ブロックチェーンカンファレンスでの登壇やTwitterでの情報発信など、ブロックチェーン・暗号資産業界で活躍中のTamara Soykina氏にインタビュー!業界の魅力から話題のNFT、ブロックチェーン関連の情報収集のコツまで幅広く語っていただきました。
Tamara Soykina(タマラ ソイキナ)氏
商社、日系投資会社を経て、FEB株式会社に参画。ブロックチェーン関連メディアへの寄稿やカンファレンスでのモデレーター/登壇、Twitterで「ロシアンOLちゃん」として情報発信を行うなど、日本のブロックチェーンコミュニティで精力的に活動している。
目次
人生の転機となったブロックチェーン
私がブロックチェーンや暗号資産について知ったのは2016年ごろです。エンジニアの友人がこんな面白いものがあるんだと興奮気味に教えてくれました。将来的に皆が使うようになる技術で、徐々に勢いを失いつつある今の経済がこの新しい技術によって生まれ変わっていくというのです。
初めは、自分とは全く縁のない技術だし理解できるわけがないと思いましたが、あまりにその友人が熱心に話すので、その勢いに半ば巻き込まれるような形でブロックチェーン・暗号資産コミュニティに足を踏み入れました。
刺激的なブロックチェーン・暗号資産コミュニティ
そこで、withBの顧問も務める藤本真衣氏をはじめ、素晴らしい仲間たちと出会いました。優秀な方、面白い方が多く、たくさんの刺激をもらいましたね。
日本で海外の情報発信をしていく中で、まだ日本には伝わっていないものも多くあることに気がつきました。そういった情報をいち早く届けることで皆さんに喜んでもらえて、私自身もすごく嬉しかったんです。そして、仕事としてこの業界に関わっていくことを決意しました。ブロックチェーンとの出会いは私の人生の中で非常に大きなインパクトとなりましたね。
私がフルタイムでブロックチェーン・暗号資産業界に関わり始めたのは、2018年のICOブームの真っ最中でした。混乱の時期ではありましたが、勢いのある業界なので、当時の職場をやめてもこれからいい機会に巡り合うことができるだろうと考え、思い切って離職しました。
ブロックチェーン・暗号資産は楽しさにあふれている
以前の職場で新規事業の開発に関わっていたことがあります。事業開発の視点でブロックチェーン・暗号資産業界を見ると、こんな新しいビジネスモデルがあるんだという発見があって楽しいんです。
例えば、暗号資産が生まれる前には、USB型のハードウェアウォレットなどというものは存在していませんでした。自宅にいながら遠く離れた海外へ手軽に送金したり、ゲームをプレイしたりすることで得た暗号資産が一瞬で自分の口座に着金している状況も考えられなかったことです。ブロックチェーン技術の誕生によって出現した全く新しいビジネスモデル達、そして今後もまた新たなものが生み出され続けると思うと本当に面白いですね。
凄まじい勢いで広がるブロックチェーン技術
業界の情報をキャッチアップしていくのも楽しいです。私自身も5年前からTwitterで情報発信をしていますが、最初は暗号資産の規制情報がメインでした。その後、次々とトレンドが移り変わっていき、2021年はDeFi・NFT・Layer1・Layer2、直近ではメタバース・Web3と、ブロックチェーン関連の話題はどんどん広がっています。
実際に使えるアプリケーションやサービスもかなり増えましたよね。実際に触ってみることが1番だとは思っていますが、数が多すぎて全て使ってみるには時間が足りません。DeFi系のサービスもまだ一部しか試したことがないので、まだまだ未知な世界が広がっていると思うとワクワクします。
ブロックチェーンと未来の働き方
ブロックチェーンは、働き方にも大きな影響を及ぼすと考えています。新型コロナウイルスによってリモートワークが一般的になるなど様々な変化がありましたが、DAO※1やメタバースを通じてもっと面白い働き方が出てきそうですよね。
DAOに関していうと、会社に勤めているのともフリーランスとも違った新しい仕事スタイルが広がっていきそうです。自分のプロジェクトへの貢献度に併せて報酬をもらうコンセプトは考えるだけでワクワクしますね。
メタバースの中で仕事するのも面白そうです。その時NIKEのスニーカーを履いているかもなどと想像したりします。
LinkedInの分析では、2021年のブロックチェーン・暗号資産関連の求人が前年比で400倍に増えたそうです。どんどんブロックチェーンや暗号資産に優秀な人材が入ってきてくれることを期待しています。
※1DAO(Decentralized Autonomous Organization)
自律分散型組織。中央集権的な管理主体を持たずに、構成員一人一人によって自律的に運営されている組織。
効率的なブロックチェーン・暗号資産の情報収集方法とは?
ブロックチェーン・暗号資産業界の発展は喜ばしい事ですが、一方で情報収集がより大変になったとも思います。以前はニュースベースで関連情報を調べていましたが、今ではそれでは足りないと感じます。
記事を一つ一つ読んでいると間に合わないので、最近はダイジェストで見るようにしていますね。日本でブロックチェーン・暗号資産関連の情報だとTwitterが強い印象ですが、海外ではTelegramが強いです。コミュニティやブロックチェーン・暗号資産関連メディアが運営する様々なTelegramのチャンネルがあるので、そこでダイジェストに流れてくる情報をチェックしています。
また、できるだけ一次情報を読むことも心がけていますね。一次情報は基本的に英語で書かれていますが、ブロックチェーンだけではなく英語の勉強にもなって一石二鳥なのでおすすめです。
LinkedInも最近ブロックチェーン・暗号資産関連の情報が充実してきています。求人情報のイメージが強いLinkedInですが、インフォグラフィック形式で面白くまとまっているものも多いです。業界のKOL(キーオピニオンリーダー)達をフォローして、幅広く情報を仕入れるなど上手く活用したいですね。そして、1つのテーマについてより詳しく知りたい時は、MessariやThe Blockで関連のレポートを読んでみるのがいいかと思います。
ブロックチェーンのマスアダプションは着実に進んでいる
海外ではブロックチェーン・暗号資産に熱心に取り組む姿勢を見せる大企業も出てきています。NikeやDisneyがメタバース関係に興味を示していますし、ウォルマートはビットコインATMの設置やブロックチェーン関連での特許登録のニュースもありました。
クレジットカードの国際ブランドであるVISAもその代表格ですね。2021年にCryptoPunks※2を15万ドルで取得したことは大きな話題になりました。また、同年1年間でVISAが発行する暗号資産連動型のクレジットカードにおいて、35億ドル分の取引があったというのは驚きです。VISAのような大企業が興味を示してくれていることはマスアダプションの第一歩ですね。
セレブ達のニュースでもブロックチェーンが話題に
ブロックチェーンや暗号資産について知らない人にもっと興味を持ってほしいという思いがあるので、最近セレブや有名人関連の話題でブロックチェーンが取り上げられることが増えて嬉しいです。
日本にゆかりのある方ですと、大谷翔平選手がFTX※3のアンバサダーに就任したり、BIGBOSSこと新庄剛志監督がビットポイントのブランドアンバサダーになったりしましたね。海外では米ヒップホップMC兼俳優のSnoop Dogg氏がメジャーなTwitterのNFTアカウントを運営していることがニュースになりました。合計1.7億ドル相当のNFTを所有しており、CryptoPunksも9つ持ってるそうですよ。
※2CryptoPunks(クリプトパンク)
Larva Labが2017年にリリースした、デジタルキャラクター画像から構成されるNFTアートシリーズで、異なるデザインが10,000個存在する。使用ブロックチェーンはイーサリアム。
※3FTX(エフティーエックス)
2019年創業、Sam Bankman-Fried(サム・バンクマン・フリード)氏がCEOを務めるバハマに本社を置く暗号資産取引所。
NFTは単なるバブルなのか?
NFTの価値については様々な議論がありますね。率直に言うと、一部のNFTには異常な値上がりをしているものもありバブル要素を感じますが、長期的な目でNFTという分野を見ると単なるバブルではないと思います。
私は、NFTは作品をデジタル化して正確に分かりやすくディストリビューションするためのツールだと考えています。アーティストを支援する方法の一つとなるなど実用的なケースもあるので、短期で消え去ってしまうようなものではないでしょう。
魅力あふれるNFTプロダクトをまずは触ってみる
NFT関連のプロジェクトや作品は魅力的なものがたくさんありますね。CryptoPunksも素敵なコンセプトだと思いますし、VRアーティストであるせきぐちあいみ氏の「Ever Changing Phoenix(変わり続ける鳳凰)」も美しい作品です。
高額なNFTが話題になりがちですが、OpenSea※4で実際に見てみると気軽に買えそうな価格帯のものも多くあります。興味があるならまずは手頃で自分のセンスに合うものを持ってみて、直接にNFTに触れてみてはいかがでしょうか。
※4OpenSea(オープンシー)
2017年創業、世界最大規模のNFTマーケットプレイス。NFTの生成・管理・購入・オークション出品を行うことができる。
ロシアのNFT・暗号資産事情
ロシアでもNFTは人気です。2021年には、ロシアのパンクバンドPussy Riotがミュージックビデオを4分割してNFT化しオークションに出品したところ、合計100ETHで売れたことが話題となりました。
暗号資産のトレーディングも盛んに行われていますが、規制についてはまだ整備の最中です。銀行が慎重な立場を示しており、法定通貨に変えようとするとなかなか口座に着金されないなどのトラブルも起こりがちですね。
暗号資産の定義については既に定められており、税金の支払い義務もあります。ただ、暗号資産での決済は法定通貨による決済とは異なり暗号資産のために定められた法律が適用されます。(取材時2022年1月20日現在)
これからの暗号資産・ブロックチェーン業界に期待したいこと
まずは、より幅広い層の方に、暗号資産やブロックチェーンのことをもっと理解して認めてほしいですね。ビットコインと言うと、まだ怪しいものだという印象を持つ人も少なくありません。
ブロックチェーン・暗号資産と他の業界がさらに結びついていくには、ポピュラライザーと言われる方々の活躍が欠かせないでしょう。影響力のある人物達が、既にブロックチェーン・暗号資産に慣れ親しんでいる層向けではなく、一般の人向けに分かりやすく説明するような機会がもっと増えればいいなと思います。
世界で愛されるプロジェクトを日本から
日本のプロダクトやサービスは魅力的なものがたくさんありますが、グローバルで活躍できているところが少ないような気がします。My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)や紫電ネットワーク(Shiden Network)は海外でも名の知れた日本発のプロジェクトですね。
しかし、前述のせきぐちあいみ氏は素晴らしいアーティストであるにもかかわらず、海外ではまだ知名度が低く勿体無いと感じます。2022年は実プロジェクトを作るタイミングにきていると思うので、この機会に日本の優れた企業やアーティストが海外で有名になってほしいです。
国内サービスにもスピードを
日本の暗号資産取引所では、DeFi銘柄の取り扱いがまだまだ少ないですね。bitbankでMaker(MKR)の上場が発表されましたが、それ以外はほとんどありません。
2021年で最も勢いがあった暗号資産取引所として世界的に注目されたFTXは、上場までの時間が早くDeFi銘柄も豊富なため日本でも人気を集めています。手続きや審査の質の問題もありますが、暗号資産の上場をもっと早くできる仕組みになればユーザーを喜ばせることができ、日本でもさらに人気が高まるのではないでしょうか。
また、日本で2021年に実施されたIEOは2件でした。1企業であるバイナンスはなんと、同年1年間で50件以上実施しています。否定するわけではありませんが、1カ国と1企業の差としてはかなり大きいですよね。日本でももっと勢いをつけてスピーディにやっていってほしいと期待しています。
まだ遅くない!ブロックチェーン・暗号資産に飛び込むなら今!
世の中を見ていると、ビットコインを買うにはもう遅いとか、ブロックチェーンの開発者にはなれないのでもう何もできないとか、NFTブームが去りつつあるので集める意味がないといった声も聞こえてきます。しかし、実際は大きな歴史のたった数年間の出来事に過ぎません。ブロックチェーン・暗号資産はまだまだこれからです。
少しでも興味があるのであれば、今のタイミングで業界に飛び込んでみることは、長期的に考えるといろんないいことがあると思います。
私自身、この業界に入って仕事も自分の周りにいる人々も大きく変化しました。そして、コロナ前の話にはなりますが、さまざまな国へ行って現地でイベントのMCをやったり登壇したりといった、ずっと憧れていたことができました。また、現地の大きなプロジェクトや国の組織にインタビューするという貴重な体験もできました。まさにライフスタイルが変わったのです。
ブロックチェーン・暗号資産業界はまだ新しい業界であり、自由度が高いため、自分のやりたいことを形にできる場所です。興味のある方はぜひチャレンジしてみてほしいと思います。
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