業界の第一人者たちが語る、ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)メディア

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ブロックチェーン業界と他業界が繋がる場の創出を目的としたイベントシリーズ「#CONNECT」。2019年9月30日、ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)ニュースの読み解き方と題して、第1回が開催されました。

メディア記者向けに行われた今回の#CONNECT。あたらしい経済 編集長の設楽氏より仮想通貨・ブロックチェーンの基礎の説明があり、その後CoinPost / NODEE 編集長の各務氏より、仮想通貨関連ニュースをどのように読み解くか?というテーマが語られました。

最後には、設楽氏、各務氏に加えてモデレーターとしてあたらしい経済 ジャーナリストの竹田氏が登壇し、QAトークセッションが行われました。

こちらの記事では、仮想通貨ニュースの読み解き方およびQAトークセッションの様子を中心にまとめます。

登壇者紹介

設楽悠介(しだら ゆうすけ)氏
幻冬舎 あたらしい経済 編集長

幻冬舎でブロックチェーン・仮想通貨(暗号通貨)メディア「あたらしい経済」を運営。また同社コンテンツビジネス局で電子書籍・コンテンツマーケティング・新規事業等を担当。漫画出版社「幻冬舎コミックス」、クラウドファンディング出版の「エクソダス」等の取締役を兼務。また個人活動としてNewsPicks野村高文氏とのビジネスユニットを組み、「風呂敷畳み人ラジオ」をはじめとした、数々のコンテンツを発信中。「風呂敷畳み人サロン」「サウナサロン」などのオンラインサロンを主宰。

各務 貴仁(かがみ たかひと)氏
CoinPost / NODEE 編集長

高校卒業後アメリカ、カナダへ4年間の留学を経験。2017年1月から仮想通貨関係の事業に携わり、同年7月より仮想通貨・ブロックチェーン専門メディアCoinPostを立ち上げ編集長となる。国内外の仮想通貨、ブロックチェーン界隈の著名人との数々のインタビューなどを軸に、仮想通貨・ブロックチェーンの情報をより早く正確な情報として届ける運営体制に力を入れている。

竹田 匡宏(たけだ まさひろ)氏
幻冬舎 あたらしい経済 ジャーナリスト

兵庫県西宮市出身で早稲田大学人間科学部卒業のクリプトジャーナリスト。 幻冬舎あたらしい経済を立ち上げて、運営中。 ブログ「たっけのメモ」ラジオ「ミレニアル世代のアタマの中」を配信中。

仮想通貨・ブロックチェーン関連ニュースの読み解き方

各務氏登壇写真

今回のイベントはメディア関係者向けということもあり、CoinPost 編集長の各務氏より仮想通貨・ブロックチェーン関連ニュースからどういったことが読み取れるのか?また、今後市場に影響を与えると考えられるポイントが語られました。

ハッキングニュースを読み解く

今年に入ってからも、残念なことにハッキング・資産流出のニュースがありました。こういったニュースはどのような影響を及ぼすのでしょうか?ハッキングの主なパターンから予想される影響を見てみましょう。

パターン1

秘密鍵の不正取得:取引所のサーバーなどを攻撃して秘密鍵を不正に取得する手口。

パターン2

ブロックチェーン自体への攻撃:バグや脆弱性をついてブロックチェーン自体を改ざんしてしまう。

パターン1の場合、あくまで取引所などのサーバーへのハッキングであって、ブロックチェーン自体への攻撃ではないということになります。ですが、仮想通貨全体の不信感に繋がったりと、業界全体にネガティブな影響を与えることが予想されます。

それに対して、パターン2の場合は、アルトコインにより影響が出ると考えられます。ビットコインのように多くの人がマイニングに参加しているものだと、監視体制も強いのでセキュリティが担保されています。

しかし、マイナーなアルトコインなど、ハッシュレートが弱いものは攻撃対象となりやすい。このようにセキュリティを担保できない通貨の価値が下がってしまうことに繋がるわけです。アルトコインの市場低迷はこういったニュースの影響も大きいと考えられます。

高度化する手口

日本でも複数の取引所がハッキングの被害にあってしまい、自主規制団体を中心に改善の取り組みが進められてきました。その結果、取引所のセキュリティレベルは数年前と比べて圧倒的に上がっています。ただ、それと同時に攻撃を仕掛ける側のレベルも上がっているというのが現状です。

ビットポイント社の場合、自主規制ルールに基づいてホットウォレットの残高を調整していました。そのことにより、被害拡大を防いだという話もあります。ハッキングされたイコール管理体制がずさんである、仮想通貨は信用できないといった単純な話ではありません。

仮想通貨に保険をかけることはできるか?

仮想通貨取引所のハッキング被害が続く中、仮想通貨流失に対するリスクヘッジとして「保険」をかけることはできるか?という議論もおきていますね。直近では、仮想通貨取引所TaoTaoが、不正ログインによる損失を補償する制度を発表しました。

日本国内では、仮想通貨交換業者が20社以下である中、うち3社が被害にあってしまっています。そのため、保険をかけるとしたら保険料は高額になることが予想されます。この金額の問題は大きなネックとなりそうで、現時点では難しいと考えられるようですね。

カストディの可能性

ハッキングリスク軽減などの観点から、カストディにも注目が集まっています。将来的に、第3者機関をおいて取引所複数社の仮想通貨を一括で管理できるようになるかもしれません。証券でいうほふり(保管振替機構)のようなイメージですね。

現在は、入出金のために各社が一部の仮想通貨をホットウォレットに入れて管理しています。これを、全部コールドウォレットに移して、借用証明のようなものを取引所間でやり取りすることで清算を行うことができるようになるのではないかと考えています。

仮想通貨交換所の形も徐々に進化し、より安心して取引ができる環境が整うことに期待したいですね。

マイニングと市場の動き

仮想通貨は法定通貨と異なり、取引が全世界に公開されていますよね。こういった特徴を踏まえ、仮想通貨特有の市場に関連するポイントがいくつかあります。今回はマイニングにスポットを当てて見ていきましょう。

ハッシュレートが上がると仮想通貨価格は上がるのか?

マイニングを行うマイナーが増えるとハッシュレートが上がります。では、ハッシュレートが上がると価格も上がるでしょうか?

実際のところは、価格が上がると新規参入するマイナーが増え、下がるとマイナーは撤退するので、基本的には価格が先行してそれにハッシュレートが追随する格好になると考えていただいて問題ありません。

マイニングマシン在庫とハッシュレート

マイナーが増えるとハッシュレートは上がりますが、新しいマシンが製造されてマイニングの効率がよくなった場合にもハッシュレートは上がります。そのため、マイニングマシン製造業者の在庫状況もハッシュレートに影響を及ぼします。

2017年は仮想通貨の価格があがってゆき、マイニングの新規参入が多かった時期です。マイニングマシンがよく売れるので、マシンの在庫はどんどん減っていきますね。今後の需要を見据えて、業者はさらに新しいマシンを作ります。

2018年始めに相場は一気に下落しましたが、それに反してハッシュレートはどんどん上昇していきました。これは、マイニングマシン業者がバブル崩壊を見抜けずにあたらしいマシンを作るための発注を大量に入れていたため、価格が下がり始めてマイナーが撤退していっているのに在庫は増え続けるという状況に陥ったわけです。

在庫切れになったところでハッシュレートが低下。価格も戻らず、多くのマイニング業社が仮想通貨を売り払って撤退し、さらなる相場の下落に繋がっていったのが2018年後期です。

中国の2大マイニング拠点における動き

マイニングに関することで注目すべきポイントとして、2点あります。1つ目は中国におけるマイニング事情です。中国にはマイニングの拠点が非常に多く、特に電気代の安い四川省、内モンゴル自治区に集中していると言われています。この2つのエリアにおいて10月は大きなターニングポイントになりそうなんです。

マイナーがたくさんいる四川省では水力発電が主力です。水が豊富にある豊水期は水力発電が活発ですが、10月から渇水期に入ってくるので電気代が2倍になってしまいます。ここで収益性を保てず撤退してしまうマイナーが出てくるかもしれません。

また、内モンゴル自治区では10月中にマイナー強制撤退の可能性が危惧されています。多くのマイニング業社が撤退を余儀なくされ、相場にも影響するのではないかという見方もあります。

今後のマシン在庫状況に注目

2つ目は、仮想通貨マイニングマシンの在庫状況です。現在、マイニングマシン業者大手のBitmainが大量のチップ発注をしていることが確認されています。最新機器だけで21万個分の発注となっており、これが2020第二四半期までに放出されると言われています。

そうなると現在のハッシュレートに比べて2倍くらいまで上がってくるかもしれません。これによってマイナーが撤退を免れ、引き続きビットコインの安定性が保たれるという考え方もできます。

仮想通貨・ブロックチェーンメディア運営裏話

登壇者集合写真

QAセッションでは、仮想通貨・ブロックチェーンメディアの最前線で活躍される設楽氏、各務氏、竹田氏が登壇。参加者から寄せられた質問に答えながら、メディア運営のリアルな裏側を語りました。

取材先の見極めはどうされていますか?

各務:詐欺プロジェクトとそうでないものをどう見極めていくのか?というのは非常に重要なポイントですね。

この業界は投資の領域と技術の領域でいうと、投資の領域の方がどうしても詐欺案件が多くなります。なのでまず投資は一旦区分して考えた方がいいのかなと思っています。

いいプロジェクトは『技術の力で世の中をどうよくするか?』という考え方をしています。プロモーションにはあまり力を入れておらず、技術に特化して取り組んでいる印象が強いですね。

竹田各務さんが今おっしゃったことと重なる部分もありますが、私の中では、3つの判断基準を持っています。

・技術に興味がないプロジェクト

・リーダーや経営者が話がうますぎる

・PRにばかり注力している

上記のいずれかに当てはまるものは、一度疑ったほうがいいかもしれません。

設楽ブロックチェーンはデジタルなお金以外にもいろんなことに応用ができる技術です。例えば契約書等の管理、ゲームやSNSなど、大きな可能性を秘めています。しかし、『ブロックチェーン×〇〇』をうたって、それらしいプロジェクトを作ってしまう悪徳業者もいます。

ここで考えてみてほしいのですが、イーサリアムのヴィタリック・ブテリンがイーサリアムを売り込んでくることはないですよね?本当にいいプロジェクトは売り込む必要がないわけです。

海外の主要なメディアで紹介されたとか、海外の著名人がプロモーションしているなど、海外で高く評価されてることをうたうのも、詐欺プロジェクトでよくあるパターンですよね。タイアップでお金を払えば内容をそれほど精査せず記事を掲載するようなメディアもたくさんありますし、プレスリリースをそのまま転載していているだけの場合も多かったりします。

仮想通貨・ブロックチェーンメディアはどのようにあるべきだと考えますか?

竹田私たちのような仮想通貨・ブロックチェーンに特化したメディアは、扱うものがお金に関わるので、メディアとしての責任もより高いものが問われますよね。

私たちが紹介したで利益が出たり、逆に損出が出たりとダイレクトにユーザーに対して影響が現れるので、そういった意味でも真摯にに情報に向き合っていく必要があります。

各務我々Coinpostとしては、情報の縦割り化というところに取り組んでいくべきかなと考えています。ブロックチェーンは全てに使える万能の技術ではありませんが、様々な分野とのコラボレーションによる活用が期待されいます。掛け合わせる分野によって明確にジャンル分けをして見せていくということが必要になると思っています。

設楽私自身は、2年前くらいに初めは投資の視点から仮想通貨・ブロックチェーンに興味を持ちました。そしてそこからそれを動かすブロックチェーン技術にさらに魅力を感じて掘り下げていきました。

その頃から国内外の色々な情報を積極的に調べましたが、残念なことに特にその当時国内のメディアやブログなどでは技術の本質を理解せずに、とりあえず海外のメディアの情報をほぼそのまま翻訳して記事してるようなクオリティの低いものが多かったです。あくまでにアフィリエイトでの売り上げを稼ぐために記事を作っているみたいな。しかもその翻訳も間違っているみたいなものもありました。

そんな広告目的でとりあえず数字稼ぐみたいなのではダメだと当時から思ってます。本来メディアってものはその情報が良いか悪いか、読者へ伝えるべきかという判断ができる知見を持って情報を出していかなければいけない。それが本来メディアとしてあるべき姿だと思います。そう考えて「あたらしい経済」を作りましたし、これからは僕らのこのナレッジを新聞社さんや一般の経済メディアさんと共有していきたいと思っています。

メディアに関わる人間としてどのくらいブロックチェーンを理解しておくべきですか?

竹田情報発信者として技術面も全てカバーしておきたいものですよね。私個人としては、プロジェクトがオープンソースで共有してくれている情報を利用して、プログラミングしてみるべきだと思います。プロジェクトをコントラクトベースで理解すると、非常に理解が深まります。

設楽将来的に仮想通貨・ブロックチェーンが社会に浸透してしまえば、よっぽど技術よりのメディア等でない限り専門知識はどんどん不要になってくるかもしれないですね。インターネットを扱うメディアは今多数ありますが、例えばその通信プロトコルについて記者が理解しておく必要があるかといえばそこまでは必要ないかもしれません。

しかし、ブロックチェーンがまだ社会に浸透するフェーズでない今は、それを多くの読者に誤解なく伝えるためにある程度知っておくべきではないでしょうか?少なくとも怪しいプロジェクトとそうでないものの判断ができる程度、この業界のメディアの記者は技術面についても知っておくべきだと思います。

また、界隈の優秀な方々とお話しすると専門用語や難解な言葉が多く出てきたりすることがあります。それをわかりやすく翻訳していくものメディアの重要な役目なので、一定の知識はつけておくべきですよね。

各務仮想通貨で言えば、ビットコインとイーサリアムの2つは必須で知っておくべきでしょう。それらの技術が応用されてできているプロジェクトが多いので、技術や背景を理解しておくことで、他のプロジェクトの理解度も上げることができます。

ブロックチェーンで言うと、コンソーシアム型の企業群というのが一つのポイントかと思っています。近年、企業ごとにプロダクトを作るというのではなく、情報共有網を発展させて複数社で新しいものをつくるという風潮が出てきて、企業間の繋がりが強まっていますね。

ライティングや編集に関わる人材はどのように探していますか?

設楽Mediumやブログを読んだり、TwitterなどのSNSで探すこともあります。

ライターとしてジョインしてくれるかは別として、人材としては特に今大学生でブロックチェーンに真剣に取り組んでいる方々が面白いですね。

今の大学生は、インターネットバブルやスマホバブルに乗れなかった世代です。今からFacebookやGoogleみたいなものを作ろうと思っても、世界で勝つのはものすごく難しい。しかし、ブロックチェーンという領域ではまだ日本にもチャンスがある、GAFAをひっくり返せる可能性がある。そういう熱い想いでこの業界にコミットしようとしている若い子達がたくさんいますので、注目しています。

各務記事編集に関わっていただく方は、英語力も必要だし、技術の知識も欲しいし、とかなり要件は高いので、人材探しは簡単ではありません。

最近、ライター職に応募してくる方々の層が変わってきたと感じています。今まで投資に興味がある方が圧倒的に多かったのですが、最近は技術面に興味を持っている人が増えていますね。

最後に

いかがでしたか?仮想通貨・ブロックチェーン業界に興味のある方には、身近な存在の業界特化メディア。お金に関わるコンテンツゆえに高い責任感が問われますが、世界中の情報と人とのコネクションが集まるメディア事業は勤務先としての魅力にも溢れています。

仮想通貨・ブロックチェーンメディアでは、オンラインメディアでのご経験や仮想通貨・ブロックチェーンに関する専門知識をお持ちの方を中心に求人があります。

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