2021年6月10-11日に開催された「Non-Fungible Tokyo2021」DAY2のセッション“スポンサーセッション5 Mask Network”をレポートします。
Suji Yan(スジ・ヤン)氏
Founder and CEO of Mask Network
Dimension & Mask Networkの創業者兼最高責任者。起業するため、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校計算機工学部を中退。元QdailyとCaixin Mediaのフリーレポーター、自動運転に関する会社の元エンジニア。現在は、RadicalxChange Fellowshipのメンターであり、アマチュアと “Radical Market” / RadicalxChange、 Data Law Group、および経済学者や法学者と記事を共同執筆している。ワイアード、サウスチャイナ・モーニング・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ等に掲載されたこともある。現在は、オープンソース、暗号化、および個人情報保護に集中。(自社製品、mask.io/tessercube.com)
Mask Networkが目指すもの
私たちMask Networkは過去4年間、Webに焦点を当ててきました。具体的には、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムのようなプラットフォームを特徴とする従来のWeb2.0から「より多くの人々を新しい、より良いオープンな世界に導こう」と試みてきました。そこにはイーサリアムのようなブロックチェーン技術も含まれています。NFTもそのひとつです。
今日ここで私は、新しいインターネットの世界により多くの人々をどのように導こうとしているのかというストーリーと、それがNFTとどのように関連しているかを具体例とともにお伝えしたいと思います。
まず「Webを変える」というアイデアから始めます。「Web3.0」という用語は、誰でもお聞きになったことがあるのではないでしょうか。すでに5年以上前からある言葉だと思います。イギリスの計算機科学者でWorld Wide Web(WWW)を考案した1人のTim Berners Lee(ティム・バーナーズ=リー )やイーサリアムをはじめとする多くのブロックチェーンが「開かれたWeb」を表現するときに使用しています。
良いWebとは、一体どのようなものでしょうか?
一言で表現すると、これまでできなかった新しいことが次々とできるようになったインターネットのことで、例えば送りたい情報を簡単に、かつプライバシーを保護しつつ送ることができるというものです。
新しいWebでは、ビットコインやイーサリアムのようにすべてがオープンになっており、仲介業者は必要なく、政府や第三者がそれらを止めることもできません。さらには、スマートコントラクトのような新しい形の契約を結ぶことや、特別な価値をNFTとして送ることも可能になります。
しかし私たちがこの業界に入った2016年と2017年頃からあり続ける問題は、障害が起こった時にどうするか?ということです。
今日ほとんどのユーザーがツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどの主要なプラットフォームを利用していると仮定しましょう。そして、Web3.0やNFTについては聞いたことがあるとします。
問題は、ビットコインや今年の2月に販売されたNBA Top ShotのNFTをどのように送るのかを知らないという点です。また、Web3.0が分散的なネットワークであり、その中にNFTがあるということも理解されていないのです。
先ほど挙げたようなプラットフォームは、中央集権的です。しかし私たちが今やろうとしていることは、かつて90年代にオープンなインターネットを利用できるようにしたWindowsをベースにした仕組みと同様に、Web3.0と人々が接続できる仕組みを構築することです。
この実現のために、ECMA/TC39という組織に参画し、新しいWebのあり方を模索しています。この組織には、MetaMaskやCoinbaseなどの暗号資産業界に限らず、ソニーやアリババのような大企業も参画しています。35~40社のメンバーで構成されており、新しいスタンダードの確立を目指しています。
NFTの新たな可能性を導く
次にNFTについてお話しします。
実際にツイッターを開きながら、説明します。
ここで暗号資産を送りたいと思いますが、それは非常に難しいです。というのも、ツイッターは中央集権的なサービスであり、暗号資産は分散的な価値の保管・移転手段だからです。しかし、Maskの拡張機能をインストールすることで、それを実現することができます。
例えば、特別なメッセージをNon-Fungible Tokyoに送るとします。このメッセージは、それを受け取った人や、私の知り合いだけが復合できる形で暗号化されます。
別の例も挙げると、私が中国の旧正月のお祝いとして、Vitalikに紅包(日本でいうお年玉のようなもの)でお金を送ったとします。そのお返しで、Vitalikから紅包がツイッター経由で届くとします。これと同じ要領で、NFTのやりとりも可能です。なぜなら、NFTはトークンの一種だからです。
また別の例ですが、ツイッターやフェイスブック上で、とてもかっこいい画像を含む投稿があるとします。この投稿をブロックチェーン上でやりとりするためには、レンダリングする必要があります。もしレンダリングが可能な場合、この画像に対し、暗号資産やあなたが住んでいる国で使えるデビットカードやクレジットカードを用いて購入するためのオファーを出す、というようなことができるようになります。
こうした事例は、単にNFTを売ることにとどまりません。もっと多くのことが既存のプラットフォーム上で実現可能であることをお見せしたいと思います。4月22日のアースデイにRaribleやOpenSeaなどと協力して行なったNFTオークションの事例をご紹介します。
このオークションでは、非常に可愛らしい哺乳類で絶滅危惧種のIli Pika(イリナキウサギ)という動物保護のために、NFTをオークションで販売、その売り上げをNGOに寄付するというキャンペーンを行いました。イリナキウサギは、ポケモンのモンスター、ピカチュウのモデルの動物と言われています。画面に表示しているように、イリナキウサギに限らず、複数の絶命危惧種のNFTを作成しました。これらはWWFなどに寄付を行うために行ったもので、IPのマネタイズを企図したものではありません。
▼参考
そもそもこれらのアセットは、価値のあるアセットとして開発されたものではありません。
では、ツイッターへの投稿は、資産になるのでしょうか?
私を含め、多くの人がツイッターを娯楽の一部として使用しているため、資産であるとは考えないでしょう。問題は、これらのツイートがツイッター社によって管理・保管されていることです。そのため、ツイートそのものを資産にして売買することなどは元々はできませんでした。しかし、Mask Networkを使用することで可能となります。
Jack Dorseyはツイッター社の創業者です。彼はツイッターとSquareの創業者兼CEOであり、暗号資産の支持者です。彼がツイッターの初ツイートをNFTとして販売したところ、Raribleで290万ドルの値段がつきました。
Mask Networkを使用することで、同様のことが誰にでもできるようになります。例えば、Miss Bitcoinの1ツイートをユニークで素晴らしいと感じた人は、そのツイートを買いたい、とオファーを出すことができます。
ツイッターへの初ツイートに290万ドルもの価格がついたのは、そのツイートにそれだけの価値があると感じた人がいるからです。なおこの290万ドルは、アフリカの団体に寄付されました。
Mask Networkは戦略的投資家やステークホルダーでもありますが、それ以上に重要なのは、私たちが自分の役割を果たそうとしていることです。
クリエイターと同志になり、新しいWEB世界を実現化
ツイッターやインスタグラムのライブで、今後もっと素晴らしいことができるのではないかと期待しています。そのために、人々が新しいことや難しいことを学ぶ必要はありません。コードを書く必要もなく、好きなツイートやインスタグラムの投稿を購入する、そんなことができるようになると思っています。
日本はアニメのIPで有名ですが、他にも日本の文化を作るためのIPがたくさんあります。そしてそれら作品の多くは、ツイッター上のクリエイターがNFTとして作成したものです。
私たちは分散型のミドルウェアでありたいと思っています。このミドルウェアは、人々が望む未来を実現できるようにサポートする存在です。そのため、私たちは利用者に使用料などを請求することはしません。私たちはそれが長期にわたって可能であると信じており、また分散化させていくつもりです。マネタイズなども行わず、Mask Networkはオープンソースであり続けます。このような形で、ECMAにも関わり規格を構築していきます。
このようなビジョンの背景にあるイデオロジーは、MakerDAOなどと共通しており、インフラストラクチャーになることを目指すというものです。
既存のインフラストラクチャーは強大な力を持ち、独占や寡占をしています。また、自身の好きなようにコントロールができます。
しかし、私たちが目指すインフラストラクチャーは、そのような力を持つ存在ではありません。デジタルコンテンツに対し、そのような影響力を持つことを私たちは目指していません
今日フェイスブックやツイッターほかの優れたサービス上では、多くのデジタルコンテンツが生成されています。私たちがそこに画像などをアップロードする度に、それらのプラットフォームは広告掲載などを第三者やユーザーに許す対価として、何かしらの手数料を徴収して収益化しています。このように、プラットフォームがデジタルコンテンツの工場のような働きをしています。見方によっては、デジタルの奴隷のようだと見ることもできます。
このような状況で重要なことは、クリエイターなどのプラットフォームの利用者が共に協力し合うことです。私たちが開発したのはインフラストラクチャーであり、コンテンツをNFTにしてマネタイズできるようにサポートするシステムです。そのプラットフォームの使用をより快適にし、コントロールできている感覚を今以上に持てるようにしたいのです。クリエイターの単なるパートナーとしてではなく、ムーブメントを起こす同志になっていきたいと願っています。
新しいWebを実現するためには、プラットフォームのクリエイター同士やコンテンツオーナーの団結が必要です。こうした未来の実現を、ブロックチェーンやNFTなどの技術が支えていくことでしょう。
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