NFTが実現するメタバース

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2022年7月11日に開催された「Non Fungible Tokyo 2022」のセッション “NFTが実現するメタバース”をレポートします。

Sebastien Borget (セバスチャン・ボルジェ) 氏
COO and Co-Founder of The Sandbox

分散型メタバースThe Sandboxの共同創設者兼COO。2020年に業界の主要メンバー300人で構成される非営利団体「Blockchain Game Alliance」の代表理事に就任。CointelegraphのTop #100 2022 most influential people in cryptoで4位に選ばれている。

Travis Wu (トラヴィス・ウー) 氏
Highstreet, CEO

没入型オープンワールドMMORPGに実在するブランドの商品を統合したeコマース中心のメタバースであるHighstreetのCEOを務める。

Benjamin Rameau(ベンジャミン・ラモー) 氏
Jenny DAO / Chief Intern Officer

Benjamin氏:私は、Benjamin Rameauと申します。Jenny DAOの創業者を務めております。Jenny DAOはアートを収蔵するNFTを扱っている団体で、さまざまな作品をこの中で取り扱っています。

本日はThe SandboxからSebastienにもお越しいただいております。今回、パネルディスカッションでご一緒することができて、非常に嬉しいです。HighstreetからTravisにもお越しいただいていて、久しぶりにお話しすることができるのでとても楽しみです。

それでは自己紹介から始めたいと思います。Sebastienから順番にお願いします。

Sebastien氏:皆さん、こんにちは。Sebastienと申します。The SandboxのCOOとBlockchain Game Allianceの代表も務めています。The Sandboxは分散型のバーチャルな世界を創ることができるサービスです。ブロックチェーン技術を駆使して、ゲームのアイテムをNFTとして取り扱うことができます。

Travis氏:こんにちは。HighstreetのTravisと申します。我々は、メタバースの世界の中で、実際の現実世界に存在するブランドの商品を取り扱うことができるサービスを提供しています。現在、さまざまなブランドの商品を売り買いすることができますが、それをオンライン上で、ブロックチェーンの世界の中でできるサービスです。実際にブロックチェーン上の不動産といいますか、3D空間を取り扱っています。今こんな形で家の中を動いているのですが、その中でさらにNFTの売買ができるようになっています。私は、VR機器を通してこの空間の中にいるのですが、普通のインターネットブラウザを通して見ることも可能です。我々はこういったバーチャル空間でサービスを展開しています。

Benjamin氏:Sebastien、Travis、自己紹介ありがとうございます。

Travisがこのメタバースにおけるマーケットプレイスに関して概念を大きく打ち出していたと思います。また、The Sandboxもこうしてブランドを宣伝するプラットフォームとして成長していますが、Highstreetも同じように自分の身の回りにいろいろなツールを組み立てていって、3D空間の中で売っていくというアプローチがあると思います。まずは、それぞれのサービスの立ち位置について話をお伺いしたいです。Travisからお願いします。

Travis氏:The Sandboxのサービスを非常に尊敬しています。こういったものをジェネレーテッド・プラットフォームと呼んでいますが、基本的にMinecraftや、Robloxというサービスでも見られていたものが、Web3の時代に突入してさらに変化をしてきたのではないかと思っています。

我々はそれとは少し違うアプローチを取っています。こうした世界についてプロフェッショナルなスタジオと一緒に組んでいたり、自社でスタジオを持って、各種ブランドのいろいろな商品をキュレーションして集めて、さまざまな人に提供するというサービスを行っています。

現実世界の買い物に非常に近い体験で、新しい時代のデパートをイメージしていただくと分かりやすいと思います。インターネットの空間上で見ている商品は、キュレーターが集めたもので、さまざまなブランドのものが取り扱われています。ゲームに関するものやユーザーが実際に生成したコンテンツが売買できる空間となっています。

Benjamin氏:ブランドに関していうと、有名人でもあるスヌープ・ドッグのブランドも取り扱っていると聞きましたが、こういったスタジオとのコラボレーションについては、The Sandboxも同様にやっているという認識ですが合っていますか。

Sebastien氏写真

Sebastien氏:はい、仰る通りです。The Sandbox上のコンテンツの99%は、クリエイターやユーザーによって作られたものとなっています。ユーザーがコンテンツを作っていくことで、クリエイターと買い手のつながりなど人と人とのつながりを構築することができるところが良いと思っています。

加えて、ブランドでいうと、例えばGUCCIやadidasのような有名なものや、服、アパレルに限らず、音楽系の有名人やいろいろな業界のクリエイターを擁することができる点が特徴となっています。服や音楽以外のエンタメ系でも、例えばウォーキング・デッドのコンテンツともコラボを行っています。The Sandboxが、さまざまなクリエイターを集めることで生んでいるのは、ただ単に楽しいという感情だけではありません。ゲームを通して遊んだり、ユーザーが作ったコンテンツを楽しんだり、ブランドとして向き合ってきたものに対して、今まではできなかったデジタルのアセットを通してファンの方々が実現できる関わり方を提供できるようになると思っています。

これは、既存のブランドやWeb2の世界では実現することが難しかったために、新しくかつ特徴的なものだと思っています。さらに発展した領域として、HSBCやPwCといった金融系の世界、既成セクターに所属していた会社、さらには自動車産業の会社などの方々がThe Sandboxの世界の中で、土地やコンテンツを買っています。このように、今までになかったデータの所有形態や、インターネットを通してさまざまな人と関わるための新しい方法を生み出していると感じています。今後、エコシステムがさらに成長していき、今までの想像の限界を超えるような形で、新しい体験を生み出していくであろうところが特徴的だと思っています。

特に注目しているのは、The Sandboxだけにとどまらず楽しむことができるということです。単に何かを売買できるだけではなく、新しい形のエンターテイメントとして、クリエイターのコンテンツや創作物を実際に所有したり、インターオペラビリティ(相互運用性)が構築されている他のブロックチェーンの世界にコンテンツを持ち込んだり移すことができます。例えば、DecentralandやCryptovoxelsなど他の分散型の世界の中で、データのやり取りをすることができます。こうした世界の中でどんどんビジョンを追求し、エコシステムの中で大きなポジションを提供できたら良いと思っています。

Travis氏:まさに今インターオペラビリティについてお話がありましたが、我々のほうでも非常に重要なトピックだと考えています。さまざまなNFTプロジェクトが、インターオペラビリティを重要視していると思います。The Sandboxであれば、LEGOのようなポリゴン数の低いキャラクターが可愛いかったり、楽しいものとして価値観が根付いてると思いますが、これが若い世代にとっては馴染み深いので非常に受け入れ易い価値観となっていると思っています。一方で、バーチャル上ではこのようなローポリゴンのものというよりは、より解像度が高くてより現実世界に近いリアルなものを好む人々もいると思っています。このように価値観が全然違う世界観がある中で、ERCのトークンが一つの世界からまた新しい世界に移転していくというタイミングで、アセットの形態が形を変えて別の世界に行くことができるインターオペラビリティがあると世界間の移動がとても楽しいものになると思っています。

Benjamin氏写真

Benjamin氏:個人的にはHighstreetはAmazonがWeb3化されたものに近いと考えています。ここについてはいかがでしょうか?

Travis氏:そうですね。Amazonは、さまざまなものを売っている市場というイメージがあると思いますが、私たちはどんなブランドにも来ていただけるように、プラットフォームを活用して、既存のeコマースのエンドポイントを拡張できる機能を構築できるように、Shopifyに近い体験を作ろうとしています。例えば現実に存在するものをAmazon上では買うことができますが、我々は存在するデジタルアイテムについて、購買体験をよりスムーズに簡単にできるようにするといったインタフェースやエンドポイントを作っていくという形で事業を行っています。

こうした考え方については、今までのWeb2の世界観で存在していたビジネスを発展・拡張させてWeb3の世界に適用するという見方もできると思います。Web2のShopifyに近いものをWeb3にしたときにどうなるかというのが、我々の事業になると思っています。まさに今、いくつか開発を進めていまして、これからの数週間でお見せできるものも出てくると思っています。

Sebastien氏:Amazonと競争するのは難しいと思っています。毎日の膨大な販売量と、どのような商品でも2秒以内に購入することができることを望んでいませんし、今の技術やUXのレベルでは、Amazonとコアサービスで競争することはできないと思っています。

我々はAmazonとは異なる形でメタバースを位置付けていきたいと考えています。即座に購入できるようなものにはしたくないのですが、ユーザーが感じたい、試したい、人々とつながりたいと思う体験に近いものにしたいと思っています。自由にカスタマイズができて、今まで扱われている商品よりもさらに柔軟性・拡張性の高いものを扱うことができるようになっていて、かつインタラクション性がある商品を、そういった体験を我々は提供していると思っています。

The Sandboxはコマースというよりも、どちらかというと商品やデジタルデータとより深い関わりを築くことができる領域に手を広げていこうと思っています。個人的に、ユーザートラフィックを集めて大きなネットワークを作り広告的なビジネスを行うモデルはあまり面白くないと感じていて、そういったビジネスモデルよりもさらに発展して新しいものを作っていくことがずっと面白いと思います。例えば、デジタルコンテンツ、NFTもそうですし、3Dキャラクターだったりデジタルスニーカーだったりがウェアラブルで、他のデータ的なメカニズムを通して、いろいろなデジタル製品を作ることができると思います。こういったものをWeb3の世界に根付いた形で提供することが、新しい体験を作るという意味で大切だと思っています。

何か単純に画面上にデータが表示されていてそれを売り買いするというよりも、何かデータがあってそれがポータルを通って一つの世界からまた別の世界に移っていくといった体験ができると、より面白くなっていくと思っています。個人的にもいくつか考えているアイデアはあるのですが、こういったものをどんどん広げていけたら面白いと思っています。

The Sandbox事業説明資料

Travis氏:ありがとうございます。私も個人的に100%同意しています。Web3の世界でも一瞬で何かを売り買いしたりするという価値観があったりしたのですが、例えばこれまでショッピングモールというのは物理的な設備があって、中にお店があって、そこで商品を探して売り買いするという体験が主だったと思います。これだと情報の非対称性があるといいますか、実際に現地に行って商品を見て買うという一連の体験が冒険みたいになっていると思っています。

一方で、GoogleやAmazonといったインターネット上のショッピングサービスを利用し、検索窓にキーワードを入れると、自分の興味のある商品がすぐに見つかって、オンラインでも買うことができますよね。商品を買う際に、Web上での見た目で“本当にこれは自分が欲しい商品なんじゃないかな”というものを探して、心で感じて購買体験を進めていくという新しい体験が、Webの世界が始まってから広がっていると思っています。

これがWeb3の世界に突入することで、今までeコマースを使って物を買っていたのが、さらに新しい体験の世界に突入することができると思っています。これは、Web2の世界から、さらに一歩進んだ新しいブランドとの関わり方が実現できます。

最終的に、さまざまなブランドは、各ユーザーごとにアトラクションと呼ばれるようなイメージで、非常に楽しい体験を提供していくという世界観になると思っています。あるいは、一人一人にラグジュアリーな体験をしてもらうというよりは、人々が交流を通して何かを獲得していくという世界観も同時にあり得ると思っています。Highstreetは、実はMMORPGを参考に作っていまして、いかに人との交流を楽しく、そして物を購入できるかを意識して開発してるサービスになっています。

Benjamin氏:ありがとうございます。今Jenny DAOで非常に力を入れている取り組みとして、いかに深くこのファッション領域に潜り込んでいって、購買体験を作っていけるかについてを考えています。Web3の世界が進んでいくと、物理的な空間について考えながら何かを購入するということが珍しくなっていくと考えています。個人的に、Web3の世界が進んでいくと、購買体験やいわゆる会社のイメージやブランディングもWeb3を起点にして考えるようになっていくと思っています。

個人的にHighstreetの場合は、よりカルチャー的なものやサービス、イベント、そういったところにも注力していくサービスになっていくのではないかと思っています。サービスごとに違うアプローチでブランディングするという考え方があると思いますが、どのようにお考えでしょうか?

Travis氏:ブランディングは非常に面白い考えの出発点になると思っています。今であればZ世代の若い人々が、NFTやデジタルコンテンツを買う体験をたくさんしていると思います。通常、ほとんどのブランドで共通した行動をとっていると思いますが、最近のブランドは、特にこのZ世代をいかに取り込むかということに非常に力を入れていると思っています。

そう考えると、いかに物理的に拠点を設けて、ブランドの認知度を高めるかというよりも、インターネットの世界を通していかにそのブランドが自分にとって大切なものであるか、文化的に近い距離のものであるかというような理解をZ世代から得ることが、競争する上で非常に重要なポイントになっていると思っています。

一方で、Z世代の人たちが年を取って経験を積んでいくと、大人になるにつれて価値観が変わっていきますよね。例えば20歳以上向けのデパートで物理世界とWeb3の世界における購買体験みたいなものが始まるとすると、物理世界のデパートでセキュリティコードが付いたタグを購入したら、それを使ってWeb3の商品を買うことができるようになります。つまり、現実世界でものを買うという行動で、Web3上の商品が使えるようになるのです。そういった体験を作ることもできると思っています。

我々よりもさらに上の世代だと、なかなかこういった行動は受け入れ難いものだと思います。ですが、若い人は新しいデジタルベースな体験にとても熱量を注いでいると思っています。こういった大きなトレンドは、Z世代が大きくなっていくにつれて、どんどん変移していくと思います。この点に関してThe Sandboxは、スヌープ・ドッグなどの有名なブランドとコラボしたり、ストリートウェアのブランドとコラボしたりして、若い人の心をつかんで、ビジネスを展開しているので非常に良い成功例だと思います。今のZ世代の方々は多様な価値観を持っているので、これまで単純に“これがあればメインストリームもつかめたよね”というものがどんどん分散化していって、なかなかつかむのが難しくなっていると思っています。

Benjamin氏:ありがとうございます。Sebastienはいかがでしょうか?

Sebastien氏写真2

Sebastien氏:今までのお話の中に大きく2つのポイントがあると思っており、1つ目は、これからWeb3にネイティブな形で登場する新しい価値観を持ったブランドがどんどん登場するだろうという点です。既存の物理的な拠点を使ってブランドを大きくしたり、注目を集めたり、既存のものとは違う世界観が今まさに大きくなってきていると思っています。先程、ファッションの話をしていたと思うのですが、既存のデザイナーがどんどん有名になっていくより、こういったWeb3の世界であったりThe Sandboxなどの世界から登場する新しいクリエイターがこれからどんどん有名になっていくと考えています。

声を聞く限りではTravisの年齢は分からないのですが、我々は完全にメタバースネイティブな若い世代よりも少し上の世代にいると思っています。既存の物理的な世界における有名なブランドについて今までであれば、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)という肩書でマーケターをするという価値観が多かったと思います。ですが、これからの世界でCMOといえば、チーフ・メタバース・オフィサーという形で、メタバースの世界と若い人の心をいかに理解して、コミュニティのダイナミクスや、子どもたちが好む新しいデジタルデータの形態を考えるかが必要になってくると思います。ですので、この点を2つ目に挙げたいと思います。今LVMHで提供しているNFTは子どもが買っていたりしていますし、このように新しい潮流が動いていく中で、既存のマーケティング的な価値観が通用しない世界が新しく出てきていると思います。

この激しい変化についてはとても美しいと思う一方で、とてつもないリスクを抱えながら破壊的なイノベーションを引き起こしている側面があると思います。テクノロジーの引き起こす新しい大波と、まだ実験的な側面が大部分だと思っていますが、本当に10年に1回あるかないかの大きなトレンドの転換期に来ていると思います。

こうした実験について、個人的にはどんどん進めていくべきだと思っています。これが果たしてどれほど成功的に終わって、どれほど長い間トレンドが続くのかは、正直まだ分かりません。我々の提供しているThe Sandboxからも、さらに新しいブランドが生まれていって、GUCCIなどの有名なファッションブランドを超えていくようなものが生まれてくる世界になると、非常に面白いと思っています。

The Sandbox事業説明資料2

Travis氏:私も同感です。今のこの世界でいうと、どのプレイヤーもまだまだ実験フェーズにいるというか、いろいろ試している段階です。今Web2の既存の世界観の下に基づいてるブランドは、かなり試行錯誤していてまだまだ苦戦してる最中だと思います。一方で、このWeb3の世界のビジネスモデルも、正直なところ、うまくいくかどうかは分からないと思います。こうした領域についてかなり早い段階からリスクを抱えながらも前面に立って頑張っている人たちがたくさんいると思います。Web2の延長線上にならないように、ただの広告空間にならないように、これまでに本当になかったようなモデルを実現できるととても良いと思います。

ブランドの価値観、例えばGUCCIであれば非常にカラフルな作品が多いと思うのですが、ブランドそれぞれの固有の美しさみたいなものをメタバースの世界観に持ち込んでいって、お客様やクリエイターの方、もしくはそういったものを求める方にどのように届けていけるのかについて非常に気になっています。

例えばNIKEのスニーカーが、既存のWeb2の物理的な世界でスニーカーを買うという体験とは違って、Web3の世界ではデジタルなスニーカーを売買するようになっていったり、Facebookも商業的なところに非常に力を注いで事業を大きくしていると思っています。また、他にも、例えば自身のアバターを作ってそのネットワークにより長くいるように新しい価値観を作っていくところに心血を注いでいるタイミングになっていると思っています。既存の大きなプレイヤーも、このWeb3の世界にどんどん突入していっているタイミングになったと思いますが、このようなVR空間の世界において成功を生むためには、どのような工夫をするとうまく行くのか気になっています。

新しいプレイヤーの人たちも、まだまだ自分自身で正解がどういったものかというところが分かっていない段階だとは思います。ですが、続けていく中で成功事例が生まれていって、実際にメタバースの世界に住む住人みたいなものが次の世代に生まれてくるかもしれないですし、これからどうなっていくのか非常に関心があります。

Benjamin氏写真2

Benjamin氏:そうですね。先ほど話したポイントに少し戻るのですが、The Sandboxが広告板みたいな形で注目を集めて広告モデルで大きくなるというイメージはあまりしていません。GoogleやFacebookは広告モデルで大きくなったと思うのですが、Web3の世界はそうはならないとは思っていて、Web3はこのような商業的な世界と、マーケティングの世界の間に絶妙な立ち位置として振る舞うことができる特性を持っていると思います。GUCCIやNIKEなどが、NFTを立ち上げる、そしてお客さんに届けて行くというこの一連の活動自体が、非常に大きなマーケティング活動として使えるというところが新しいと思います。

Travis氏:私自身、広告を悪く考えているかというとそうではなくて、純粋に大きな注目を集めること、例えば若いクリエイターの方の注目を集めることで大きくなったりするほうがより良いと思っています。

Sebastien氏:そうですね。新しいやり方があると思っていて、NFTを新しく立ち上げるという活動自体もプロモーションの新しい形態になっていると思います。単純に広告を出すだけじゃなくて、こういったデジタル作品と触れ合うというのも広告であったり、大きなプロモーションになる世界が来るのではないかと思います。

Benjamin氏:ありがとうございます。メタバースの作り方について、TravisはHighstreetで、どちらかというとハードウェアに寄り添ってバーチャルな世界を作り込んでいくというアプローチを取っていますよね。一方で、The Sandboxはハードウェアにはあまり依存しないで、よりシンプルに、かつアクセシビリティ高い形で、お客さんに価値を提供するやり方に重きを置いてると思っています。今後の世界がどうなっていくのかについて、それぞれ違うアプローチを取っていると思っているのですが、お二方はどのように考えられていますか?

The Sandbox事業説明資料3

Travis氏:メタバースの世界ではアクセシビリティが大事だと思っています。メタバースの世界でもさまざまな美しさに関する尺度や概念があると思います。例えばローポリゴンの解像度の低いキャラクター、ドット絵みたいなものが可愛いという捉え方をすることもできると思います。ユーザーが1980年代の可愛いキャラクターをどんどん作成していって、コードなどの知識を必要とせずに、本当に好きなものを組み合わせて作っていく。こういった体験ができると楽しくて良いと思っています。

純粋な楽しさという部分が、いろいろな人にリーチするために必要な要素になっていると思っています。また、そういった楽しさがメタバースの世界に関わるきっかけになるのではないかと思います。

一方で、我々も大きなスタジオを持っていますが、有名なスタジオではより高いクオリティの作品を作る活動も増えてきています。ただ、この部分だけが重視されてしまうと、ユーザーがなかなか一歩踏み出して新しいコンテンツを作ることが難しくなります。そうなってしまうとこの世界がスケールしなくなってしまい、あまり面白くなくなってしまうと思います。

ここに関しては、スケールするかどうかが非常に重要だと思っています。長い目で見たときに、この世界がいかに大きくなるかというところで、いろいろな関わり方ができるプロセスがたくさんあっていいと思っていますが、インターオペラビリティさえあればこういったものが全てクリアできるかというと、それはまた違うとも思います。

今このようなメタバースの世界に関わる方法論として、VR機器を使ったり、コンピュータのブラウザを使ったりという方法があると思います。ですが、VR機器とコンピュータのブラウザ、それぞれの端末でできることの制約や限界には違いがあって、そのギャップを越えるには、やはりまだ足りないものがあると思います。

こうした前提の中で、データのやり取りをよりスムーズにできるように、とあるNFTを一個の分散型の世界からまた新しいブロックチェーンの世界に移していったときに、前の世界ではローポリゴンの可愛いデータだったのが、同じデータではありながらも別の世界に移していったときには、解像度がすごく上がってリアルなものに変わったりして、ゲームのポータルを越えていくような、世界観をまたいでいく中で形態を変えて新しい関わりをすることができるような体験があると、一つのデータでいろいろな世界を移動しながら、いろんな楽しみ方ができるようになると、楽しい世界になるんじゃないかと思います。

ユーザーの持っているさまざまな美的感覚や好みに合わせて、かわいいものが好きだったらこっちの世界に行って、美しいものが好きだったらあっちの世界に行ってというような形で、ユーザーの好みに合わせて世界を移動できるようになるということが、この2~3年でどんどん起きていくと思います。

Sebastien氏:そうですね。ここは個人的にも同感しております。例えば、2次元の画像を3次元の立体のパーツを組み合わせて作ったキャラクターに移し替えたりだとか、そういったことも起きるのではないでしょうか。先ほど仰っていたように、インターオペラビリティは、完全に前の世界で表現されているデータの形態をそっくりそのまま別のところに移すのではなくて、世界ごとに形を変えてデータが移動することがあってもいいと思います。

Travis氏:ありがとうございます。The Sandboxもこういった形でどんどん大きく成長していて面白いなと思います。今メタバースネイティブな若い世代がどんどん育っていると思うのですが、新しい価値観を捉えることの難しさは依然としてあると思います。今の若い世代がどんどん年を取って大人になった際に、今度はどういった体験を求めるようになるのかについては、先程のお話にあった、一つのデータが一個の価値観のある世界からまた別の価値観の世界にデータが転移していくという世界には共感しています。
とあるデータをまた新しいところを持っていく際に、若い世代が好む感覚から成熟した美的感覚に基づいて、よりかっこよく美しいところにデータを持っていったり、そういった体験ができると、大人になってからもこういったデジタルの世界を楽しめるのではないかと思います。今の物理世界はやはりどうしても限界があって、退屈だと感じるところもあると思うのですが、デジタルはこういった制約がなくて非常に楽しいと思います。

Benjamin氏写真3

Benjamin氏:Call of Dutyというゲームでは、VR世界と現実が連動するスーツみたいなものがあります。例えば、ゲーム内で自分が銃弾を食らうと、触覚センサーにフィードバックがあって実際に撃たれた場所に刺激を感じたり、新しい体験ができるのが非常に面白いです。

Travis氏:まさに私は今回のこのパネルディスカッションのストリームのところで、この3Dのバーチャル世界に入るための特殊な衣装を着ています。今、Highstreetの中で作っているVR世界の中で、ストリーミングできる機能を使って配信しているのですが、全身に触覚センサーが付いているスーツを着て、ゲーム中に受けたフィードバックがこのスーツ越しに伝わって来るという環境に身を置いています。

今ハプティクスX40というスーツを着ていて、初めて着た時はとても大変でしたが、着ているうちに臨場感が増して、ゲーム内のインタラクションが癖になります。試していく中でどんどん快感につながっていって、今ではVRの世界の中で起きている出来事を全て体験することができるのでとても楽しいです。

Benjamin氏:私が子供のころは、小さなゲームボーイを使っていて、画面はモノクロでシンプルなものでした。ですが、年を取るにつれてどんどん画面が大きくなったりカラフルになったり、複雑なことができるようになっていったり、気づけば今はWeb3の世界が始まっています。分散化が進んでいき、大人になるにつれてさまざまな世界が広がって来ていることを実感しています。今回お話を聞いていて、Highstreetはこういった物理的な現実の世界と新しいバーチャルの世界や、eコマースという体験を通して、それらを一つに融合させて非常に高い次元で体験を生んでいるということと、かつユーザー体験も非常にシンプルで使い勝手も良くて、素敵なものを作ってるということが分かりました。

本日最後の質問として、なぜ今こういった未来に進化していくことを信じているのかについてお聞きしたいと思います。

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Sebastien氏:過去について深く反省したり振り返ったりするということが、これからの未来を考えていく中で重要になると思います。個人的にはThe Sandboxが今後2年でどうなっていくかというのは、全く想像がつかないというのが正直なところです。とても素晴らしいクリーチャーをこのThe Sandboxの中で作ることができるようになっています。もともと2018年にどういうものを作るかということを考えたときに、最初は本当に簡単なマップがあって、シンプルにアバターが作れるところから始まっていたのですが、気づけばここまで来ていました。そう考えると、どんどん勢いが加速していると思います。

今後の方向性としては、引き続きThe Sandboxはクリエイティブなツールとして残り続けると思っています。先ほどのお話でVRの世界にベストなどを着込んで入り込んでいったりするというお話がありましたが、そこまで行かずともより簡単にメタバースの世界に関わることができるようなやり方や体験を提供できたらいいなと思っています。仕事や勉強をしたり、遊んだり、何か社会的な交流ができる場としてThe Sandboxを提供できればいいなと思ってます。よりスムーズなユーザー体験を伴うユーザーコンテンツの作り易さの部分にもっと磨きをかけたいと思います。

Travis氏:私自身は、体験のクオリティを損ねることは絶対にしたくないと思っています。とはいえ、VR純粋主義者というわけではないので、VRの世界も2015〜16年ごろの初期では、まだ荒々しい体験が主だったと思っています。

当時のVRは今あるような触覚ベストみたいなものは全くなくて、グローブしかないみたいな、そういった世界から始まりました。Highstreetは何かゲームしたり、戦ったりといった場所ではないのですが、NFTなどが売買できたりシンプルに買い物ができるようなプラットフォームではあります。

とはいえVRの熱狂的なファンといいますか、純粋主義者のような方々をないがしろにはしたくはないと思っています。VRの世界でしか得ることができない体験であったり、没入して得られる体験の大きさや貴重性みたいなところも感じています。例えば、初期のVRゲームを試したときに、シンプルすぎるゲームだったり、あまりに世界観の作り込みが荒くてがっかりしたということがありました。こういったがっかりするような体験を生み出すということは絶対にしたくないと思います。VRデバイスに固執するわけではないのですが、ブラウザを通してでも、より磨き込まれていて、さらに洗練された美しいものを作れるといいなと思います。VR機器とパソコンのブラウザを比べた時に、端末のスペックでグラフィックボードの性能が違っていたりするので、どうしてもその端末の性能に依存してしまい、レンダリングの処理能力などが限られてしまいます。このような体験の差が生まれてしまうというところは、今の段階では仕方がないことだと思います。

一方で、それがあるからといって諦めるわけではなくて、VRの世界であってもブラウザ越しであったとしても、誰もが快適に過ごせるような空間を作っていけるといいなと思っています。今、我々は住宅空間のようないろいろな3D空間を作っていますが、例えばイグルーという氷でできた家みたいなものも作っています。この世界を作っていく中で、VRセットを付けて私自身がこうして座っていると、VR世界でも座って話をしている状況になっています。こういったVRの世界が登場する前は、電子空間の中に実際の感覚、五感を通して存在するということはできなかったと思っていて、単純な2Dの空間では絶対にありえなかった新しい体験ができるようになったと思います。

今までとは全く異なる新しい世界にいる感覚が得られるゲームを通して、ワクワクするような経験があると思うのですが、それをさらに強化してよりリアルなものとして伝わってきている感覚があります。これに関しては、お金の価値で測れるようなものじゃないと思っています。本当にプライスレスな体験で、そんな感覚をエンジニアの目線としても、こういった体験へのこだわりというものを大切にしたいと思います。

Benjamin氏:これまでの限界を超えていくような、クリプトの世界の限界をどんどん広げていくような素晴らしい活動をされているHighstreetのTravisとThe SandboxのSebastienのお二方とお話ができてよかったです。本日はありがとうございました。

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