ブロックチェーンゲームのエコシステムを支えるインフラ

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2022年7月11日に開催された「Non -Fungible Tokyo 2022」のセッション “ブロックチェーンゲームのエコシステムを支えるインフラ”をレポートします。

Peter Ing(ピーター・イング)氏
BlockchainSpace, Founder
Peter Ingは、Web3ゲームによる社会的流動性の創造を確信する。BlockchainSpaceを通じてPeterは、新興市場のPlay-to-Earnギルドがゲームによって駆動される新しいデジタル経済をナビゲートするためのデータ分析とツールを開発する。

Jeth Ang (ジェス・アン)氏
BreederDAO COO & Co-founder
Jeth Angは起業家として大きな経験を持ち、キャッシュフローがプラスの会社を多数設立。暗号、金融、市場に関する8年以上の経験があり、経験豊富なトレーダー、NFTコレクター、P2Eギルドリーダーでもある。Forbes Asiaの2022年30歳以下の30人の一人である。

Andy Chou (アンディ・チョウ)氏
Head of Ecosystem Development, Yield Guild Games
Andy Chouは、分散型Play-to-EarnのゲームギルドYield Guild Games(YGG)のエコシステム開発責任者。YGGのSubDAO拡大戦略やYGGエコシステムのためのその他の戦略的イニシアチブに焦点を当てる。YGG以前は、eBayのコーポレートおよびビジネス開発チームで、アジア太平洋地域だけでなく、eBayの買収、投資、およびさまざまなビジネス開発活動にグローバルに取り組んできた。eBay入社以前は、サンフランシスコのStifel Financialで投資銀行家としてテクノロジー分野を中心に活躍。カリフォルニア大学サンディエゴ校で経営科学の理学士号を取得し、優秀な成績で卒業。

田中 章雄(たなか あきお)氏
Headline Asia 創業パートナー
Headline Asiaの創業パートナー。Headlineは北米、南米、欧州、アジア各地でインターネットベンチャーに投資するグローバルVC。また2021年にAnimoca, Circle, Digital Currency Groupなどの海外投資家が中心に出資する約110億円のトークン専用ファンドIVCを立ち上げ、現在アジアで最もGameFiやWeb3のシードステージに出資するVCとして150以上のクリプトポートフォリオを持つ。Headline及びIVCのポートフォリオにはSoRare, C2X, Crypto Unicorns, Irreverent Labs, MetaTheory, Proof of Learn,YGG, YGG SEA, YGG Japan, JPYC, Yay! (Nanameue), Double Jump, Oasys などが並ぶ。

田中氏:本セッションではブロックチェーンゲーミングのエコシステムを支えるインフラについてお話しできたらと思います。

始めに自己紹介をします。本セッションのモデレーターを務めさせていただきます、田中章雄と申します。

今はInfinity Venturesのクリプト部門の投資を担当しており、特にアジア領域で多く投資をさせて頂いております。

未来にむけて、クリプトのエコシステムがどう変わっていくのか、今このブームが終わりかけている最中なのかもしれませんが、マクロの大きなトレンドについて話し合えると嬉しいです。

2020年の夏頃がDeFiのエコシステムが非常に大きくなったタイミングだったと思いますが、続く形で昨年の夏ないし昨年の春頃、当時のフィリピンで、何が起きていたのかわからないくらい、GameFiという形でブロックチェーンを使ったゲームが急速に拡大していった年だったと思っています。

このフィリピンで起きたメガブームの中で非常に大きな成長を遂げた3つの会社にお越しいただいておりますので、その過程の中で何が起きていたのか、そのインフラ領域のところで今後どうなっていくのかについて、お話しできたらと思っています。

早速登壇者の皆様に自己紹介していただきたいと思います。

まずはYGGのAndyさん、お願いします。

Andy氏:初めまして、Andy Chouと申します。YGGのエコシステムの開発を担当しています。

YGGはPlay-to-Earn、遊ぶことで収益を得られるゲームのエコシステムを提供している会社です。私はこのゲームの中でSubDAOと呼ばれる、DAOのエコシステムを大きくするところをメインのミッションとして持っています。それまではサンフランシスコの投資銀行や、eBay、テック系の企業に在籍もしました。

田中氏写真

田中氏:ありがとうございます。

次はBlockchainSpaceのPeterさん、お願いします。

Peter氏:BlockchainSpaceのファウンダーのPeterです。

BlockchainSpaceは、ゲーミングギルドに関する分析などができるサービスを提供しております。

現在、世の中に様々なGameFiサービスがあると思います。2万4,000を超えるギルドのデータにアクセスして、それぞれの課題を分析して、各ギルドのデータであったり、そういったものを俯瞰してオーダーして把握できるような分析ツールを提供しています。

フィリピンに来る前は、10年ほどeコマースの領域で仕事をしておりました。Axieというブロックチェーンゲームが大きくなると同時にこの領域に入ってきました。

田中氏:Peterさん、ありがとうございます。

次はBreederDAOのJethさん、よろしくお願いします。

Jeth氏:こんにちは、Jethと申します。

BreederDAOの共同設立者兼CEOです。

我々はブロックチェーンの世界におけるデジタルアセットを作るサービスを提供しております。具体的には、ブロックチェーンベースのゲームエコノミーにおけるアセットの生成と、ゲームをプレイしていく中でNFTが変化したり、アセットとして使っていく中で最終的にこれらを売るという流れがあると思います。如何にギルドに対して最大の収益を得られるタイミングで売るかということを目標に、このサービスを通して収益をもたらす方法を提供しています。

田中氏:Jethさん、ありがとうございます。

より深いトピックに入っていく前に、今回2つのキーワードについてお話していきたいと思っています。

1つはもちろんブロックチェーンゲームですね。どなたかこの「ブロックチェーンゲームとは何か」という定義について簡単にお話しいただけませんか。

Peter氏:私の「ブロックチェーンゲームとは何か」という定義については非常にシンプルで、「クリプト、暗号資産もしくはNFTがコンピューターゲームと結合したもの」です。これによってゲーム内のアセットや資産を持つことが出来るようになっていて、ブロックチェーン上で他の所有者へ移転したり、エコシステムの中でやり取りしたり、そういったことが出来ることが特徴だと思います。

加えて、トークンは、暗号資産という形で表現されることが多いですが、エコシステムの中に存在する過程で、例えばゲームをプレイする中で特別な暗号資産を入手することが出来るところ、こうして得た暗号資産について現実世界の通貨と交換できるところが特徴だと思っています。

田中氏:次にブロックチェーンゲームについて話す中でGameFiという言葉をよく聞くと思うのですが、この言葉がどのような意味を持つかについて教えていただけますか。

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Andy氏:今、GameFiという言葉が出てきたのはとても面白いと思っていて、我々の業界では、GameFiではなくPlay-to-Earnという「遊ぶことでお金を稼げるよ」という表現をすることが多いと思ってます。

先ほどPeterさんが話された、ゲームの中でデジタルのアセットが使えること、その分散型台帳やブロックチェーンが使えるところが非常に特徴的なポイントだと思っています。

また暗号資産ベースの報酬が得られるというところも、重要なポイントだと思います。

こうしたWeb2の世界からWeb3の世界観に移行していく中で、このような大きな変化が発生すると思っております。

田中氏:IVCのチームの中でもDeFiは金融のゲーム化に近い概念だと思っていて、GameFiという言葉はゲームの金融化に似たような概念で、それぞれ別々の観点からそこに向き合っている状況なのではと思っています。

一方で、御三方が触れていただいた概念で、ギルドという言葉がありました。ゲームの世界では割と馴染み深い言葉ではありますが、改めてブロックチェーンゲームという世界でギルドという言葉はどのような意味合いを持っているのか聞かせていただきたいです。

Andy氏:ギルドというのはシンプルにコミュニティを示すものだと思います。ゲームをプレイするという、ゲームを中心としたコミュニティのことだと思っています。

まさに私が今SubDAOで向き合っているところなのですが、こういったコミュニティの形態はモノリス的で、1つの組織を中心に形成されるというよりは、複数の自律分散的な概念が寄り添って出来上がっていくところが良いと思っています。例えば得た収益をそれぞれの目的のために他の人に貸し出すことが出来たりするのが面白いと思っています。

田中氏:YGGのエコシステムの中で現存するSubDAOとは具体的にどんなものでしょうか。

Andy氏:現在、いくつか地理的に分散しているSubDAOがあるのですが、アメリカ、東南アジア、インド、ラテンアメリカや南米圏に1つずつ、また日本のYGG Japanやブラジルにも拠点があります。これらが今活動するYGGのSubDAOを担っています。

田中氏:ありがとうございます。様々な国でブロックチェーンゲームがプレイされている中で、どういうわけかフィリピンのブロックチェーンゲームコミュニティがずば抜けて大きいと認識しております。まさに本日の3人もフィリピンの会社です。

この1年、我々が投資させていただいた会社の中でも、フィリピンに拠点を置く会社が多くなっています。コロナ禍でロックダウンもあったと思うのですが、なぜフィリピンでブロックチェーンゲームのコミュニティが大きくなったのか、その背景についてお聞きしたいと思います。

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Peter氏:私自身フィリピンでブロックチェーンゲームの成長を見てきました。元々は物理的なMeetupという形の対面で顔を合わせて、クリプトの世界にどんどん人が招かれるといった構造が多かったのですが、今はWebを通してゲーミングの世界に入ってくる人が多くなってきていると思います。

如何にしてここまで大きくなったのか振り返ってみると、Axieというブロックチェーンゲームがありまして、仮想通貨市場が盛り上がっていた頃、時期でいうとDeFiが盛り上がっていた2020年の夏頃に展開されていたゲームなのですが、このAxieというゲームが非常に注目を集めました。

元々はWebブラウザで遊べるゲームで、それがスマホでも遊べるようになり、実はフィリピンはスマホ市場が非常に大きい国で、スマホの普及率が120%、つまりひとり1台以上の所有台数なので、モバイルゲームと非常に相性が良い国なんです。加えて、COVID-19拡大の波がこの国にも襲ってきました。私の同僚にも働いていた会社から解雇される人が出てきたりしました。そういった中でこのAxieというゲームのプレイヤーが非常に増えていることに気づきました。

あるとき、24時間1週間寝ずに休まずにプレイし続けているのが観測されました。はじめは、BOTがゲームをやってるのではないかと勘ぐってしまい、実際にそのプレイヤーの方にコンタクトを取ってみたんです。すると、「BOTではないです」という返事がきて、証明してほしいとお願いしたところ、ご家族全員、合わせて10人くらいが部屋にいるような写真が送られてきました。その全員がスマホを使ってAxieのゲームをプレイしていて、全員が同じWi-Fiの端末を使っていたので、ひとりのユーザーが非常に長い時間遊んでいるように見えてしまったのです。

このように最初は一部の家族や、その人たちの口コミを通じてゲームの存在が知れ渡ったのではないかと思います。丁度ロックダウンが行われて、仕事を失ってお給料もなくなったタイミングでAxieをプレイすると遊んだ分のお金を稼ぐことが出来るという口コミを聞きつけ、まさに携帯も手元にあって時間もあって遊ぶことが出来て、しかも収益も得られるという絶好の機会だと。結果的にフィリピンで一気に人気が爆発しました。

ユーザーが増え、コミュニティが広がっていく中でビデオを使ったチュートリアルや、使い方の案内方法なども一緒に広まって、フィリピンでどんどん根付いていったという背景があったと理解しています。振り返ると、2020年の8月頃には500人くらいしかプレイヤーがいない、すごく小さなゲームだったのですが、翌2021年6月には300万人のプレイヤーが遊ぶような大きなゲームになりました。その爆発的な成長の背景にはこういった口コミがあったのかなと思っています。

田中氏写真2

田中氏:Peterさんがこのようなフィリピンのブロックチェーンゲームに携わるきっかけとなったのはなんでしょうか?

Peter氏:2018年にAxieの黎明期に関わる機会がありました。当時フィリピンでMeetUpがあって、創業者の方やいろいろな人と会う機会もあり、クリプトの世界で意味ある取り組みが出来ないか模索し、いろいろ考えていた最中でした。このタイミングでゲームプレイヤーがMetaMaskを開いて自身の資産をこのゲームに送って、ゲーム内のトークンに交換してという行動をとっているのを非常に間近で見ていました。これまでのブロックチェーンアプリケーションのユースケースではなかなかなかったような、実際の経済活動に根付いた行動を見ていて、これは非常に興味深い取り組みだと思って、より深く関わるようになっていきました。

2020年8月のタイミングでAxieのゲームの中でギルドという概念が出始めて、Axieのゲームをプレイするためにデジタルアセットが必要になりました。ですが、そのためには最初にまとまったお金を用意しなければなりませんでした。

このようなところから思いついたのが、自分が持っているアセットを他の人に貸し出す仕組みです。その貸し出したアセットを使って得た収益は貸主である自分が7割を取って、借主が稼いだ報酬として3割を受け取れるというwin-winの形でこのギルドをどんどん大きくしてきました。そんな中で、手動のオペレーションだとなかなか辛いところが出てきて、これを如何に自動化するかを突き詰めていったところ、現在のサービスの根源に行きつきました。

田中氏:Peterさん、ありがとうございます。

私自身この1年前のことをよく覚えていて、初めて同僚のBrianさんがYGGに投資するとなった時に、すごく興奮していた記憶があります。正直なところ当初は何が起きているのかあまりわからなかったのですが、実際にフィリピンの街でこのようにゲームをプレイして稼いでる人がいるというニュースを見た時にフィリピンで今ブロックチェーンゲームがものすごい勢いで大きくなっているということを実感しました。

ブロックチェーンゲームは当初マイナーな存在だったと思います。ですが、フィリピンのこういったニュースの現状を見て、街中の様々な年代の方々がゲームで遊んでいるのを見て、ブロックチェーンゲームはITの世界に慣れたプロフェッショナルの人のみがプレイするものというよりは、様々な人が触れるような世界になって来るのではないかということを如実に感じたタイミングでした。こうしてブロックチェーンゲームの世界に可能性を見出して、皆様とも接点を持つことが出来ました。

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Andy氏:先ほどギルドを運営するというお話があったのですが、このようなものについては沢山自然発生しているところがあります。YGGもファウンダーのGabbyさんがこのようなギルド運営や資金調達、資金のやりくり周りをプロフェッショナルに行うことが新しいビジネスの中心地になるという直感を持っていました。私自身、YGGにまだ入っていない時に一度フィリピンに行きまして、マニラ郊外でいろいろなチームの人に会うきっかけがあったのですが、これがすごく原体験になっています。

Axieでレベルの高いプレイヤーがいた街にお伺いしたタイミングが、新型コロナウイルスのパンデミックのロックダウンと重なっていて、そのパンデミック期間を経ていく中で、気が付けば街中にものすごい勢いでバイクが増えているのが非常に印象的でした。

恐らくゲームを通して得たお金がバイクに交換されたのです。電子データが現実の資産に交換されているところをみることができて面白かったです。

田中氏:ありがとうございます。Jethさん、次にブリーディングについて聞かせてください。ギルド・財力・ブリーディングという概念があると思っています。BreederDAOでは実際にプロフェッショナルな業務として提供していると思うのですが、どういった経緯でこのサービスは生まれたのか、是非お話を聞きたいです。

実は初めてこのビジネスモデルについてお伺いした時は投資先の競合になるのではと思っていましたが、後々そうでないということが分かりました。改めてエコシステムの中でどうしてこのような事業を立ち上げようと思ったのか聞かせていただきたいです。

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Jeth氏:少し話題が戻るのですが、先ほどのAxieに関して、まずは私の個人的な話からさせていただきます。

私も初期にAxieをプレイし始め、小規模な500人くらいのギルドに入っていたことがあります。このギルドを大きくする過程で特別だったことが1つあります。それは、一般的なギルドはWeb経由で知らない人がどんどん入っていって大きくなることが多いと思うのですが、我々のギルドに関しては、自分の血のつながった家族や、本当に顔を知っている人しか入れないという点です。このような仕組みで大きくした、特別なギルドになっています。

先ほどのお話でもありましたが、新型コロナウイルスによるロックダウンの影響で家から出ることが出来なくなって、仕事がなくなってお給料も下がってという非常につらい状況がありました。元々、手元に携帯電話があり、暇な時間がある時にはFacebookなどのSNSがよく使われていました。ですので、ある意味Axieというブロックチェーンゲームが広がる下地は出来ていたと思います。このタイミングで仕事を失った方々や元々体に障害があってなかなか仕事をすることが難しかった人たちがゲームの存在を知ってチャレンジする、丁度いいきっかけになったと思っています。先ほどのお話を聞き、個人的な経験を思い出したので、お話しさせていただきました。

ご質問に戻ります。BreederDAOは、最初はAxie Infinityというゲームをプレイしていく中でエコノミー、どういった経済行動に基づいてそれが成り立っているのかを見ていました。その結果「ゲームをプレイするにあたって元手となるアセットが絶対に必要になる」ということが重要なポイントだと分かりました。アセットを手に入れるには法定通貨と交換して入手したりといろいろな方法があるのですが、こうして入手したアセットを使ってゲームをプレイして報酬を得るというチェーンのプロセスがあったと思います。我々は、ゲームをプレイしたい人が増えてきている一方で、同様にゲームをプレイするのに必要となるアセットを使いたいと思っている人が増えてきていると感じました。特にギルドの場合は人もお金も集まっていて、資金も潤沢にあるという状況だったと思います。

個人的な信条としてギルドはプレイヤーの流動性を高める役割、ゲームをプレイしていく中で、人と人とがマッチングしないという状況を解決するためにあると思っています。流動性の課題が解決した後に、ゲームをプレイするための資産はどのように手に入れればいいんだろうかと考えるようになりました。ゲームをプレイしたいと思う一方で、アセットを得る機会がなかったり、ハードルが高すぎて買うことが出来なかったりします。その解決策として、初めはパイロットテストという形でAxie上の資産を沢山持っている人を募り、貸し出して儲けるというような仕組みを考え出しました。それを実践した結果、900%くらいの急成長を遂げることが出来ました。

そして、この事業に絞って展開していこうと進めた結果、IVCさんや、YGGさん等、いろいろな人とお会いするきっかけが出来て、様々なブロックチェーンゲームに適したアセット作りにフォーカスしている今に至ります。

田中氏:Jethさん、ありがとうございます。

今のお話の中で、今回のセッションで大事だと思っていた「ブロックチェーンゲームの中でインフラを作る」という点についてもお話ししていただけたと思っています。

ブリーディングはまさにこういったことに該当するのかなと思っているのですが、このようにブロックチェーンゲーム業界にまだまだ足りないパーツがあるというか、至っていないポイントがあると思います。まだまだ足りていないと思うポイントについて、Peterさんお願いします。

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Peter氏:私自身、Axieのゲーム内で2022年にゲーミングギルドを立ち上げました。これをスケーリングするプロセスの中で様々な難題にぶち当たりました。例えば、プレイヤーの管理や、新しいメンバーの選定、月末の報酬の払い出し、さらには報酬の分配をいかに効率的に行うか等です。

報酬の分配に関して、最初は、10~20人にお支払いすればよかったのですが、100人、1000人と、規模が大きくなるにつれて数分で終わる作業ではなくなり、如何に効率的に進めるかが大きな課題になりました。最終的に、ワンストップのソリューションとしてERP(統合基幹業務システム)を作るようになりました。

また、新しくギルドに入ってくるメンバーをどのように選ぶかについては「これまでのゲーム経験をおしえてください」「どれくらい知識がありますか」など一般的な質問を自動的に聞くような管理システムを作ったりしました。このようなスケーリングに伴う課題感、ギルドを大きくする中でどうしても発生してしまう課題のために、現在インフラとしての機能を幾つか作って、提供しています。

直近の課題では、各ブロックチェーンゲームのアセットのパフォーマンスについて詳しいデータ分析をして、パフォーマンスが良いところはどこかを確認したりする必要があると思います。そういったことも裏側でシステムを作ってわかるようにしたり、そのようなパフォーマンスの情報をもとに最適な量の資金をプレイヤーにローンとして貸し出して、収益の期待値に基づいて収益を得たりできる仕組み化を進めている状況です。

ですので、ギルドについては、単純に、楽しいゲーム上の集まりというよりは、本当にビジネス的に創生している感じです。こういったギルドの生成にまつわる課題は、中長期的に、いろいろなギルドで発生する共通の課題になると思いますので、解決できるサービスを作っていきたいです。

田中氏:イメージでいうと、ギルドにおける人事システムに近いですかね。

Peter氏:仰る通りです。従来の世界観・企業観でいう、人事評価や、給料の支払いなどについて解決する製品として理解いただけるとイメージが近くなると思います。ただ差分としては、これを更にWeb3の世界に根付いた形で提供しているという点が特徴的だと思います。DeFiなど、より自動化されている金融サービスとも繋いで、今Web2の会社が使っているものよりも更に多様で自動化が進んでいるところと連携するような形となります。ですので、新しいツールを駆使してどのように上手く組み込むかというところが難しいところになります。

田中氏:Peterさん、ありがとうございます。最後に皆様に1つずつ質問させていただいて終わりにしたいと思います。

現在、次のクリプトの冬と呼ばれる時代が迫っているという話がよくあると思います。その中で、この冬が明けた後の次の春、ないし夏ですね、これに備えていろいろな人が今それぞれプロジェクトを進めていらっしゃる最中だと思います。この冬が明けた後の業界全体の大きなトレンドについて皆様がどのように考えているのか、それぞれ、思っていることを是非お聞かせください。

ちなみに私は、既存の大きな会社、ゲームのIPを持っている会社がこの領域にどんどん入ってきて、恐らく幾つかが成功して、逆にもしかすると少し大変な失敗を遂げる会社も出てきてしまうかもしれませんがみたいなことを予想しています。

Jethさん、いかがでしょうか。

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Jeth氏:田中さんの意見に付け足す形でお話しできたらと思います。細かい話をするというよりは、大きなトレンドについての回答なのですが、

クリプトの冬に関して、実際のところクリプトに限らず現実世界も今、冬を迎えつつあると思っています。特に、USのテクノロジー企業から始まっている冬だと思います。私自身の予想としては、こうしたUSのテクノロジー企業はブロックチェーン企業にどんどん参入してきます。ただほとんどの会社は非常に残念な失敗を遂げる状況になってしまうと思っています。そういった非常に苦しい状況を耐え抜いた会社だけが、次の2、3年で生まれてくると思っています。

田中氏:Andyさんはいかがでしょうか。

Andy氏:私自身は大きなトピックが2つあると思っています。1つは先ほどの「何々をしてお金を稼ぐ」という話があったと思うのですが、その手段が更に多様化したプロジェクトが沢山出てくると思っています。

もう1つは非常に優秀なスキルを持った人材がこの領域にどんどん入り込んでくるというポジティブな予想をしています。例えば、今SubDAOという形でコミュニティをどんどん大きくしようとしているのですが、優秀な起業家の方々などがこの領域に入ってきているのを観測しています。そのため、これから、まだまだ大きな機会が眠っていると感じています。

田中氏:最後にPeterさんよろしくお願いします。

Peter氏:Web3のコミュニティがDAO化、分散化していって、シンプルなゲームのビジネスモデルから「何々をしてお金を稼ぐ」というムーブメントがゲーム以外のところにもどんどん拡大していくと考えています。そして、ゲームのネットワークに限らず報酬で受け取ったものをコミュニティが如何に分散するかという点の議論が、どんどん活発化すると思っています。

田中氏:皆様、本日はありがとうございました。

これからのトレンドがどうなりそうか、フィリピンで何があったのかについて、お話を聞くことができて非常に興味深かったです。またお会いできることを楽しみにしています。ありがとうございました。

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