アート業界のプロが語るNFTアートの魅力と将来性

2021年6月10-11日に開催された「Non-Fungible Tokyo2021」DAY2のセッション“NFT’s, Fine Art & The Future”をレポートします。

Kenny Schachter(ケニー・シャクター)氏
Artist, Curator, Writer, Lecturer

30年以上に渡り、美術館や画廊で現代美術展覧会を企画するとともに美術史や経済を教える。現在はチューリッヒ大学の大学院(2021年1月に顧問委員会に任命)、スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(ニューヨーク)およびニューヨーク大学で教授職に就いている。国際的な講演活動のほか、メキシコでロックフェラーが支援する助成金を受け、ポール・テック、ザハ・ハディッド、ヴィトアコンチ、およびジグマー・ポルケ/ゲルハルト・リヒターに関する書籍に寄稿する。最近では、ニューヨーク・マガジンやタイムズ(英国)など様々な国際的出版物に執筆しているほか、Artnet.com にコラムを連載している。2018年の夏にはニューヨークのJoel Mesler’s Rental Galleryで自身の回顧展を行い、2018年の秋にはロンドンのSimon Lee Galleryで展覧会の企画をし、2019年の2月にはロサンゼルスのKantor Galleryで個展を企画した。次は、ケルンの Nagel-Draxler GalleryでNFTグループ展覧会とウィーンのGalerie CharimでEva Beresinとの二人展(共に2021年4月)、東京のBlum & Poeで個展(2021年11月)を予定している。現在、Chris Smithがプロデュースおよび監督するドキュメンタリーの題材になっており、ニューヨーク・タイムズ・マガジン(1996年9月のカバーストーリー)、ロンドンのオブザーバー、Independent、およびTelegraphで特集されたこともある。現在はニューヨークを拠点に活動している。

Kate Vass(ケイト・ヴァス)氏
Entrepreneur, Art collector

長年におよぶアート&ファイナンスにおける経験豊富な起業家であり美術品収集家。先駆的なアートギャラリーKate Vass Galerieの創業者でありクリエイティブディレクターでもある。

Kevin Abosch(ケビン・アボッシュ)氏
CryptoArt Pioneer

コンセプチュアルアーティストでありクリプトアートの先駆者でもある。彼の作品は存在論的疑問を提起し、社会学的なジレンマに答えることによりアイデンティティーと価値の本質に取り組んでいる。 Aboschの作品は世界中で展示され、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館、中国国家博物館、アイルランド国立美術館、ジュ・ド・ポーム(パリ)、アイルランド近代美術館、ヴォイヴォディナ現代美術館、ボゴタ現代美術館(MAMBO)、ZKM (カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター) 、およびダブリン空港等、世界各地の公共施設で展示されている。

ギャラリストが購入するNFTアートとは

ケビン氏:ケイトさんはギャラリストであり、Kate Vassギャラリーの創設者であり、起業家でもあります。ケニーさんはアーティスト、作家、キュレーターで、NFTの世界でも有名人です。私はアーティストです。2018年からブロックチェーン技術を使った仕事をしています。私は約30年間アートを作ってきました。いつも私が質問される側ですが、今日は少し話をひっくり返します。今回は熱心なアートコレクターでもあるケイトさんとケニーさんのお二人に質問を投げかけてみます。まずはケイトさんにお聞きしたいと思います。初めて購入したNFTを覚えていますか?

Kate氏写真
Kate Vass氏

ケイト氏:私が初めて買ったNFTは2018年のCryptoPunks(クリプトパンク)プラットフォーム上のものでした。デジタルファイルだったのですが、同僚と一緒に買ったんですが、高かったので文句を言っていたのを覚えています。当時はイーサリアムで0.3ETHくらいで、確か500ドルだったと思います。ケチって2つ以上買わない方が良いんじゃないかと思いました。それが初めて買ったNFTでした。

ケビン氏:無形の物を買う事への不安はありませんでしたか?過去にデジタルアートのような素材を買ったことはあったんでしょうか?

ケイト氏:ビデオテープに保存されていたビデオ作品などがありましたね。アーティストの中には、ビデオテープからデジタルファイルへと移行する方法を見つけられなかった人もいました。そのため、当時はいくつかビデオテープによる作品を購入しました。でも2018年からはデジタルアートを積極的に集め始めました。

ケニー氏:私もケビンさんと同じようにデジタルを作ってきました。30年以上、デジタル作品を作り続けてきました。私が初めて買ったNFTはケビンという若い優秀なアーティストの作品でした。それとジョンソンの作品もいくつか購入しました。

コレクションに占めるNFTアートの割合は?

ケビン氏:私が最初に手に入れたものは何かと言うと、クリプトパンクです。私もクリプトパンクのNFTを持っていました。5個も買いました。プレゼント用に買ったのですが、結局プレゼントする事はありませんでした。そして最近になって処分することになりました。クリプトパンクの生みの親であるマットとジョンを悪く思わないで欲しいのですが、あまりにも値段が高すぎました。なので、処分せざるを得ませんでした。

さて、皆さんがNFTに関していろいろ知っていることを前提に質問します。ここからはデジタルアートを配信するために現在使われている技術的な構造について、もう少し哲学的な議論をしていきたいと思います。ケイトさん、過去、2年間に収集した作品のうちNFTが占める割合はどのくらいですか?最近集めているコレクションの中でかなりの割合を占めているのでしょうか?

ケイト氏:NFTの収集は、物理的な作品の収集よりもはるかに簡単です。2019年、2020年は私にとってNFTを占める割合が大きな年だったので、300点以上の作品を持っていました。2021年の初めにその大半を売りました。また、多くのアーティストにNFTを紹介し、サポートしています。私も紹介したアーティストからNFTを集めてサポートしていますので、最終的には私がサポートした人から購入することになります。企業コレクションと個人コレクションを分けなければならないのでちょっと難しいです。企業コレクションに関しては、最近はNFTが多いですね。2001年ごろから私は物理的な作品だけを集めていました。ビンテージや、ユニークな作品、デジタルアートなどです。イーサリアムベースのプラットフォームのNFT市場は最近高くなりすぎているので集めても面白くなくなっています。私が最近集めているのはイーサリアムベースのNFTマーケットプレイスではなく、テゾスベースのNFTマーケットプレイス「hiC et nunC(ヒックエトヌンク)」の物です。ここ2週間の週末はかなりたくさん買い物をしました。手ごろな価格なので、30作品以上購入したと思います。

hiC et numC(ヒックエトヌンク)と他のブロックチェーンの相場価格の違い

ケビン氏:いくつかの理由で代替チェーンが出現し、価格が下がってきています。そこに何が起こっているのかはよくわかりませんが、もし、ケニーさんがそれについて何かご存じでしたら教えてください。なぜヒックエトヌンクの価格は他のチェーンの同じアーティストの作品に比べて安いのでしょうか。

ケニー氏:まず、第一にNFTやイーサリアムの価格が高すぎるというのは、大きな誤解だと思います。つまり、2月から3月にかけて市場の調整が行われているのです。一般的には全体の価格が80%程度下落しており、これは大きな動きだと思います。しかし、その前に大幅に上昇したこともあります。それは見方によると思います。ヒックエトヌンクが使うテゾスはイーサリアムに比べて、テゾスの評価は低いです。南米のアーティストが運営しているサイトだと思いますが、手ごろな価格でアーティストが運営しているというのが、その理念の一つです。NFTが成功したことで、イーサリアムやイーサリアムブロックチェーンによる市場全体に注目が集まったため、イーサリアムブロックチェーンを使用したNFT自体がかなり厳しい状況を迎えることになりました。NFTは上昇を促し、そのあと、NFTは投機的な手段だと言われるまでになりましたが、実際にはNFTを買うよりも通貨を持っている方が良いのです。価格の変動は厳しいです。ヒックエトヌンクは環境にやさしいプラットフォームで、アーティストが運営しているので意図的に価格を抑えているのだと思います。

NFTアートをコレクションする理由とは

ケビン氏:ケイトさんのクライアントは、アートを愛し何らかの体験をしたいがためにNFTの作品を集めているのでしょうか。承認欲求を満たすために購入しているのでしょうか。それとも単なる投資なのでしょうか?それともこれらすべての要素を兼ね備えているのでしょうか?

ケイト氏:これらは様々なグループに分ける必要があります。NFTコレクターもいますが、彼らの多くは明らかにアートを愛しているからこそ集めているのです。このような人たちは、クリプトアーティストを常に追いかけています。彼らは自分が集めているものにとても情熱を持っています。彼らにとっては、より感情的な買い物なのです。

従来のアートコレクターはトレンドを追って見に来ていますが、その80%は見逃してしまうかもしれないという事への恐れ、これによって購入していると思われます。何が起こっているのかをきちんと理解せず、何か大きなものを逃してしまうと恐れているのですが、それでも参加したいと思っています。そしてその話題を深く掘り下げ多くの質問をしてきます。私はそのようなコレクターは大好きです。でも、作品の選び方がクリプトコレクターとは違うので、やはり難しいです。

また、短期的な利益を得るためだけにこの分野に参入し転売する方や、投資家、そして純粋な投機家もいます。それは従来のアート市場よりも多いのでしょうか?もしそうだとしたら、それはプラットフォーム自身によって促進されているのはないでしょうか?これが言いたかったのですが、私が運営するギャラリーが技術系のプラットフォームでなくて良かったと思います。と言うのも、技術系のプラットフォームではコントロールが難しいからです。多くのボットが入札を行い、すべてを購入する機会があります。プラットフォームは彼らがこのNFTを購入することを禁止することはできません。しかし、私のギャラリーは個人的な関係を持っているので、この人は転売目的だとわかっている場合には販売しません。作品が同じ人のもとに2、3ヵ月残るようにしています。

デジタルなものを物理的なものと一緒に販売することで、もし、その人がアナログに興味が無いとしたら、それは私にとって大きな不安材料です。物理的な作品を転売する時は、送料や税金がかかるので時間がかかります。物理的な素材を扱うので常に複雑ですが、デジタルでは数秒で終わります。

既存のアート業界はNFTを受け入れることができるか

Kenny氏写真
Kenny Schachtert氏

ケビン氏:彼らはNFTを完全に理解しているのでしょうか?クリスティーズやサザビーズのNFTオークションを見ただけで彼らはこれを完全に理解しているのでしょうか?

ケニー氏:これを答えるのには2時間必要です。しかし、33年近くの間これほど偏った現象を見たことがありません。従来の美術界の大多数はNFTを認めていないだけでなく、NFTを真っ向から否定していると言っても良いでしょう。

それでも、アーティストにとって良いこともあります。NFTの世界は作品が転売されるとアーティストにロイヤリティが支払われます。転売されたこともわかります。例えば2週間前にニフティゲートウェイで5つの作品をリリースしたのですが、数日のうちに全ての作品が転売されました。4点は1人のバイヤーに転売され、残りの1点はGoogleのエンジニアで友人のデビー・ミッチャムさんに転売されました。しかし、彼はNFTを売ったことがありません。NFTをたくさん買っていて、アートを愛しているのですが、一度も売ったことはありません。そういうこともわかります。

ケビン氏:ケニーさんはここ数ヵ月で非常に大きな成功を収めていますね。あなたは80年代からアーティストとして活躍してきました。しかし、ここ数年は執筆やキュレーションに多くの時間を費やしてきたと思います。今やNFTのスターのような存在です。これは真剣な試みとして始まったのでしょうか?それともジョークだったのでしょうか?何が起こっているのか教えてください。

ケニー氏:私はとてもまじめにジョークを言っています。人生に真剣に取り組んでいませんが、アートは私の人生です。アートは私の体の中を流れる血液のようなものです。伝統的なアートの世界はとてもヒエラルキー的で、保守的で、後ろ向きで、判断力に欠けています。私は何十年もアートを作り続けているにも関わらず否定されてきた理由の一つは、生活のために様々なことしているという事実があります。人に教えることが好きで、描くことも好きで、過去にはアートを扱って生活のために自分のコレクションの一部を販売したこともあります。二十数年経てば作家としては認められてもアーティストとしては認められないのです。そしてデジタルの分野では、1年ほど前にNFTのことを初めて耳にしたとき、チャンスがあったので飛びつきました。そして数千ドルを稼ぎました。これが自分のお金になるとは考えもしませんでした。初めて参加したとき、リープがまだ人生で一度も作品を売ったことがありませんでした。しかも当時は4000ドルももらえるなんてほんとにありがたい事でした。1月の美術新聞にNFTが伝統的な美術界に多大な影響を与えることになるだろうと書きました。だから、私はそれをジョークだと思ったことはありません。私は自分自身をちょっとしたジョークとして捉えています。と言うのも、私は人と コミュニケーションを取る上でユーモアは非常に重要だと思いますし、自分自身やアート界全体をからかっています。でも美術界のNFTへの反応がジョークそのものです。哀れで心の狭い伝統的な芸術界の人々は、基本的な意味での変化を受け入れることができないのです。

NFTは経済的価値を維持・継続できるのか

ケビン氏:2018年になってから、そんな変化がありましたね。比較的な要素も無い無形な作品を発表したら、むしろそれにチャレンジする人がいました。不思議なことに暗号資産(仮想通貨)の投資家自身からも、それがどうやって価値を持つのか、壁に掛けたり手に持ったりすることはできないのに、と言いました。ビットコインを壁に掛けることもできないし、手に持つこともできないのに、何百ドルも投資している人たちがいるのです。私の作品の場合は、暗号資産と同じでありながら、こんなものに価値があるのかと悩む人もいました。しかし3年も経つと、かなり変化があったことがわかりました。デジタルアセットやゲームのバーチャルグッズを経験したことのある若い世代のコレクターはこのことを理解しています。無形なものにも同じような価値があるという考え方は、とても健全だと思います。価値には様々な種類があると思います。本質的な価値、経済的な価値、社会的な価値など様々な種類の価値があります。まず、ケニーさんにお聞きします。このNFTは時間が経ってもその経済的価値を維持できると思いますか? 

ケニー氏:アートはアートです。優れたアートはその価値を保ちます。15インチ程度のピカソの絵画を5人の専門家の前に出せば、5%以内の誤差の価値を査定することができると思います。ですから、NFTはデジタルアートのデリバリーシステムだと思います。ビットアコンチを始めとする60年代の偉大なコンセプチュアルアーティストたちはVHSテープや、ベータテープを使ってビデオアートを作っていました。最高なアートは常に生き残ります。NFTの形式は変わるかも知れませんし、URLを指すスマートコントラクトも変わるかも知れません。さらにブロックチェーンにアートが登場するかも知れません。だから、IPFSやその他のファイル保存するための構造的な状況は、とてつもない変革が起きると思います。NFTやデジタルアートを売買するためのデジタルマーケットプレイスは、何らかの形で、永遠と存在し続けるでしょう。変化もあると思います。素晴らしいアーティストだと思いますし、ケイトさんはこの現象を最初から把握しているようです。彼女は時代の先を行くことができるのです。時代に遅れることよりも悪いのは時代を先取りしすぎることです。テクノロジーは命です。人工知能は人間から生まれるため、本当の意味での人工的なものは何も無いのです。そしてNFTや素晴らしいデジタルアートは、永遠に続くと思います。

ギャラリーは顧客にNFTの技術的説明は必要か

ケビン氏:様々なタイプのお客様がいらっしゃると思いますが、このようなテクノロジーは、お客様に説明する必要があると思いますか?技術を説明する事や、技術の寿命に対する懸念を和らげることはあなたにとっての課題でしょうか?また、NFTは経済的な価値が低下するのではないかという懸念はありますか?

ケイト氏:もちろんです。2018年に私たちは最初のブロックチェーンショーの一つである、「パーフェクトアンドプライスレス」を開催しました。実はこの言葉はケビンさんの作品からの引用です。2018年当時はどの作品もデジタルで発表されていませんでした。ブロックチェーンテクノロジーに関するものでしたが、どれも実際にはNFTではありませんでした。またクリプトパンクであってもその種の展覧会のためにアーティストが印刷してサインしたものもありました。

2018年、展覧会の期間を通してNFTのエコシステム全体、マイニング、ビットコイン、ブロックチェーンについて話すセッションを毎週のように開催していました。多くの人がビットコインとブロックチェーンの区別がつかなかったことを覚えています。とりあえずBから始まるものとしか認識していませんでした。また、暗号資産の買い方や、売り方についても話しました。

2018年当時、イーサリアムで値段が付いている作品は、2、3個しかありませんでした。一つは、キエラゼロさんの作品で、7.7ETHの価格が付いていました。これは、不換紙幣での価格が付かなかったため、売れ残った作品の一つです。しかし、他の作品はすべてドルで値段が付けられていたので、そちらの方が購入してもらいやすかったのです。

セッションについての質問ですが、私は10代のアートコレクターに電話やオンライン会議を通して何時間もかけてテクノロジーやその仕組み、暗号資産、課税、保管やデータのセキュリティ、コレクションの管理方法など、NFTの一つの形態としてデジタルアートの収拾を始める際に重要となる全ての詳細を説明しました。

また、自分のコレクションを正しい方法で保存し、税務申告や通貨、転売の際に問題が生じないようにする事にも挑戦しています。毎日何か新しい事、DeFiの事や、ステーブルコインの事、新しい種類のスマートコントラクト、プロトコルの導入など新しいプラットフォームが入ってきています。お客様に情報を提供するためには、自分自身が情報を得て、質問が来た時に説明できるように常に少しでも先を読んでいなければなりません。

NFTの将来について

Kevin氏写真
Kevin Abosch氏

ケビン氏:NFTはご存じの通り、ある種のコンテンツを持つメディアに関連するトークンです。私はNFTの将来に興味があります。NFTが進化してコミュニティがコミュニケーションを取ったり、コラボレーションしたり、集合的知性を活用したり、人工知能を少し入れたりして、アーティスト、作品、観客の間の境界を並列化するノードになるのではないかと考えています。それが可能になると本当に面白くなると思います。そして未来のNFTはこれを活用し、このチャンスを生かすことができると思うのです。

ケニーさん、NFTの未来について何か考えていることはありますか?将来的に何か特別なものがあるとしたらそれは何ですか?

ケニー氏:ティパックシャクーが最近ツアーに出ましたが、彼は既に亡くなっています。彼はホログラムとしてツアーに参加しました。バーゼルのアートフェアでは香港の新型コロナウィルス感染防止の渡航制限により、多くの出展者が香港に入国することができませんでした。その結果、ホログラムとして参加することになりました。

アートを物理的に展示することが話題になっていますが、私は、デジタルビデオやコンピューターで加工された写真作品を作っているので、無形だとはあまり考えていません。なぜなら、私はデジタルビデオや、コンピューターで操作された写真作品を制作しており、それらは彫刻や絵画と同じように具体的に存在しているからです。60年代のビデオアートは、テープを買って機械につないでテレビで見ていました。

NFTも同じです。つまり専用の機器があって、そこに作品をアップロードすれば機器でNFTを見ることができるのです。このように、自分の作品との関わり方が大きく変わっていくのではないでしょうか。

また、現存するアートの作品の大半は、倉庫や、美術館の地下にあるという事実もあります。NFTという形式のファイルを持っていて、私はチューリッヒのホテルの部屋に座っていて、ホテルの部屋の真ん中に私のコレクションの一部を3Dで投影する事ができます。

アーティストたちは、既にホログラムを彫刻のような形で採用しています。携帯電話やコンピューターの画面、あるいはテレビの画面で見るだけでなく、物理的に表現されたアートとのかかわり方について、非常に大きな進歩があると思います。

ケイト氏:私はケニーさんの意見に同意します。新しいアートを導入することにより、フィジカルとデジタルの相互作用が生まれると思います。NFTは分散化された仮想空間に展示され、人々は1人のアーティストによる展示を楽しむのと同じアートを体験することができます。同じアーティストがNFTを作成し、それがある種の分散型仮想空間で展示されれば、より多くの芸術的な体験ができ、コレクターとしても、この作品を別の形で実感することができると思います。

日本のアート界がNFTにできることはあるか

ケビン氏:あと一つ最後のシリーズである1111のNFTについてですが、私はコレクターとアート作品の関係を変えようとしています。コレクターが作品を収集することが前提となっていますが、私は、作品がコレクターを収集するのではないかと考えています。

アーティストとコレクターの関係はこれまで単純なものでした。その関係がNFTや巧妙なコーディングによって時間をかけて、思いもよらない形で発展していくことを期待しています。アーティストやクリエイター、コミュニティはそれを利用して、斬新な方法で、意味ある方法で、恐ろしくもある方法で、コレクターを驚かせることができるのです。

ケイトさんとケニーさんは皆、日本が大好きです。日本について、何かできることはありませんか?

浮世絵など、日本の芸術がドガ、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、さらにはゴッホまでヨーロッパの芸術にどのように影響を与えてきたかという話をしましたね。そして、ヨーロッパの芸術家たちが様々な形で戻ってきて、現代の日本の芸術に影響を与えているのです。皆さんはどう思いますか?私たちには何ができますか?これから数ヵ月以内に何かできることはないでしょうか? 

ケイト氏:スーパーフラットムーブメントの創始者である村上隆さんは、NFTが時代の精神を反映していると言っていましたが、彼らのスーパーフラットムーブメントにもよく合っています。歴史を見れば、日本のアートがいかに西洋の世界や、西洋のアートから情報を得てきたか、逆に知ることができると思います。

ケニー氏:スーパーチーフギャラリーとNEO SHIBUYA TV、渋谷交差点とのコラボレーションがあります。この2、3日の間に88のスクリーンに、いくつかの作品が投影されます。私もショーの準備をしているところです。私は日本の文化的現象や、社会の側面を自分の作品に取り入れるため、日本中をたくさんまわって調査しましたが、このような立場で素晴らしい人たちと一緒に仕事ができたら絶対に嬉しく思います。そして日本の文化、例えばアニメや漫画、テレビゲームなど文化的な影響、つまりNFTにも大きな影響を与えていると思います。

ケビン氏:去年から日本のアニメや漫画のプロジェクトに協力しています。あまり知られていない事ですが、面白いことに私は10歳から11歳の頃、日系人の友達と一緒に土曜日の日本語学校に通っていたことがありました。彼の母親が墨絵の描き方や少し日本語を勉強するために通っていたので、私も彼と一緒に通っていました。

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