新しい分野に”まずは飛び込んで”自分にしかないキャリアを創る – KPMG/あずさ監査法人 濵田和輝氏

仮想通貨・ブロックチェーン業界に興味がある方のために、業界で必要な知識をどうやって身につけていくかを探る特集記事。今回は有限責任 あずさ監査法人の濵田和輝氏にインタビューしました。

 

濵田 和輝(はまだ かずき)氏

大学卒業後アパレル会社に勤務した後、2015年仮想通貨交換業者に入社。仮想通貨交換業登録申請、行政処分対応、金融庁を含む関係当局の対外窓口や社内のAML /CFT態勢構築等に従事。
その後2019年4月よりKPMG/あずさ監査法人に入所。仮想通貨交換業者等のフィンテック企業に対する規制遵守対応支援アドバイザリー業務に従事している。

金融規制のアドバイザリーサービスで勤務

ー 現在はどんな仕事をされていますか?

「あずさ監査法人 金融事業部」で働いています。主にフィンテック企業向けに、金融規制遵守対応支援アドバイザリー業務を提供しています。

 

ー 今はどんなクライアントが多いのでしょうか?

フィンテック企業向けのアドバイザリーが中心なので、仮想通貨(暗号資産)交換業者はもちろんのこと、フィンテックに対する新しい規制対応が関わってくるようなプレイヤーが多いですね。対象の法規制は資金決済法、金融商品取引法及び犯収法など多岐に渡ります。

 

ー 現在の仮想通貨のニーズはどれくらいですか?

私が入社した2019年の4月頃は、仮想通貨交換業者の行政処分への対応がひとしきり落ち着いていた状況で、それまでのニーズよりも低調な環境下でした。しかし今でも一定のニーズはあります。この先、法改正も予定されているため、またニーズは出てくると思います。

古着のバイヤーがきっかけで出会ったビットコイン

古着のバイヤーがきっかけで出会ったビットコイン

ー 濵田さんのこれまでのご経歴を教えてください。

大学時代から古着屋さんで働いていました。そこで古着のバイヤーをしていて、 アメリカに買い付けに行ったり、eBayのようなオークションサイトで古着を見つけたりしていました。

そのままそこに就職し、 3年間ぐらいは古着のバイヤーをしていました 。

 

そして当時からディーラーとはPayPalなどを使って決済を行っていたのですが、2014年頃にあるディーラーからビットコインでやり取りをしたいと言われました。

私自身も従来から国際送金の不便さを感じていたので、ビットコインについて調べ始めて実際に自分でも購入してみました 。

 

ビットコインについて調べていくうちに、仮想通貨について深く知るためには「実際に働いてみるほうが早い」と感じて仮想通貨交換業者に入社しました。当時はまだ仮想通貨交換業者への入社希望者は少なく転職も容易であり、Twitterで社長と直接DMでやりとりできるような環境でした。いくつかの会社と面接を経て、その中の一社に入社しました。

 

ー 最初は仮想通貨交換業者ではどういった役割を担っていたのですか?

入社してすぐはカスタマーサポートなど、何でも請け負っていました。

2017年の資金決済法の改正を受けてからは、仮想通貨交換業者が登録制になったため、法規制への対応が必要となり、金融庁のヒアリングなどを担うようになりました。

 

ー 金融機関での経験がないと難しいと思うのですが、教えてくれる人がいたのでしょうか?それとも独学でなんとかできたのでしょうか?

未知の領域ですし、ハウツー本があるわけではありません。全部独学というわけではなく、証券会社出身者や第二種金融商品取引業の立ち上げ経験者などから、どのような対応が必要なのか教えてもらいながら進めました。

金融庁の講習をきっかけに、まずは資格を取得

ー 濵田さんは最終的にはAML/CFTの担当していたんですよね。

はい、そうです。

2017年末頃に金融庁主催のAML/CFT(マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)の講習に参加しました。

その頃はAML/CFTに対する業界の注目が大きく、自社でも体制を高度化しなければならなかったのです。

 

その時の講師の方の名刺にAML/CFTの資格の名前が書いてありました。「公認AMLスペシャリスト」とか「公認不正検査士」といった国際的な資格だったので、それらを勉強すれば自分の知識にもなるし、 社内の体制としてもアピールになると考え、まずはそれらの資格を取ってみました。

 

ー 資格取得にはどれぐらい時間がかかりましたか?

それぞれ半年ずつぐらいの時間をかけて資格を取りました。

常に深める経験と学習

常に深める経験と学習

ー その後の転職に至ったのはどういった経緯だったんですか?

理由は2つあります。

まず1つは当時の仮想通貨交換業者で一定の体制が構築できたということ。そしてもう1つは、特定の事業者で法規制の対応を経験しているだけでは業務経験の幅が限られてくるということです。

金融規制に対する知識をもっと高めていくとき、コンサルの立場だと様々な難しい問題に対応していく必要があるため、より自分に合った幅広い経験が得られると思いました。

 

ー 転職してから大変になったことはありますか?

私は知識が偏っていたので、実際にはかなり学びながら仕事をしてきましたね。普通の金融機関のコンプライアンスって、1線から経験して幅広い仕事を経験するじゃないですか。そういった意味では他の金融商品に対する知見に関して、私は不足しているなと感じることがあります。

 

ー それをどうカバーしてきましたか?

社内の他の専門家に教えてもらいながらです。仮想通貨交換業者での勤務経験者はあまりいないので、知見が不足している所はあるけれども自分にしかない経験というのを活かして転職できたと思います。

 

ー 今でも資格を取った時のような座学的な勉強は多いですか?

システム監査系の資格がいくつか存在します。監査法人ではそういった資格取得に対して費用の一部補助が得られるので、その領域については今も勉強しています。

 

仮想通貨交換業者だけでなく金融機関では、システムリスク管理態勢やAML/CFTを最も重視している実感があり、そういった意味でもシステムリスク管理に対しては勉強を続けています。

常に変わっていく法律の知識も勉強していかないといけないので、自分が蓄えた知識のアウトプットをしていくだけではダメです。ずっと勉強し続けるのは止まりませんね。

専門家のいない新分野はチャンスが多い

ー 仮想通貨交換業者はかなり早期だったから入りやすかったと思いますが、これから目指す人はどうすればいいと思いますか? 

今はもう新規立ち上げの仮想通貨交換業者でも経験者採用がほとんどなので、未経験だと既に入社は難しい状況になってきていると思います。

そもそも2線の業務は1線の業務(カスタマーサポートや口座開設など)を分かってないといけないので、今から銀行などに入社し経験を積むよりは、1線の業務から入った方が早く学ぶことができると思います。

 

また、カストディや電子記録移転権利(セキュリティトークン)といった領域が国内でもこの先出てくるので、そういった誰も経験していないビジネスに目を向けて入っていくのがいいのではないでしょうか?

新しい法律がこれから出てくる分野についてはまだ専門家がいないですし、チャンスが多いはずです。

 

今はいろんな法律が絡み合って難しいので、勉強は大変だと思いますけどね。

 

たとえば私のスキルだと、AML/CFTのスキルも『この道何十年』の人がいっぱいいるし、金融機関でコンプライアンスを経験している人もたくさんいます。仮想通貨交換業者の経験者も今はある程度います。

けれど、これらを全て持っている人はほとんどいません。自分ならではの複数のスキルを組み合わせると、”お洒落なコーディネート”になるのかと(笑)

 

ー まずは業界の状況を追いかけてみて、次の需要を見つけるのがいいでしょうか?

はい。もちろん入った分野が伸びなければ意味ないですが、先ほど挙げたカストディや電子記録移転権利のような大きな波を見て飛び込むのがいいのではないでしょうか。

実戦に勝る経験はない

ー 知識を身につけるには、やはり業界に入ってしまうのが早いでしょうか?

絶対にそうです。

古着についても、実際にバイヤーになった経験が一番身につきましたし、仮想通貨交換業についても実際に規制当局の対応を経験したからこそ身につきました。

実戦に勝る経験はありません。

入ってから知識の不足を痛感すればいいのです。

 

ー 濵田さんが今までで一番、ためになった本は何ですか?

マネー・ローンダリング 反社会的勢力対策ガイドブック-2018年金融庁ガイドラインへの実務対応-」という本ですね。私が何十回も読んだAML/CFTの本です。

AML/CFTは日本の場合犯収法に則っているのですが、その全体像を把握するのはこの本が一番良いと思います。

AML/CFT関係の本はだいたい全部読んだつもりですが、その中でもこの本が一番よかったです。

 

ー これから業界を目指す人にメッセージをください。

先ほども言いましたが、実戦に勝る経験はありません。

もしキャリアについて悩んでいるのであれば、まずは飛び込んでみてはいかがでしょうか?

実戦に勝る経験はない