ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)業界内で活躍する女性にスポットを当てた特集記事「ブロックチェーン女子部」。
今回は、株式会社Bassetの共同創業者、プロダクトデザイナーのウォルレーブン・綾氏にお話を伺いました。
RegTech(レギュレーション x テクノロジー)カンパニーとして、ブロックチェーン取引分析・監視ソリューションの開発を手掛け、暗号資産のリスク検知やマネーロンダリング対策のソリューションを提供する同社。ウォルレーブン氏が持つ仕事観と業界に対する思いとは?
ウォルレーブン・綾 氏
株式会社Basset共同創業者、同社のプロダクトデザイナーを務める。仮想通貨業界で 9 年以上活動し、bitFlyer Lightning、 chainFlyer、悟コインなど多くの著名サービスの設計に携わる。
目次
ビットコインとの出会いと決意
2011年ごろ、自作PCマニアの掲示板で面白いPCを見つけました。それが、ビットコインマイニングで使われているPCだったんです。当時はマイニングのディフィカルティが今より低かったので、ASIC(仮想通貨マイニング専用のマシン)などは不要で、通常のPCでもマイニングができるという時代でした。
ビットコイン関係の人たちと話すのは本当に面白いことでした。彼らは今まで出会った人とは違う種類の人々でしたね。暗号学に関する知識の深さは桁外れですし、現在のお金や社会の仕組みに対しても非常に強い思いを持っていました。
元々コンピュータサイエンスや暗号学に興味を持っていたので、ビットコインやブロックチェーンについて調べていくうちにどんどんその世界にハマっていきました。そして、2013年には、もうブロックチェーンの仕事しかしないと決めたんです。
“手触り感のある仮想通貨”へのこだわり
その後来日し、フリーランスでビットコイン系のプロジェクトに関わっていました。様々なプロジェクトのフロントエンドを作ったりデザインを作ったりする中で、『悟 (Satori)コイン』のデザインにも携わらせていただきました。
悟コインは、「実際に手に持つことができる」というコンセプトの仮想通貨です。仮想通貨はバーチャルなアセットではありますが、触れることで初めて出てくる実感というのもあると思うんです。
大学時代に美術を専攻していて、針で紙に凹凸を作っていき、眼では見えないが手で触るとなんの絵かわかるといったプロジェクトを作ったこともありました。元々、手で触る体験への興味が強かったんですね。
悟コイン以外にも、コールドウォレットなど実際に手に取ることができるモノの制作にはいくつも関わらせていただきました。(以下写真)
①手に取ることができる仮想通貨をテーマに生まれた悟コイン。1つのコインごとに0.001BTCを保有しており、コインに貼り付けられたシールを剥がすと秘密鍵のQRコードが現れる。現在は販売終了。
②使用するには中央のバーを折る必要があり1度しか使えない仕様になっているコールドウォレット
③中央の穴を針などで刺すことで暗号化できるコールドウォレット
④シードのリカバリフレーズのバックアップツール
その他にも、⑤秘密鍵を安全に保管するシンプルなハードウェアウォレット、⑥マウントゴックスのワンタイムパスカードなど、黎明期から業界を見てきたウォルレーブン氏ならではのグッズも見せていただいた。
bitFlyerからBassetへ
前職のbitFlyerには2014年12月に入社しました。当時は立ち上げから1年ほどしか経っておらず、メンバーもまだ数人でしたが、学びが多くとてもいい経験になりました。
bitFlyer Lightningの開発に当たり、パチンコ屋に一日籠もってサウンドエフェクトを考えたこともありました(笑)個人的にメダルゲームが好きで、どんな音が快感なのかをパチンコ台の効果音で研究しようと思ったんです。
デザイナーとしては、常にいろんな人と話して様々な考え方や見方に触れる機会を作るようにしています。そうすることで様々な立場に立った体験が生み出せるようになるからです。
RegTechの専門集団 Bassetとは?
Bassetは私も含め、元bitFlyerのメンバーが中心となって設立されました。とてもインターナショナルなチームで、8人いるメンバーのうち日本人は4人のみ。バックグラウンドも経験も全く違う人たちで構成されています。オフィスにあるバーカウンターで仕事終わりにみんなで飲んだりと、和気あいあいとした雰囲気です。
Bassetではスーパーフレックス制を導入しています。コアタイムはなく、平日最低1時間は仕事をするということだけ決まっていて、どの時間帯にどこでやるのかは自由です。金曜にチームミーティングをしているので、その日はみんなオフィスに集まります。社員が全員揃うのは結構珍しいですね。
遊びが仕事に、競合がいてもやりたかったビジネス
弊社では、仮想通貨取引のデータ分析を行っています。クライアントは仮想通貨取引所がメインになりますが、仮想通貨関連の事件捜査を行う警察や探偵、VASP(Virtual Asset Service Provider)と協業したい金融機関様にもお役立ていただいています。例えば、金融機関がとあるVASPとの協業を検討しているとします。その企業が扱っている仮想通貨はクリーンなものなのか?付き合ってOKな企業か否かの判断材料を提供することができるのです。
実はビットコインアドレスの分析は、随分前からやっていたのですが、あくまで趣味でしたね。マウントゴックスの事件が発生した時、盗まれてしまったコインの流れをどうやってトラッキングするか?という研究を遊びでやっていたんです。当時はビジネスでやることになるとは思わなかったですね。
他社が網羅しない領域に強み、差別化図る
Bassetを立ち上げたのは、2019年の7月です。同様のビジネスで、大手の競合他社がすでにいることはわかっていました。それでもどうしてもやりたかったんです。我々の持っているデータはアジアにフォーカスしています。出来るだけ、競合がまだみていないエリアからデータを集め、他社がカバーできない領域での優位性を確立しています。
Basset、そして仮想通貨のこれから
設立したばかりのBassetですが、メンバーが増え、やっとプロダクトが形になってきてとてもワクワクしています。昨年は、「TechCrunch Tokyo 2019」でデモを行う機会もいただきました。まだ実装できていない機能、データの見せ方や分析のやり方など、作りたいものがたくさんあるので、今年はそれに集中していきたいです。
これからは個人が通貨を選ぶ時代
今の世の中では日本にいたら日本円を使う、アメリカにいたらアメリカドルを使う、といった具合に、そういうルールになっているから特定の通貨を使っていますよね。しかし、仮想通貨の誕生によって、通貨の体験を選べる時代になりました。これは革命的です。
世の中全体としては、将来的にユースケースやニーズを基に、個人が通貨を自由に選んで使えるようになっていったらいいなと思います。
常に学び続ける姿勢を大切に
仮想通貨関連の方ではありませんが、アメリカの作家・編集者である、スチュアート・ブランドには影響を受けました。表に出てくるタイプではないので、彼を知る人は多くはないかもしれません。しかし、彼の手掛けたプロジェクトは、スティーブ・ジョブズをはじめとする多くの著名人にインスピレーションを与えてきました。
自分は表に出ずに、手掛けたプロジェクトによって世の中に様々なインパクトを与える。そんな彼のスタイルを尊敬しています。
仕事をする上で大事にしているのは、これは絶対に正しいといったように一つの考え方に固執しないこと。『そういう考え方もあるね。』とか『自分が間違っていたのかも?』という気持ちを忘れずに、永遠に学び続けるマインドセットでいたいですね。
機会あふれる仮想通貨・ブロックチェーン業界
仮想通貨・ブロックチェーンはまだまだ新しい業界なので、誰も思いついていないことややれていないことがたくさんあり、機会に溢れています。様々な知識や経験を持ち寄って、もっと業界を良くしていきたいので、興味のある方はぜひ飛び込んできてください!
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