2022年7月15日に開催された「Web3 Conference Tokyo Vol.2」のセッション “人口800人の限界集落が「NFT」を発行する理由”をレポートします。
竹内春華(たけうち はるか)氏
NishikigoiNFT/山古志住民会議代表
2007年生活支援相談員として山古志災害ボランティアセンターに所属。2004年に発災した中越地震で被災した旧山古志村の住民が暮らす仮設住宅にて活動。2008年地域復興支援員として、住民主体の地域づくり団体「山古志住民会議」の事務局を務める。山古志のグランドプラン「山古志夢プラン」を策定し、地域住民と各種事業をおこなう。2021年4月より山古志住民会議の代表を務める。
竹内氏:新潟県の山古志住民会議の竹内です。
今日は人口800人の限界集落、山古志村がなぜNFTを発行したのかについてお話します。どうぞよろしくお願いします。
まずは私自身の自己紹介をさせてください。私は山古志住民会議の代表を務めていますが、実際には山古志に住んでいる住民ではありません。
元々は18年前の中越大震災をきっかけに関わり始めた外部の人間でして、山古志に関わり始めてから今年で約16年になります。地震で壊滅的な被害を受けた山古志の方々が仮設住宅に入っている時に、生活支援相談員として災害ボランティアセンターに携わっていたことがきっかけです。当時、住民の方が山古志に帰って来るのと同時に、私も一緒に山古志に入って来て、そのまま復旧・復興の過程に協力しています。
現在、山古志は村としては消滅しているのですが、平成の大合併で長岡市に編入合併して存続しています。そんな中で、山古志村としてのアイデンティティーの下に、山古志を作っていこうと組織された団体が山古志住民会議になります。
外部の人間である私が代表を務めているくらい懐の深い、本当に度量のある地域が山古志になります。
本日お話をする内容について、まずは、地震の話も含めて山古志はこんなところだよということをお伝えできればと思います。
存続か消滅かの岐路に立つ限界集落というセンセーショナルなタイトルなのですが、18年前の地震当時、山古志の人口は約2200人でした。
上の画像が通常の冬の山古志です。世界有数の豪雪地帯と言われていて、例年大体3~4メートルの雪が積もります。
このように大雪に見舞われたりもしますが、実は非常に起伏の激しい土地で、水不足に悩まされる地域でもあります。先人が雨水を確保することに非常に工夫を凝らして横に井戸を掘って横井戸を作る技術から、棚田、棚池というものも活用して水の確保をしてきた地域です。
その大切な雨水が浸透した湧き水をもとにして生まれたのが、この錦鯉です。山古志発祥の地と言われている錦鯉になります。
錦鯉の他に山古志独特の文化として、牛の角突きがあります。この起伏の激しい棚田を耕作していくためには人間の手ではなかなか難しいので、先人が南部牛を新潟の山古志まで連れて来たんです。起伏の激しい山肌に点在する田んぼ、畑を耕作したのが、牛の角突きの生まれと言われています。
そんな伝統を持つ山古志なのですが、2004年の10月23日中越大震災という大きな地震に見舞われました。本当に大きな地震で、山古志の集落と集落を繋ぐほとんどの幹線道路が分断されてしまいました。
今でも10月23日は山古志の住民が一堂に集まって追討式という名目で、あの日のことを思い出しています。山古志にとって10月23日は、また1歩今日から頑張っていこうという元旦と大晦日のような1年の締めくくりの日であり、1年のスタートの日になっています。
18年前の10月23日から今日に至るまで、本当に多くの方々に支えられて山古志はここまでやってきました。
その中でも首都圏の大学生は、家屋の片付けから始まり、復旧工事、復興工事に協力してくれるだけでなく、その活動が終わった後には山古志を楽しんでくれて、その様子を自ら発信して、山古志をサポートしてくれています。
そんな18年間の中で出会った方々との繋がりをもとにして、私たちはデジタルアートと電子住民票を紐づけたグローバルな「関係人口」を創出する挑戦に出ました。
これには、18年間で出会ってきた国内外の方々、サポートしてくださった方々はゲストではなくて、山古志を作ってくれた一員、一部だということを認めたいという想いが根底にあります。
そして、この山古志の仲間だという意味合いをデジタルアートと電子住民票に紐づけて発行したのが錦鯉NFTです。
この錦鯉NFTは、国内だけではなく世界に向けて発信、発行をしました。
下の画像は、左側が公式ホームページのサイトで、右側が公式Twitterです。国外にも発信するために、どちらも英語で作りました。
錦鯉NFTを発行したのが昨年の12月14日で、発行から半年以上経ちます。1万点、世界に向けて発行した結果、色んな変化がありました。
まずはNFTを購入してくださった方々を私たちはデジタル村民と呼んでいますが、その方々のアクションもありましたが、NFT発行による賛否両論の声もありました。
最初のデジタル村民の方々のアクションは、12月の発行直後にありました。「デジタル村民も帰省します」ということで先程の画像にもあったような3メートルの大雪にも負けず、山古志を訪れてくださいました。
特に今年の春、ゴールデンウィークには、コロナ禍も落ち着いてきたということもあって、色んな方々がデジタル村民として山古志に帰省をしています。
上の画像は、山古志を震災以降ずっと応援してくれている方々のそれぞれのまとめです。本当に賛否両論の声があります。NFTを発行したことによって、地震以降山古志を応援してくださった方々から、電話やダイレクトメールで「山古志はもう俺たちのことはどうでもいいのか「「私たちの協力はもういらないのか」「私たちのことはもう忘れてしまったのか」という非常に寂しい、胸に刺さるようなお言葉をたくさんいただきました。
住民会議や、山古志の住民を支えてくださった方々は、NFTだったり、スマートフォンを扱うのもなかなか難しい方々が非常に多かった記憶があります。その方々がブロックチェーンやNFTのことが全く分からない中で、山古志はNFTを通して、今後どのように関連性を作っていくのかというようなお言葉をいただきました。
これは山古志としても、山古志住民会議としても本意ではなくて、「これまで支えてくださった方々が住民と一緒にここまで山古志を作ってきたからこそ、この挑戦ができるんです」ということをできる限り伝えています。
中には、スマートフォンしか持っていなかったり、ブロックチェーンが全く分からない人でも、山古志のNFTを購入してデジタル村民になりたいと言ってくださっている方もいます。このように、かつての山古志ファンの方々が数多くいることが分かったため、どうにか安全に分かりやすく錦鯉NFTを購入してもらえるようにできないかというのを早速デジタル村民の方々に相談したところ、山古志のNFTを安全に購入できるまとめサイトや、まとめ動画を作ってくださるアクションが発行当初からありました。
NFTを発行してから約半年以上経ちましたが、今後山古志として目指しているのは、山古志DAO、そしてデジタルとリアルの融合です。
山古志DAOということで、今までであれば、山古志のリアル地域も含め全国のどんな自治体の地域も、地域づくりだったり、地域を存続させたり、活性化のための活動は、そこに住んでいる住民が主でやっていきます。
そして、それ以外の中間人材や行政の方、民間の方だったりがサポーターとなって活動するというのが主流だと思います。ですが、私たちが目指しているのは、もはや対等です。
山古志に住む住民だけで山古志を作るのではなく、山古志の共感者、つまり仲間であるデジタル村民の方々も一緒のテーブルに並んでいきたいという意味合いを示すために、山古志デジタル村民総選挙というものを2月頃に実施しました。
この山古志デジタル村民総選挙は、第1弾セール、第2弾セールと2回セールを行いました。第1弾セールの売上の一部をデジタル村民の方々に予算金として付与しますと宣言して、山古志を存続させるためのアクションプランを公募しました。
そして、公募して選定されたプランにそれぞれ売上の一部である1.5ETH、1ETHをそれぞれ予算をつけて、デジタル村民総選挙を行っています。
この総選挙の実施を宣言した時に、果たしてデジタル村民だけでプランを選ぶことが良いのかという議論になりました。
また、その議論の中では、リアルにこの山古志に住んでいる住民の方もできれば一緒に選びたいという議論にもなり、山古志住民に対する錦鯉NFTの無償配布について、可否を問う投票をデジタル村民向けに行いました。
結果は100%賛成という本当に胸が熱くなる投票結果でした。この結果をもとに、錦鯉NFTを住民の方にも配布して総選挙の投票に挑みました。下の画像がデジタル村民総選挙の時の様子の一部です。
結果、4つのプランが選ばれまして、その4つのプランが現在進行している状態です。
それぞれ投票によって選ばれた4つのプランが進んでいる様子だけでなく、選ばれたプラン以外にも、デジタル村民が本当にアクティブに色んな切り口でアクションをしてくださったので、マンスリーレコードというものにそれらをまとめてデータにしています。
このマンスリーレポートを実際の山古志の拠点となる施設にも貼り出して展示したり、公式Twitterで共有して発信をしたりしています。
ご質問がありましたら、公式Twitterの方にご連絡いただけると嬉しいです。
ありがとうございました。
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