、日本が強みとしている領域ですが、これまで培ってきた大変強力な日本のIPがあります。

しかしながら、これをいきなりクリプトの世界に持っていくのは、やはり色んな意味でバックラッシュが起こったりと、ネガティブな反応もある中で、どのようにWeb2からWeb3に移行するのかといった悩みがあると思います。現在世界で20兆円とされるような大きなゲーム業界が、さらに大きなWeb3ゲーム業界に移行して前に進んでいかなければいけないところで、僕らのチェーンが悩みを解決できればいいなと考えております。

ここからは少し技術的なお話もしようと思うのですが、では、それをどうやって実現するのかを簡単にご紹介したいと思います。

僕らはレイヤー1のブロックチェーンではありますが、二層構造を取ることによってユーザーないしはゲームディベロッパーに対して、彼らが抱えている課題を解決することを考えております。

レイヤー1はゲームをプレイされる方はご存じだと思いますが、例えばSTEPNですと、現在レイヤー1にSolanaというチェーンが使われています。Solanaは特にゲーム用に作られているわけではない汎用なチェーンですが、ただ比較的速度が速いということで使用頻度が高いチェーンになっています。

しかしレイヤー1だけで全てのユーザーを動かすとなると、どうしてもユーザー数の増加に従って遅くなってしまい、またガス代(手数料)の高騰が起こってしまいます。今はVerse-Layerという表現をしていますが、その部分をレイヤー2に移すことによって、レイヤー2の部分をあたかもプライベートチェーンのように扱うことにより、この中でのゲームユーザーのプレイについては、ガス代が無料、且つ瞬間でトランザクションが完了するという速度環境を実現しつつ、そこでのトランザクションの一部をロールアップするという形でレイヤー1に繋いで、最終的にはきちんとブロックチェーンに書き込まれるというような二層構造を取っています。

Oasys事業説明資料

さらに補足すると、イーサリアムバーチャルマシン(EVM)という形のプルーフ・オブ・ステーク(PoS)という方式を取っております。プルー・オブ・ステークは実際このバリデーション、コンセンサスメカニズムとしては大量の計算を必要としないという点で、環境にやさしいという点も担保しています。ですので、我々のネットワーク、エコシステムを成立させるためには一定のプルーフ・オブ・ステークを実現していただくバリデーターの方々が必要でして、現時点ではまだメインネットがローンチされていませんが、ありがたいことに初期バリデーターとして21人の大変力のある方々に入っていただいております。

まだ21人のバリデーター全てが公開されているわけではないですが、実は今週来週でもういくつか大変「おっ」というような会社様の発表を予定しておりますので是非ご期待ください。

このように、ゲームのために必要なことは何でもやろうということで、ユーザーとゲームの間のインターフェースをより革新させるために必要なツールをどんどん導入していこうと思っています。

先日発表させて頂いた、MetaMaskを提供されているConsenSys様との提携では、ゲームに特化したウォレットを開発していこうということで、1つ大きなステップであると思っています。

こういった形で、今後もゲームユーザーにとってより使いやすいUI・UXに資するパートナー様との提携を進めていこうと考えております。

結果として、先程も少しお話させていただきましたが、ユーザーが一切ガス代を意識することなくゲームをプレイできる、且つスピードとしても一瞬でトランザクションが完了するというようなエクスペリエンスを提供できるのと、ディベロッパーさんあるいはIP保有者の方々にとってもかなりフレキシブルなデザイン、FTないしNFTのデザインが出来るような、プライベートに近い環境を提供することが出来ます。

まだまだ僕らは走り始めたばかりのプロジェクトではありますが、こういった仕組みの元で、ありがたいことに、先週資金調達のリリースを発表させて頂きました。

日本円で25億円、USドルで20ミリオンとリリースしましたが、95%以上が海外の投資家様からの資金調達でした。

一部ご紹介ですが、数日前グローバルのTechCrunchトップページに我々の資金調達についてご紹介頂いています。

先ほどもお話ししましたが、9割以上が海外の投資家となっておりまして、Web2時代からスタートアップを見てきた僕からすると、本当に隔世の感があるというか、設立してから半年くらいの会社が9割以上海外の投資家から資金を調達するというのは想像していませんでした。クリプトのボーダーレスな特徴を体感した出来事でした。結果として、60くらいの個人ないし法人の投資家からの資金調達となりました。

森山氏登壇写真

今後のスケジュールとしては、マーケットの状況によって、早めにメインネットローンチしたいと考えています。

その後、メインネットローンチと同じタイミングで、海外での上場と、年明け日本での上場を予定しているのと、後はゲームタイトルも12月末までには10タイトルぐらいは発表したいと思っております。

今世界中から「このチェーンを使ってゲームを展開したい」というようなお声かけを30、40頂いておりますので、是非皆様の中にも関心のある方がいらっしゃいましたらお声かけ頂ければと思います。

これまで色んなゲームディベロッパーさんともお話をし、今後革新的な、エポックメイキング的なゲームが出てくるとは思いますが、僕らとしてはどのような要素があると今後面白いブロックチェーンゲームになっていくのかについて、日々議論しながら考えていかなければと思っています。

弊社代表も含めて、3つ程視点があるのではと話していまして、簡単にご紹介したいと思います。

1つ目はトークンエコノミーです。ブロックチェーンゲームないしはブロックチェーンに本気で関わられたことのある方はお分かりだと思いますが、やはり大きな革新というのはビジネスモデルの考え方が変わっていて、ブロックチェーンプロジェクトの場合はPLはあまり関係なく、基本的にはトークンバリューを上げるということが重要になっています。ですので、ビジネスモデルというよりはトークンエコノミクスをどうやって考えるかが中心になっているということが挙げられると思います。

トークンエコノミクスがないプロジェクトというのはビジネスモデルのないプロジェクトと全く一緒になると考えていて、今先行しているプロジェクトとの中で、よくポンジじゃないかと言われるように、ビジネスモデルがほぼほぼ無いようなプロジェクトが多い印象があります。

ほとんどがトークンを配るだけになってしまうとサステナブルにならないので、サプライとデマンドでいうとデマンドですね。いかにお金を払ってでも使いたいと思ってもらえるようなゲームを作っていくかが重要だと思っています。

今までのソーシャルゲームというのは、色んな方々から課金を受けて継続していたわけですから、これから質の高いゲームとして、そういった要素をきちんと組み入れていくというところが1つあります。

後は価値の蓄積、価値の保存といいますか、これは実は僕の前の会社でも取り組もうとしていたことなのですが、例えばMove to Earnなら、ユーザーが動いた結果として何らかの情報が収集されその価値が蓄積されていくような仕組みがないとスケールが効いてこないというところがあります。

チェーンを作る立場ではありますが、こういった仕組みを内包したゲームを作っていきたいと思っております。

2つ目の視点は、クリプトネイティブの世界だとIPの作り方が大きく違っているなと思っております。今までと違った新しい考え方なので、はじめは受け入れるのが難しいとは思いますが、これはNFT.NYCでも実感したことなのですが、簡単に説明したいと思います。

例えば、映画であれば、ウォルト・ディズニーといったIPがどうやって生まれてきたかというと、基本的にマス・ユーザー向けのプロダクトというものが先にあったと思います。映画というマス・ユーザー向けのプロダクトがあって、その中から副産物としてIPが生まれてきたという構成だと思うんです。

ただ、今クリプトの世界で起きているIPの生まれ方は、どちらかというと最初からマス・ユーザー向けのプロダクトがあるわけではなく、いきなりIPを作るところから始まっています。そのIPが限定ユーザー向けのNFTという形で生まれているという流れが今の状況だと思ってまして、この限定ユーザー向けのIPを育てるというところにNFT制作会社さんは、色んなブランディングを通して価値を向上させて、そこで一定の価値が出来上がったところから色んな複数のプロダクトを展開する手法を取っているなと、NFT.NYCでも感じました。

これを忠実にやっている事例がDoodlesというNFTプロジェクトです。

NFT.NYCでもサイドイベントで色んなものが数億円以上の価値をかけて依頼されていました。むしろメインよりもサイドイベントのほうが盛り上がっていたんじゃないかと感じる方も多数いらっしゃったと思います。

Doodlesはご存じの通りコレクタブルNFTで、1万人向けに限定した製品を出しています。ですので、これはマス製品ではなくて本当にこの1万人だけを対象にした、ある意味高級品という扱いになっていると考えられると思います。

フェラーリだとかロレックスだとか、そういう本当に一定の層にだけ売れればいい、そういった方々にとことん広告費とブランドを使って価値を高めるというアプローチがNFT.NYCでも見られたと思います。

こうやって価値を高めていったNFTのDoodlesがNFT.NYCのサイドイベントで発表したのが、それをもとにゲームないしはミュージック、アニメーション領域までIPを広げてコンテンツを作るという手法です。

Oasys事業説明資料2

今まで既に出来上がったIPを保有する会社様の立場で考えると、このIPの作り方の大きな違いは驚きでしょう。今後は考え方を大きく変えないといけないと実感した出来事でした。

3つ目の視点としては、ブロックチェーンのスマートコントラクト自体を使ってプレイする、遊びを作ることは出来ないだろうかというところから、最終的に『何故ブロックチェーンである必要があるのか』ということに行きつくと思っています。

こういったところまで最終的に盛り込んでいく、そういうブロックチェーンゲームが今後生まれてくると楽しくなるだろうなと思っています。

実際の実装における課題は、チェーンの技術によって大方解決したいと考えていますが、まだまだ技術だけで対応できないところもありますので、色んなプロジェクトの方々とハンズオンで議論しながら課題の解決を進めているという状況です。

日本のプロジェクトの場合、特に日本国内での規制対応が論点になっていますので、今後の見通しを含めてお話しております。

最終的にどうなるかは誰も予測はできないと思いますが、次の画像は僕が自分の理解用に整理した図です。これはトークンの持ち方を二軸で整理したもので、自分で発行したトークンを持っているのか、誰かが発行したトークンを持っているのかというのが縦軸です。

トークンを長期保有目的で持っているのか、短期保有目的で持っているのかを横軸で書いたときに、例えば今、自民党と色んな方々で議論している、法人が保有するあるいは自社が発行した暗号資産の期末含み益課税のような問題は、この図でいうと右上になります。

ただそこにポジティブな施策が出来たとしても、右下のWeb3の企業様へ出資頂いた会社様は自分が発行したのではなく誰かが発行したトークンを持つということになるため、立ち位置が違ってきます。いわゆる期末の含み益課税は救済対象にならないことになりますので、今のところ、これからご一緒させていただく日系のブロックチェーン企業様とは、ひとまず日本の税制改正によって何とか見通しが楽になるようなことは考えずに準備していこうと話しています。

Oasys事業説明資料3

また凄く明るい部分もNFT.NYCで感じています。

規制に関しては難しいところもありつつも、日本はかなりブロックチェーンゲーム、Web3という業界で、実は勝ち筋があるのではないかと思っています。

コンテンツが大変多く素晴らしいものがあるということもそうですが、実はブロックチェーンゲームがアクセプタンス、受容性という意味で日本は受け入れやすいという動きがあると思っています。

例えばSTEPNでも、日本向けに作られたわけではないですが、結果として日本で大変多くのユーザーに受け入れられました。むしろアメリカで日本のNFTを出したりすると燃えたりしていますが、日本はマーケットとしてもいいんじゃないかということで、海外の優良なプロジェクトも日本支社を作ろうとしているといった話もNFT.NYCで耳にしました。

ということで、僕ら自身が日本発のブロックチェーンですが、僕らのブロックチェーンを使って、且つ日本発で、日本のマーケットで勝っていけないかと考えていまして、そこで是非皆様とご一緒できるところがあればいいなと思い、お話をさせて頂きました。

僕からのご紹介は以上です。ありがとうございます。

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