デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以後DTFA)のWeb3・ブロックチェーン専門チームでは、事業拡大のため新しい人材を募集している。なぜ同社がこの分野を推進するのか?Web3・ブロックチェーン分野に寄せる期待と今後の展望をパートナーの小澤氏に伺った。
【語り手】
小澤(おざわ)氏
デロイト トーマツ グループ CIO
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社パートナー
前職の大手損害保険会社にて、CTOとしてDX推進等を幅広く手掛ける。2021年7月DTFA入社。責任者としてビジネスイノベーションを実現するためのDXの企画・構築、レガシーモダナイゼーションを加速するためのクラウドシフトの計画、推進、ビジネス戦略を早期に実現するための最適なプラットフォーム、開発メソッドの支援、DX推進に必要なリソース支援、デジタル人材育成の支援に従事する。
【聞き手】
宇根(うね)氏
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
外資系ITベンダー等を経て、2022年7月DTFA入社。金融業界におけるIT戦略立案から実行支援までの変革推進、ITガバナンス・マネジメントの牽引など幅広い領域でのITコンサルティングに従事する。
目次
DTFAがWeb3分野を推進する理由とは?
宇根氏:まず初めに小澤さんは、どのような経緯でDTFAに入社されたのですか?
小澤氏:元々DTFAの業務は、お客様へのアドバイザリーが中心でしたよね。そこから、ご提案だけでなくサービス導入やシステム構築までトータルで手がけ、お客様をエンドツーエンドでサポートしていく方針へとシフトするということから、新しい部署を立ち上げてほしいということでお声掛けいただき、入社しました。
宇根氏:入社後はどのように事業が変わっていったのでしょうか?
小澤氏:入社後、金融機関に対するデジタルテクノロジーを使った新しいサービス提供や、DX・BXを手がける組織を2022年の1月に立ち上げました。徐々に中途採用を行い、現在は全体で25名ほどの規模になりました。
新しい組織の中には、Web3やブロックチェーン技術に特化したチームがあります。このチームは、ブロックチェーンやWeb3、NFTといった先進技術を活用して、お客様の課題解決やDXを推進していくことを主たるミッションに掲げています。
これからのビジネスに求められる斬新さ
宇根氏:なぜ、Web3に特化したチームを立ち上げたのでしょうか?
小澤氏:我々が専門チームを作ってこの分野に注力するのには理由があります。
企業が新しいビジネスを始めようという時に、X・Y世代に対しては従来モデルを進化させれば対応できるかもしれません。
しかし、Z世代に対してはどうでしょうか?デジタルネイティブである彼らは、全く新しいものを求めています。ジェネレーションギャップとよく言われますが、これまでの世代とは嗜好が全く異なります。
そういった人々を満足させるサービスを提供するためには、今までの思考にとらわれず、スピーディーに新しいテクノロジーや概念を取り入れていくことが重要になります。
我々は、Web3やブロックチェーンといった技術が一つの強力なソリューションとなり、クライアントに新しい価値を提供できると考えました。
手探りから生まれたWeb3への期待
宇根氏:Web3・ブロックチェーンは比較的新しい分野だと思いますが、取り組むのは難しくなかったですか?
小澤氏:初めから順風満帆というわけではなかったですね。
暗号資産やWeb3、NFTといったものは、言葉として一般的に知られるようになってきました。しかし、活用の事例としてはまだまだ少ないのが現状でした。
まずはビジネスとして成り立つかどうか判断するため、あくまで投資段階として専任担当者2名を採用し、チームを立ち上げて試行的に始めました。
事業になるかまだわからない中でゼロからチームを作り上げていくのは、真っ暗なトンネルを手探りで進むような感覚で、非常に苦労の多いものでしたね。
宇根氏:状況が変わったのは、どのタイミングだったのでしょうか?
小澤氏:初めて案件を受注しシステムの納品まで完遂してみて、認識が大きく変わりましたね。
お客様に提供するものが完成した時、こんなものができてしまうのかという新鮮な驚きと同時に大きな感動が生まれました。限られた時間の中で、ブロックチェーンのみならずAIなど他の先端技術も活用することで、質の高いものを完成させることができたと自負しています。
何もない状態から、クライアントと接点を持ってリレーションを構築し、案件化していく過程を経て、最後にプラットフォームとして形になったときの達成感は言葉にできません。Web3・ブロックチェーンが我々の中でビジネスとして一歩前進した瞬間でした。
試行から確信へ
宇根氏:今後、ビジネスにおけるWeb3の存在はどのように変化していくと思いますか?
小澤氏:Web3・ブロックチェーンが話題になり、さまざまな企業で取り組みが行われてきました。しかし、現実的にはマネタイズが上手くいかず継続不可能となり、PoC(概念実証)止まりになってしまうというのが大多数だったと思います。
我々はプロフェッショナルとして、お客様のビジネスに有益なものを提供する責任があります。同じようなモデルを別のクライアントに展開できるという感触もあり、PoC止まりの取り組みが多いからこそ、我々なら「これはいける」という確信へと変わりました。
日本企業において、Web3への取り組みが進んでいるとはまだまだ言い難い状況です。Web3技術を使った新たなビジネスを創造し、今までのビジネスモデルそのものが変わっていく未来を見据えています。
Web3が起こす革命はすぐそこ
宇根氏:Web3業界で働く上で、重要なことはなんでしょう?
小澤氏:今のビジネスの概念にとらわれないことが非常に重要でしょうね。新しいビジネスを創造するとは、まさにそういうことではないでしょうか。我々が求めるのは、既存ビジネスの「知の深化」ではなく、「知の探索」*1なのです。
例えばあなたが海外旅行に行くとしましょう。待ちに待った出発の日、急に飛行機が欠航になってしまいました。深夜の便だったので、帰宅することもできず宿も探さなければなりません。
通知音が鳴ってスマートフォンを見ると、コンシェルジュから今日泊まれる近隣ホテルの提案が届いていました。ここでもう一度、通知音。今度は、飛行機が欠航したことで支払われた保険金が、着金したことを知らせるものでした、というようなことも可能でしょう。
技術革新で広がるチャンス
宇根氏:まるで魔法のようですね。
小澤氏:飛行機の欠航をトリガーに、スマートコントラクトで次々とこのような処理が自動で行われる世界を想像してみてください。
今までのプロセスだと、被保険者本人が飛行機が欠航したという事実を保険会社に申請し、保険金を請求する必要があります。もちろん保険金は欲しいですが、手続きは非常に面倒ですよね。
ユーザーからの申請を受けて事実確認を行い処理をするので、保険会社側にとっても煩雑です。ブロックチェーンをうまく活用することで、人の手を介さずに次々と処理が行われる、こんな世界がすぐそこまできているかもしれません。
あくまで一例ですけど、ブロックチェーンを活用すれば、特定のデータをトリガーにしてアクションを起こし業務量の大幅な低減が期待できます。また、人の手を介さないことで、ミスも減らせるでしょうね。
宇根氏:人の手を介させないことがブロックチェーンの魅力でもありますね。
小澤氏:テクノロジーが大きく進化している今、ビジネスも格段に進化できる可能性が広がってきています。まさに、あらゆるチャンスがそこかしこに転がっている状態ですよね。
※1 知の深化/知の探索
「知の探索」とは、自分の認知の範囲外にある「知」を探索し、探索した「知」を既に持っている「知」と組み合わせること。「知の深化」とは、新しい組み合わせの「知」を深掘りし、磨き込む事。
Web3×あなたの想像力で何ができるか?
宇根氏:Web3チームで人材を募集するにあたって、どのような人に来ていただきたいですか。
小澤氏:Web3・ブロックチェーン技術に関する知見を活かして、お客様の課題解決がしたい方を募集しています。
チームワークを大切にしながら、クリエイティブに新しいことを創造できる方、アイデアを形にすることに面白みを感じる方、Web3を使って世の中が驚くような成果作りに貢献したい方は、チームにフィットすると思います。
先ほどもいったように、Web3は技術的にはできることがかなり広がってきていて、あとはアイデア次第で革新的なサービスを形にできるというところまできています。
この、技術にアイデアを掛け合わせて新しいものを創造するという部分をぜひやっていただきたいのです。
一緒に伴走することで得られる成功体験
宇根氏:DTFAに興味をもたれた方々へ、メッセージをお願いいたします。
小澤氏:我々のコンサルティングサービスは、ビジネス戦略のアドバイスだけで終了ではなく、その後のサービス設計、システム構築までサポートします。お客様の成功までのプロセスを、一緒になって伴走していく存在でありたいのです。
これは、お客様にとってだけではなく、仕事としても1番の魅力となる部分です。提案だけで終わってしまうなら、その後どうなったのかという重要なところがわからないままになってしまいますよね。
状況をモニタリングして、ブラッシュアップしていく工程をお客様と一緒になって乗り越えていき、事業を作り上げていく。これにより、ビジネスについてさらに深い知識が得られます。しかもWeb3・ブロックチェーンという新しい分野でそれができるわけですから、ご自身の成長を実感していただく機会も多いでしょう。
そうして得た生きた経験を、他の案件でも活かしてどんどんスキルアップしていただきたいのです。若いみなさんの創造性を活かした活躍に期待しています。