ブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)業界に興味がある方のために、業界で必要な知識をどうやって身につけていくかを探る特集記事。今回は株式会社電縁の吉田健一氏にインタビューしました。
吉田 健一(よしだ けんいち)氏
1999年からIT業界に飛び込み、電縁へは個人事業主を経て2011年に入社。現在はイノベーションオフィス室長として新たな事業、サービスに繋がる新技術の取り込み、社内の技術課題解決の支援などを行っており、その一環として社内ハッカソンを主催するなど、社員の技術向上に向けた活動を推進している。
目次
実験的な取り組みからブロックチェーンの世界へ
ー 吉田さんはどんな仕事をされていますか?
株式会社電縁で、イノベーションオフィスの室長をしています。会社が主に受託開発・SESをやっているので、以前はあまり新しい顧客やビジネスが生まれてこない状況がありました。そこで3年ほど前にイノベーションオフィスを立ち上げました。
イノベーションオフィスでは、社内の課題解決を受け付けたり、会社の横軸でのコミュニケーション活性化や、電縁の対外的な活動を行っています。
ー ブロックチェーンにはどういった経緯で取り組まれているのでしょうか?
2015年の末ぐらいに当時の親会社がブロックチェーンに取り組み始めることになり、そこから声がかかって電縁でもブロックチェーンを取り組むことになりました。当時は現在の役員と私の2名でブロックチェーンについて調べながら活動を開始しました。
最初はビットコインのフォークで”DENCOIN”を作ってみることから始まりました。同時にブロックチェーンでのシステム開発サービスも打ち出し、シグマクシス様と組んで契約書の真正性を証明するツールを開発したり、三井住友海上様からの委託で実証実験のお手伝いをしていました。
2018年はブロックチェーンへの取り組みは減ってしまいましたが、その後積極的にイベントに出るなどしてまた最近増えてきました。今は個人でもブロックチェーン関係のスタートアップさんをお手伝いしたりしています。
ー 現在会社としてはブロックチェーンでどういうことしているのですか?
ブロックチェーンやAIなどの新しい技術を取り入れた社内勉強会を実施したりしていて、それらの技術を持ったエンジニアを増やしています。ブロックチェーンのために特別に採用しているわけではなく、もともとの技術者がブロックチェーンの技術習得をしていっています。
開発への強い興味から築いたキャリア
ー ブロックチェーンの魅力は何ですか?
ブロックチェーンに興味を持っている人の中には、非中央集権への興味が強い人が多いと思っていて、私もそうです。国や組織に囚われない、インターネット上に何か新しい国が誕生していくかもしれないといった面白さがあります。
ー 吉田さんはブロックチェーンに取り組むまではどのような技術者だったのでしょうか?
僕はエンジニア歴が20年以上になるんです。最初は基幹システム系の請負をやっていました。当時未経験で会社に入って勉強していたところ、それが楽しくて家でも開発するようになりました。
クラサバ(クライアントサーバーシステム)系から始まってWEB系に移り、さらにモバイルアプリやインフラもやっていきました。ですので、ブロックチェーンに取り組むまでの時点で割とフルスタックなエンジニアでしたね。
電縁に入ったきっかけとしては、その前に浅草のベンチャー企業でデジタルサイネージを作っていて、電縁への事業売却で移りました。
開発力に自信があったからこそブロックチェーンも習得できた
ー ブロックチェーンについては、どこから手をつけましたか?
一番最初は大石哲之さんの『ビットコインはどのようにして動いているのか?』という本を読んだと思います。その時点ではまだビットコインが凄いかどうかもわからず、ただ少し興味を持っていたレベルです。なので興味を持ち始めたのはWEBでの情報源がスタートですね。
ー そこからすぐ開発ではないと思いますが、どのような学習過程でしたか?
まずはBitcoin Coreのソースを覗いてみて、ビットコインのフォークで独自コインを作ってみました。そこからブロックチェーンについて調べていってEthereumなどを知り、社内で勉強がてらスマートコントラクト開発にも取り組んでいきました。
BLODEA(一般社団法人 ブロックチェーン開発者協会)という組織では、BitcoinとEthereumのハンズオンのカリキュラムを作るお手伝いもしていました。
そうやって社内にナレッジを貯めつつ、ブロックチェーンでのシステム開発サービスのプレスリリースも出したところ、問い合わせをいただくようになり、ブロックチェーンアプリケーションを実際に作るようになりました。もともと開発力には自信があったので、依頼ベースで習得しながら作っていきました。
ー BitcoinやEthereum以外の技術も使っていますよね?
はい、Hyperledger Fabricなども取り組んでおり、それも案件ありきでやってきました。社内でも新しい技術をハンズオンで教えたりしていくうちに自分の学びになっています。
ー 2016年ぐらいに十分な情報源はありましたか?
確かに日本語の情報源はかなり少なかったです。僕は英語は得意ではありませんが、課題解決レベルではもともと英語も読んでいたので、英語の情報源でもリサーチしていました。最悪英語が読めなくても、ソースコードは万国共通なのでソースコードを読めばいいです。
アウトプットがないと習得は進まない
ー もし実務でのアウトプットがなかったらどうでしたか?
実は一昨年〜去年ぐらいは、実際にチームとして取り組んでいたのはAIが多かったんです。それではアウトプットが無さすぎるので、セミナーなどに顔を出すようになり今は仕事が入ってくるようになりました。これが無かったら今ほど習得できていなかったと思います。
また、当時多かった実証実験はそれほど面白いと思わず、B向けよりもC向けに関心が高かったです。その流れで実際に今も個人で請け負っているんです。
ー 実際にブロックチェーンの開発をする仕事はどれぐらいの割合でしょうか?
2〜3割ぐらいだと思います。ブロックチェーンは会社の中でもちゃんと分かっている人は数名いればいいと思います。実際に書いている言語としては、会社としてはJavaが多く、個人的には最近はnode.jsやPHPを使うことが多いです。
ブロックチェーンの世界ではインフラの知識が求められる
ー もしこれからブロックチェーンをやりたい人は、事前に最低限どれぐらいの技術が必要でしょうか?
まず、複数言語は出来なくていいので、1つの言語をすごくちゃんと理解していて自信を持っていること。
次に、ブロックチェーンはいろいろな構成要素があるので、インフラの広い知識があると取っつきやすいはずです。
ー コードを書けるだけでは厳しいでしょうか。
以前はそうでしたが、今はBaaS(Blockchain as a Service)も増えてきているじゃないですか。なので障壁は下がっていていると思います。ただやはりインフラの知識がないと全体像が把握できないので、家でサーバー立ててみるような私の経験は結果的にかなり良かったかなと思います。
ー 実務経験としてはどんな経験があると良さそうでしょうか?
ブロックチェーンの中でも何をやりたいかによります。例えばエンタープライズなら、もともと受託開発やってたような経験の延長でもいいと思っています。サービス系であれば、WEBサービスやってた人とかでしょうね。API叩くような感覚と近いですし。
ー エンジニア自体が未経験でいきなりブロックチェーンに取り組むのは難しいですよね?
まずはjavascriptを勉強してほしいです(笑)。そしてサーバーサイド開発をちゃんと理解してからじゃないとさすがに厳しいと思います。
ー ブロックチェーンは未習得でも実務で活躍できるチャンスはありますか?
そもそも、ブロックチェーンしか触らないような会社は無いので、エンジニアとしての力があれば全然活躍できます。なので、エンジニアとして力を付けていって、それに加えてブロックチェーンも身につけていってほしいです。
交流から始まり、飛び込んでいくことで習得できる
ー 最近興味を持った人がブロックチェーン技術を身につける最短ルートは何だと思いますか?
まずはCryptoZombiesですかね。今さらEthreumから始めるべきかと言われると分からないですが、まずはスマートコントラクトを理解するために良いかと思います。
そして、個人的なおすすめとしては、セミナーとかイベントに行ってみて面白いプロジェクトや技術を見つけること。それについて調べていったり交流することで取り込んでいけるのではないでしょうか。
交流の機会はイベントでもTwitterでも少なからずあります。そこから、必要な技術を全て独学で身に付けるのはかなり厳しいので、会社やコミュニティに飛び込んでしまわないとその先は難しいかと思います。
ー いままで影響した本はなんですか?
やっぱり『Mastering Bitcoin』の日本語版ですね。最初の技術書としては定番です。
ー 最後に、これからブロックチェーン業界に興味がある人に向けてメッセージください。
まだまだ狭い業界で、関わってる人が少ないので、今からでも遅くないです。頑張り次第でいかようになるので、ちょっとでも面白いと思ったらどんどん突っ込んでいってほしいです。
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