デジタル通貨の可能性、変革へ向けた第一歩

株式会社ディーカレット デジタル通貨事業グループ シニアスペシャリストの飯盛 美季氏へインタビュー

ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)業界内で活躍する女性にスポットを当てた特集記事「ブロックチェーン女子部」。

今回は、株式会社ディーカレットの飯盛 美季氏にお話を伺いました。暗号資産取引所サービスとともに、デジタル通貨事業にも力を入れる同社。ディーカレットならではの強みとは?

飯盛 美季(いさかり みき)氏
前職のFX会社で暗号資産やブロックチェーンについて興味を持ち、転職を決意する。その後現職の株式会社ディーカレットへ入社し、現在はデジタル通貨事業グループ シニアスペシャリストとして従事。同社が主導するデジタル通貨フォーラムの事務局も務める。

暗号資産に感じた可能性と業界への想い

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ディーカレットで働く前は、FX企業で働いていました。その企業がJCBA(一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会)の会員だったことで、ブロックチェーンや暗号資産に触れるようになりました。私が代表でJCBAの勉強会に参加していたんです。また、JCBA専務理事の幸 政司氏との繋がりもあり事務局のお手伝いもしていました。

暗号資産について知っていくうちに、FXと暗号資産の取引には近いものがあると感じるようになりました。FXの会社で暗号資産の取引ができないかと思い社内で提案を行ったりもしましたが、当時、世間では暗号資産のハッキング事件なども起きてしまい残念ながら実行へ移ることはありませんでした。

FXや株式といった既存の金融商品は、枠組みが出来上がっているのである程度完成している状態ですよね。私が暗号資産について知り始めた当時は、この業界は規制すらもない状態でまさにこれから作り上げていくという段階でした。さらにブロックチェーンという最新技術が裏側にあるということで、非常に可能性を感じたんです。

また、金融商品としてだけではなく、決済手段としても伸びるのではないかという思いもあり、2017年後半ごろに業界で働くことを目指し始めました。

ディーカレットの強みとは?

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私がディーカレットの門を叩いた時、企業のステータスとしてはこれから取引所のライセンスを取るという段階でした。国内に暗号資産取引所は多々ありますが、ディーカレットで話を聞いてみて、取引所としてだけではなく決済方面への応用をしたいという考えもあり、そういった部分で共感できたんです。

さらに大手企業がパートナーとして名を連ねている点も、強みだと感じました。新しい業界で大きく伸びていくためには、一緒に協力して取り組んでいける企業があることが重要だと思ったんです。

暗号資産を取り扱う難しさ

2018年の夏にディーカレットへ入社し、取引所のリリースへ向けて取り組みました。完全な準備段階でしたので、とにかくまずは取引所サービスを開始するべく私を含む社員全員で、取引所事業にコミットしましたね。2019年3月にライセンスが取れ、サービスを開始しました。

それからは、テクノロジー・ビジネスアライアンスという部門で暗号資産の新規事業企画などに携わっていました。そこで気づいたことは、暗号資産がたくさんの可能性を秘めているのは事実ですが、調べれば調べるほど今の状況では『暗号資産での決済は簡単ではない』ということでした。

というのも、暗号資産にはボラティリティがありますので、税金の計算をどうするのか?そして規制もまだ出来上がっていない状態でどう進めていくのがベストなのか?といった解決に時間がかかりそうな問題が次々と出てくるのです。

現時点では、暗号資産単体だとできることが限られてしまう印象がありました。

決済のプロが集う、ディーカレットのデジタル通貨事業

そんな中、デジタル通貨事業を本格化していくことが社内で決まり、2020年2月よりデジタル通貨事業グループへ異動し、デジタル通貨事業に本格的に取り組んでいく形になったんです。

ここで定義しているデジタル通貨とは、「通貨の3機能を持ち(支払い手段、価値の保存、価値の尺度)、電磁的に価値を記録したもの」であり、主にはCBDC(中央銀行デジタル通貨)、ステーブルコイン、民間発行デジタル通貨がそれにあたります。当社のデジタル通貨事業グループではブロックチェーンベースの民間発行デジタル通貨を対象としています。

ディーカレットのデジタル通貨事業グループには現在約10名が所属しており、決済の専門知識を持った者や決済関連の法律に詳しい者、デジタル通貨発行プラットフォームの企画開発を行う技術者などで構成されています。

多くの企業・団体を巻き込み進むデジタル通貨の議論

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2020年の6月から9月にかけて、デジタル通貨勉強会というものを実施し、ディーカレットはその事務局を務めさせていただきました。

座長に前日本銀行決済機構局長の山岡 浩巳氏を迎え、各方面のトップ企業はもちろん、オブザーバーとして各省庁の方々にもご参加いただきました。

ここでの議論は、日銀が発行するCBDCではなく民間発行のデジタル通貨について、どのような活用ができるかという検討になります。

2020年12月からはデジタル通貨フォーラムを立ち上げ、効率化やコスト削減、新しいサービスの創出といった様々な項目に関するユースケースを業界ごとに検討して行ってPOC*を進める取り組みを行っています。

*Proof of Conceptの略で、「概念実証」とも言われる。新しい技術や概念について、効果や効用、技術的な観点から検証する行程のこと。

大変な分、収穫も大きい

今のところユースケースは19ありますが、それぞれ分科会を立ち上げ個別に検討していきます。こちらでも事務局をさせていただいているのですが、参加企業・団体が多く、内容も多岐に渡るため、大変なことも多いですね。

しかし、それと同時にとても良い経験にもなっています。デジタル通貨はブロックチェーンを使った新しい取り組みです。まさに最先端の分野でそれぞれの業界を代表するような企業の皆さまとデジタル通貨のユースケースの検討をするというのは、スタートアップ企業にいながら体験できることではありません。

また、内容も多岐にわたるため、それぞれの業界のことを知って、勉強できるというのも私にとっては、とても魅力的です。

こちらのフォーラムでは、デジタル通貨が実用化されたときに具体的にどう活用できるのかということについて検討しているので、もし、将来日銀がCBDCを発行した場合にも応用できる内容だと思います。日本経済のDX化や金融のイノベーションに役立てているのではないかという実感があるので、やりがいを感じています。

デジタル通貨は私たちに何をもたらすのか?

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私たちが今検討しているこのデジタル通貨が浸透していった先には、どんな世の中が広がっているでしょうか?

現金は滞留を起こしやすいですが、デジタル化することで流動性が高くなったり、リスクが軽減できるようになると思うんです。例えば企業間でのやり取りを想像してみてください。

顧客がとある店でクレジットカードを使って買い物をします。そうするとクレジットカード会社側で決済が行われ、その売り上げがお店へ支払われるのは大体1ヶ月後くらいになるでしょうか。

この売り上げが着金するまでに他に大きな支払いがあれば、お店の資金繰りは厳しくなります。特に規模の小さな企業であれば、借入をしなければならない状況になってしまうかもしれません。

より効率的でスムーズな世界へ

一方でデジタル通貨での決済であれば即時決済ができるので、お店の売り上げもすぐに着金します。お店側は資金繰りが良くなり、さらに売り上げを上げるアクションをよりタイムリーに行っていくことができるかもしれません。

このように『お金の流れがよくなって経済がよく回る』そんな世の中をもたらしてくれることを期待しています。

また、デジタル通貨はそれ自体にプログラム可能なプログラマブルマネーとしての側面も持っています。

この特徴をうまく利用して、業務の効率化を図れる可能性もあります。デジタル通貨に契約情報を入れて送ったり、人の手で確認していたものをプログラムで自動化したりすることで処理スピードを上げ、そこに要していた人材をもっと重要な業務に回すといったこともできるかもしれませんね。

いつかやりたいは今やろう

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最近、子供の頃にやっていたバレエをまたやり始めました。もう何年もやっていなかったはずなのに、手捌き足捌きは意外と覚えているものですね。

バレエでは、指先や足先など細かいところまで意識して体を動かしていきます。気にする部分がたくさんあるので、他のことを完全に忘れて集中でき、かなり良いリフレッシュになりますよ。また、できなかったことがちょっとずつできるようになる感覚も楽しいです。

バレエを再開したのは、興味があったり、いつかやりたいと思っていることは今手をつけてみるべき!という考えからです。新型コロナウイルスが蔓延する先の見えない世の中だからこそ、いつかやりたいではなく、少しでもやりたいと思ったら行動するべきという思いが強くなりました。

これは仕事に関しても同じで、自分の中に生まれた『こんなことがやりたい』という思いに対してしっかりと動いていくようにしています。ブロックチェーン業界はまだ若いですし、主体的に動く人がいればやらせてもらえる環境もあるので、まずは自分自身が積極的に行動するよう心がけています。

2021年はデジタル通貨躍進の年となるか?

引き続き全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響もあり、2020年からキャッシュレス推進やDX化の動きが一気に加速しました。そこにダイレクトに貢献できるのがデジタル通貨だと考えています。弊社が開催しているデジタル通貨フォーラムへ興味を持つ企業が増えたことも、注目度の表れですね。

2021年は昨年末から行っているデジタル通貨フォーラムの取り組みの一貫である、デジタル通貨の有効性を業界ごとに検討している分科会で、PoCを通して、それぞれきちんと成果を残していきたいです。この分野において、日本でここまで大きな取り組みは今までなかったので、きっちりと進めていきたいです。

大きなイノベーションを起こしたり、世の中を変えるということは簡単なことではありません。特に社会への影響の大きい部分ともなれば、世の中に影響力のある企業の皆さまと協力して取り組んでいくことが大切だと思っています。

業界を目指す方へ

ブロックチェーン事業に関しては業界自体が若く、これから発展していく分野です。まだ業界の中にいる人も多くはなく、専門的に理解している人もなかなかいません。外から見ると何をやっているのかよくわからない業界でもあるので、入りづらい面もあるかもしれませんね。

しかし、そこが逆にチャンスだと思うんです。これから伸びていくという段階だと思っているので、いまジョインすればいいポジションも取りやすいですし、キャッシュレス化、DX化が加速している時代背景的にも有利な業界です。

そして、ブロックチェーン業界は、ぜひ女性にこそ活躍してほしい分野でもあります。男性と女性を切り分けるわけではありませんが、女性が少ない業界なのでさらにチャンスが大きいと言えるのではないでしょうか?興味があればぜひ飛び込んできてください。

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